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[特集:TeenなGeekの業界改造計画②-鳥居みゆっき] ドワンゴがスカウトした高校生「PGがサービスも作るのって普通じゃないんですか?」

タグ : 10代, ギーク, デジタルネイティブ, ニコニコ動画, ニコ動, プログラマー, 業界有名人, 発想力, 開発, 鳥居みゆっき 公開

 
プロフィール
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株式会社ドワンゴ エンジニア
鳥居みゆっき君@toriimiyukki

『ニコニコ動画』内に「ニコ生技術開発部」というコミュニティを自ら作り、『ニコニコ動画』や『ニコニコ生放送』の脆弱性を突いて開発者に報告していた高校生プログラマー。2010年に『ニコ動』運営元のドワンゴにスカウトされ、エンジニアとして就業中

プロのエンジニアたちが「無理」と決め付けていた機能を難なく実現したり、見逃していたシステムの弱点をすぐに発見してしまうヘビーユーザーがいる――。

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小さなことから動画が好きだったという鳥居君が自作したライブ映像配信サイト『ニコキャスト』

ニコニコ生放送(以下、ニコ生)』の脆弱性を突いて高画質配信を行ったり、『ニコキャスト』というストリーミング配信サイトを自作していた鳥居みゆっき君。その技術力がドワンゴ社内で話題になり、エンジニアとしてスカウトされたのは15歳の時。

初めてPCに触れてから9年、独学でプログラミングを覚えてからたった3年後のことだった。

「ネットに触れたのは小一のころから。小三で初めて自分用のPCを買ってもらい、当時流行っていた『オモシロFlash動画』を観るのにハマッてました」

中学二年生までは、どこにでもいる普通のパソコン少年に過ぎなかった鳥居君が、プログラミングを始めるようになったのは、ある小さな出来事をきっかけだった。

「ある日、母親の勤める会社に遊びに行った時、そばにいたWeb制作の担当者に『プログラミングはやらないの?』って聞かれたんです。それで、確かにプログラミングができたらちょっとカッコいいなぁって思い始めて、勉強してみることにしました」

最初に手に取ったのはC言語の参考書。printf、if文あたりまでは順調に覚えていったが、メモリの扱い方がイマイチ理解できずに挫折してしまう。だが、ここから鳥居君は驚異的な習得力を発揮する。

「それでもつくってみたいサービスがあったから」と、今度はPerlを勉強するために『10日でおぼえる Perl/CGI 入門教室』(高橋大吾著/翔泳社/税込2940円)という本を買い、あれこれ試しながら何とかマスター。その成果が、『ニコ生』のキャプチャ画像とコメントを1ページに記録する『NicoLiveLog』というサービスだ。

その後、同じく『入門教室』シリーズや個人ブロガーの情報源を参考に、VB.NET、PHP、ActionScriptを習得。プログラムは今もテキストエディタに直接書き込み、1日に50ファイル分も書く日があるほどのめり込んでいる。

作る楽しさと使われる喜び、両方感じられる開発が好き

こちらの質問に対する答えはきっちり一つずつ。多くは語らず、開発一筋のスペシャリストのように実直な印象の鳥居君だが、一つだけ、多くの職業プログラマーとは異なる部分がある。プログラマーとして卓越した実力を持っていながら、同時に『ニコキャスト』のようなサービス開発にも才能を発揮している点だ。

先述した『NicoLiveLog』の開発秘話を聞くと、そうなった理由が見えてくる。

「知らない人の家を泊まり歩く企画などをニコ生で放送している伊予柑(いよかん)さんに使ってもらって、『いつも自分の放送終了後に手作業でやっていたことが自動でできるようになって本当に楽になった』と言われたことがあったんです。それがすごくうれしかった」

コードを書く喜びと、作ったモノが反響を呼ぶ喜び。2つの喜びを知った鳥居君は、プログラミングとサービス開発の両方を楽しむようになっていった。

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From scarletgreen 

イマドキの10代は、授業中、窓の外を見ながら帰宅後のコーディングについてあれこれ考える…なんてことも多い!?(写真はイメージ)

