エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

「Schemeとの出合いが今の自分を作った」プログラマー・小飼弾氏のエピソード・ゼロ【TechLIONレポ】

公開

 

4月も半ばを過ぎ、今年も多くの新社会人が新天地でスタートを切った。新たなキャリアが始まり、どんな出会いが待ち受けているのか、期待と不安で胸を膨らませていることだろう。

IT業界で活躍しているベテランエンジニアたちも、かつては新人プログラマーであり、そこからさまざまな出会いやめぐり合わせを通じて、「今」の彼・彼女たちを形成している。そこには一体、どんな物語があったのだろうか……。

毎回豪華なゲストが登場する『TechLION』。ビール片手に参加できるのがうれしい

4月18日、12回目を迎えるITトークライブ『TechLION』が六本木のライブハウス・SuperDeluxeで開催され、“出会い”をテーマにしたトップエンジニアたちによるアツいトークが繰り広げられた。

第1部では、エンジニア・ブロガーとして人気の高い小飼弾氏が登場。自身のエンジニアとしての出発点や、どんな出会いを通して今の「小飼弾」が形成されたのかなどを赤裸々に語ってくれた。

第2部は、松崎吉伸氏・奥谷泉さんと、ショウジヨシオリ氏・ショウジユウコさんの、ITを通じて“出会った”カップル2組が登場し、普段の何気ない会話にも理屈を求める夫(プログラマー)に対し疑問(!?)を抱く嫁(非プログラマー)という、「IT系カップルあるある」に至るまで、さまざまな話題で会場を盛り上げた。

Schemeと出合わなければ、今ごろ「PHP最高!」と思っていた!?

印象的だったのは、第1部で語られた小飼氏のプログラマーとしてのルーツをたどる“出合い”の話。

小飼氏は、自身の原点を振り返りながら、学生時代と社会人になってからの「出合い」の違いについて言及する。

「学生のころはクラス替えや部活動など、自ら動かずして出会いがやってくる。そして、当人はそれらの出会いが演出されているということに気付かない。一方で、社会人なってからは、基本的に出会いを周りが演出してくれることはない」

参加者を交えて議論をする小飼氏(写真左から4番目)。小飼氏の経験談に、会場は大きくうなずいていた

そして、こうした違いは「プログラミング言語との“出合い”にも同じことが言える」と続ける。

会場にいる参加者数名に「初めてプログラミング言語と出合ったのはいつ・どこで?」という質問を投げ掛けたところ、多くが学生のころに出合い、現在も当時学んだ言語か、勤務先で使われている言語でコードを書いている人が多かった。

が、小飼氏はこの日もRubyでライブコーディングを行うなど、幾多ある言語を使いこなす。この「書ける言語の幅」をもたらしたのは、同氏が学生時代に受講したコンピュータ・サイエンスの授業で、関数型言語のSchemeと出合ったことが大きな転機になっているという。

「僕が学校に通っていなければSchemeのような難解な言語と出合っていただろうか、と思うわけです。そして、もしそこで出合わなければ、今ごろこの場で『PHP最高』と言っていたかもしれません(笑)」

もともとプログラマーではなくネットワークエンジニアだった小飼氏。「ネットワークエンジニアとして仕事をするにあたっては、言語の美しさを極めるよりもシェルスクリプトを極めればよかったのかもしれないが、あまりに文法が変だったために、気付いたころにはPerlを使っていた」そうだ。

「PerlやPythonなどのメジャー言語は、出合いを演出されなくても仕事で自然と使うようになると思うんですけど、Schemeは外で出合う機会も少ない。今振り返ると、もし学生のころに、このカッコだらけの変な言語に出合わなければ、ほかの言語を学ぼうと外に目を向けなかったかもしれないし、そのプロセスで堀江(貴文氏)さんをはじめさまざまな人たちと出会うこともなかったかもしれない。今の僕はなかったんじゃないかなぁと思うんですよね」

小飼氏は続けて言う。

「僕のプログラミング言語との出合いは、完全にフルスクラッチ。多くの人は薄々感じていると思うけど、今(社会人になって)から別のパラダイムの言語と出合うのはかなり難しいと思う。大人になってからも出合いはあるんだけど、自分で積極的に出合いに行かないと出合えない。環境が出合いをお膳立てしてくれるようなことはないんです」

小飼氏自身、「自分はわりと社会人になってからも『出会い(出合い)』は多い方だと思う」と前置きしつつ、最近は友人から教えてもらったHaskellと出合ったことで衝撃を受け、今も自身のプログラマーとしての幅を広げているという。

社会人は学生のころと比べ“出会う(出合う)”機会が極端に減る。この現実を理解した上で改めて気を引き締め、「学ぶ(出合う)機会を逃さないようにしよう」という小飼氏からのエールに、会場からは大きな拍手が贈られた。

この春から社会人になった新人プログラマーだけでなく、『TechLION』に参加した社会人プログラマーの方々にとって、この日は貴重な「出会いの場」になっただろう。

取材・文・撮影/小禄卓也(編集部)