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日米エンジニアを知るマーケッターが語る、スタートアップエンジニアが学ぶべき”シリコンバレー流”【連載:SVで起業する②】

公開

 
ChatWorkの「SVで起業する」

 

ChatWork COO
井伊秀和

日本生まれ、NY育ち。東京理科大学を卒業後、1999年、NTTドコモに入社。データ通信や音楽配信ビジネスの事業化を担当。その後、ソニー・ミュージックエンタテインメントやバイアコム インターナショナル ジャパン、日本マイクロソフト、オンラインノートサービスの米国ITベンチャーCatch.comなどの各社でプロダクトマネジメントに携わる。2012年より現職

はじめまして。ChatWork, Inc.でCOOを務めている井伊秀和です。今わたしは代表の山本と一緒に、シリコンバレーで北米を中心とした英語圏での市場開拓とマーケティングを担当しています。連載第2回目となる今回は、わたし、井伊がお伝えして参ります。

こちらに来てまだ2カ月。起業のドタバタで大変なところはありますが、小学生の大半をニューヨークで育ちましたし、こちらのベンチャーに籍を置いていた時期もあるので、自分にとってアメリカで暮らすことはむしろ自然なこと。志願してやってきたアメリカですから、毎日楽しく過ごしています。

わたしがChatWorkにかかわるようになったのは、今年の初め。新たなチャレンジを模索していた時でした。そのころ、以前から親交のあったChatWork代表の山本から、シリコンバレーに会社をつくるって話を聞いたんです。

話を聞くうち、現地の情報や人脈にある程度通じている自分なら、きっと役に立てることがあるという考えと、アメリカで働きたいという想いが重なり、山本に同行を志願してみたところ見事OK。それがきっかけで、ChatWorkの米国法人立ち上げと、英語圏市場の開拓要員としてシリコンバレーで働くことになりました。

そんなわたしがお話ししたいのは、「シリコンバレーで優秀な技術者たち」について。あくまでわたしの経験則ではありますが、日本とアメリカにおけるエンジニアの性質の違いや、シリコンバレーの優秀な技術者たちが今注目していることについて書いてみたいと思います。

奔放そうなアメリカのエンジニアも、数字の裏付けには真剣

From The Next Web

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井伊氏いわく、同じ職種でも、育った環境や土地によって性質が大きく変わるという

長年、通信キャリアやメディア、IT関連のプロダクトマネジメントを担当してきたので、日米双方のエンジニアの付き合いは豊富にあります。あくまで自分の肌感覚ですが、同じ”エンジニア”という肩書きであっても、その性格は全然別物という印象が強いですね。

ざっくり言って日本人エンジニアの多くは、期日までにきっちりと仕様を満たしたプロダクトを作るのが上手。これはほかの国のエンジニアとは比べ物にならないほど秀でています。でも、ゼロから仕様を作ったりするのは、日本人よりアメリカのエンジニアの方がはるかに上手いし早い。

アメリカだと、関係各位に根回しつつ稟議書を回してから、改めて上司の承認を得て……みたいなまどろっこしいことは、一切すっ飛ばして「ほら、すでにこんなに素晴らしいプロトタイプができてますよ」って、既成事実を作ってしまい、ものごとを進めたがるエンジニアが多いんです。

自分のやりたいことがはっきりしていて、自分の技術に自信があるからこその振る舞いだと思うのですが、それを見てただのスタンドプレーだと思うのは正しくありません。文化も母国語も異なる人々に、「なぜ今それをやるのか?」、「なぜこの方法を採るのか?」といったいくつもの疑問に対して、数字的な裏付けを示しながら答えられないと誰にも見向きもされないからです。

日本人同士だと、多少のあいまいさを残していても合意形成が成り立ちますが、アメリカ、特にシリコンバレーのように各国から人が集まってくるような場所では、上司であれ同僚であれ、育ってきた環境も考え方がバラバラなのは当たり前。だからこそ、数字という世界共通の”言葉”を使って説得しなければならないわけです。

荒馬のようなアメリカのエンジニアをマネジメントする大変さも、大人しい日本人エンジニアをモチベートする難しさもあります。でも、この違いが必ずしもエンジニアとしての優劣を決める、というわけではないと思います。それぞれに良さも悪さもありますからね。これは日米双方のエンジニアを見てきたわたしの率直な感想です。

一般ユーザーのITリテラシーの高さもアメリカならでは

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ChatWorkも参加した「TechCrunch Disrupt SF 2012」。予想以上の反響に、感触も上々だったそうだ

話は少し反れますが、9月8日から12日の4日間、ChatWorkは、サンフランシスコで開催された「TechCrunch Disrupt SF 2012」に参加してきました。こちらに来て初めての大きなイベントです。どんな反応か気になっていたんですが、フタを開けたらかなりの大盛況。参加者の方々からいろいろ貴重なご意見をもらえて、とても勉強になりました。

肝心の『ChatWork』についても、シンプルなデザインと分かりやすさを評価してくださる方が多かったのは、まさに狙い通り。こうした感覚は国を問わないユニバーサルなものなんだと改めて確認できたのは良かったですね。

ただ、意外なこともありました。それは、ほかのサービスとの連動についての要望が想像以上に多かったこと。よく聞かれたのは「Dropboxとの連携は?」とか「Evernoteとの同期はどうなってるの?」といった質問でした。聞けば、こちらにあるサービスの多くは、ChatWorkより小規模であっても、多くのサービスと連携しまくっているそうです。

もちろん、わたしたちもほかのサービスとの連携の準備は進めていましたが、「ここまで来ているのか」というのが正直な感想でした。なぜかと言えば、こうした質問を投げかけてくるのが、老若男女を問わず、ごく一般ユーザーの方々だったからです。

アメリカのユーザーのITリテラシーの高さと裾野の広さには驚かされました。さっそく日本の開発チームに「APIを早く完成させないとまずいよ」と連絡したのは言うまでもありません(笑)。

また、こうしたイベントに出たり、パートナーシップが結べそうな会社を訪問する中で感じるのは、デザインに対する注目度の高まりです。

数多く存在するミニブログサービスの中でも、特にデザインが評価されている東海岸生まれの『Tumblr』が成功したこともあって、西のシリコンバレーにおいてもデザインセンスがあるエンジニアが開発したサービスには、一貫性がありユーザーメリットも大きいと言われるようになってきました。『ChatWork』もデザインを重視したサービス。まだまだ頑張らないといけないようですね。

もしかしたら、わたしたちが足を使って得たこうしたトレンドも、日本からWebを通じて手軽に得られるものかもしれません。でも、実際に足を運ばないと分からないことはそれ以上にたくさんある。わたしたちシリコンバレーに居を移して改めてそう感じます。

今回のお話で、「日米の技術者の性質の違い」について述べましたが、やはり、新しいWebサービスを作ったり、ITスタートアップにかかわるエンジニアの方々は、シリコンバレー流のエンジニアスタイルを参考にして、常にグローバルな市場を意識して取り組んでみてはいかがでしょうか。

アイデアが形になるスピード感や競合がひしめく環境で切磋琢磨し合うアメリカのエンジニアの姿から学べる点はたくさんあると思いますので、これまでの既成概念を覆す新しいサービスを、ぜひ日本から発信してほしいです。

>> 第1回目の連載記事はコチラ