「高校の授業中に、ふと『こんな機能があるとイイかも』って思いつくとするじゃないですか。そうしたら、学校が終わるまでにどこをどういじればいいかをあれこれ考えて、家に帰ったらガーッてコードに落とす感じです。長い日は5~6時間、プログラミングに没頭することもありますね(笑)」

エンジニアリングのあるべき姿と言えるこのスタイルは、社会人になるにつれて、”片輪走行”になりがちだ。大規模システムはもちろん、比較的小規模なチームで動くWebアプリ開発でも、会社によっては「企画屋=プロデューサー」と「制作者=コーダー」は分業スタイルだ。とりわけ日本の開発では、「プログラマーは作業者」というイメージが根強く残っている。

しかし、鳥居君の考えるプログラマー像は、こうした業界イメージとは大きく異なる。

「自分でコードを書くのが好きだし、ソースコードの構造も把握していたいし、自分が作ったサービスをたくさんの人に使ってほしい。全部やるのが、僕の好きな『開発』なんです。尊敬している人は『2ちゃんねる』を作ったひろゆきさんや『ニコニコ動画』を作った戀塚昭彦さんですが、理由は自分で企画して、自分でサイトを作れて、自分の意見もはっきり言える人だから。そういうプログラマーになれたらいいなと思っています」

これからの業界に必要なのは「サービス開発のプロ」

ドワンゴのエンジニアとしての鳥居君が籍を置くのは、同社のニコニコ事業本部企画開発室。先進技術の研究などを担当している。

「去年の暮れから、週3回通っています。環境ですか? 僕にもパーティションで仕切られた席を用意してもらっていますし、作業はすごくやりやすいです。ただ、やっぱりC言語での開発は苦手です(笑)」

仕事としてのプログラミングを経験し、大変さやオトナの事情(!?)を目の当たりにして幻滅したりしていないか……と無粋な詮索をしてみたが、本人はいたって前向き。むしろ、エンジニアとしての立ち位置を明確にした感さえある。

「高校卒業後はたぶん進学する予定ですが、ドワンゴが好きなのでこのまま働き続けるかもしれないし、起業するかもしれないし……。まだ進路をコレとは決めていません。ただ、どの道を選ぶにしても、自分のやりたい開発に割ける時間がなくなるのはイヤなので、そういう時間は絶対に確保したいですね。そういう意味では、僕が目指したいのは、スーパープログラマーというよりはサービス開発のプロなのかなと」

事実、今まで『ニコ生』を中心とした動画やストリーミング関連の開発にしか興味がなかったという鳥居君は、その興味範囲を徐々に広げ始めている。

「最近忙しくなって開発が進んでいないのですが、ちょっと前から、ソフト開発者向けのコラボレーションツールみたいなものを作り始めています。ネット上で開発状況の共有とか、バグを解析したりできるツールです」

作り始めたきっかけは、「こういうのがあったら便利だろうな、と思ったから」。鳥居君のように、ほしいものは自分で企画し、自分で作ってしまうという原点回帰のスタンスが、これからのIT業界では今まで以上に必要になってくるかもしれない。

(業界改造計画③に続く)

取材・文/武田敏則(グレタケ)

<鳥居みゆっき君が今、尊敬しているスーパーエンジニア>

 

株式会社ドワンゴ 戀塚昭彦(こいづかあきひこ)氏

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『ニコ動』のプロトタイプを5日(3営業日)で作ったっていう話が有名だと思うんですけど、そばで見ていてなにしろ仕事が早いですね。コメントサーバを作るにしても、かなりの負荷にも耐えられるようにちゃんと考えられてるなって。やっぱりエンジニアとしての腕がスゴいって素直に思います。


2ちゃんねる』開設者・初代管理人 西村博之氏

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ひろゆきさんは、ドワンゴの関連会社ニワンゴの取締役を務めていますけど、自分の意見も言えて企画もプログラミングもできるので尊敬してます。「大人になったらどんな人になりたい?」って聞かれた時は、いつも「ひろゆきさんみたいになれればいい」って答えたりします。あくまでイメージですけど。


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