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深圳のバイオレット・スーが教えてくれた、Makerムーブメントの本質(後編)【連載:高須正和】

公開

 
高須正和のアジアンハッカー列伝

高須正和(@tks

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動中。MakerFaire深圳、台北、シンガポールのCommittee(実行委員)、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があります。各種メディアでの連載まとめはコチラ

皆さん、こんにちは。チームラボMake部の高須です。この「アジアンハッカー列伝」では、主に僕が滞在・在住したアジアの国々のハッカーについて書いていきます。

前回に引き続き、バイオレット・スー(Violet Su)の紹介をしたいと思います。

>> 前回の連載記事

バイオレットのSeeedstudioへの入社面接は、エリックの作ったオシャレな柴火(Chaihuo)ハッカースペースで行われました。彼女は一発でSeeedを気に入ったようで、「電子回路とMakerの企業が、クリエイティブ・デザインの豊かな所にハッカースペースを創るなんて、良いと思わない?」と、うれしそうに当時の思い出を語ります。

日本で、日本語教師のボランティアをやっていたような20代後半の女性が、Maker企業に入るのはなかなか珍しいキャリアパスなんじゃないかと思います。深圳(しんせん)はハッカースペースが出会いの場としてうまく機能しています。

(ハッカースペースがどういうモノか知りたい人は、近々『世界ハッカースペースガイド』という連載がCodeZineではじまるので、お楽しみに!)

ハッカースペースがある一角、こういう雰囲気の中にあります

バイオレットが面接をしたハッカースペース

休日は、フリーマーケットやデザインフェスタのように、一品モノの作品を売りに来る人で賑わいます

いかにも日本のデザフェスとか、中央線沿いに住んでいそうな出展者

ワザとレトロ調でダサそう、キッチュに作ってある「不自然便利店」。ハッカースペースの隣にあります

ツアー後に1日、プログラムを延長して、深圳のハッカースペースを訪問しました。

ハッカースペースは、表参道や中目黒のようなハイセンスに、もっと「そこにいる人が作ってる匂いがする」要素を足したような、素敵な一角にあります。深圳に残った4人ぐらいでそこを歩き回った時のバイオレットは、ツアー参加者みんなに呼び掛けをするバイオレットとは別のリラックスした感じでした。

冒頭の写真は、その時のバイオレットです。もう1カ所、テックスペースを訪問する予定が、ミスブッキングで叶わなかったのですが、「代わりにこの綺麗な場所でご飯をたべましょう」というアイデアに全員が賛成しました。

この日は土曜日でしたが、彼女は仕事を片付けに楽しそうにSeeedに帰っていきました。

仕事しててどう? 楽しい?

僕はあまり新聞を読みません。ニュースっぽいことは、友だちのタイムラインや、はてなブックマークや2chのまとめサイトから知ることが多いです。

中国や韓国には良いイメージを持っていませんでした。ただ、SeeedStudioほか深圳のMakerたちは、13億の民の中に、僕らの友だちになれる人がいっぱいいることを教えてくれました。

粗悪なデッドコピー品でなくて、ハッカーマインドを持って胸を張れる製品を作り、世界を変えようとしている人たちがいることを教えてくれました。

「Makerは、楽しんで夢中になってMakeをしていけば、それが仕事になるし、世界を変えられる」と彼らは語り、また実践しています。

「仕事しててどう? 楽しい?」という質問に、彼女は「Seeedはいつも元気いっぱいで、楽しさと喜びにあふれている。世界中のMakerから毎日、いろんなことを学べる。この会社で働いていて、最高に楽しい!」

と答えました。

「世界、特にアメリカや欧米に向けて、自分の会社の製品を売ってくれ」という仕事なら、彼女の方が僕の3倍ぐらい優秀なんじゃないかと思います。きっちり英語ができるし、機転が利くし、何より仕事を楽しんでいます。

今回のツアーは、Seeedstudioが単独で行った前回よりも、いろいろ相談したことでクオリティが上がりましたが、彼女たちはこれを「Shenzhen High tour」として、もうSeeedのサービスの一つとしてビジネスにしようとしています。

このスピード感、なるほど「Seeedは元気いっぱい」です。僕も元気には自信があったのですが。

仕事を楽しむには、環境と才能の両方が必要です。とにかく何でもGO!GO!が出て、トライアル&エラーがしやすい、深圳の環境や雰囲気は、彼女たち深圳のMakerにとってエキサイティングなのでしょう。

新しいことを歓迎して、少し不具合があっても気にしない。Kickstarterの出荷遅れを「問題」にするメディア報道が目立ちますが、たぶん深圳の人たちの方が「Kickstarterがどういうものか」が分かっていると思います。

僕は、彼女の給料がいくらなのかも知りませんが、何となくだけど僕の半分か、3分の1ぐらいなんじゃないかと思います。仮に3分の1だとすると、例えばアメリカ相手に商売しようと思うと、彼女の方が10倍ぐらいバリューがあるんだと思います。日本語やプレゼンなら、たぶん僕の方が上手だと思いますが。

僕は今シンガポールに住む前に、インドネシアにしばらくいたり、インド人のエンジニアで何人か友だちがいたりしますが、同じぐらいのコストパフォーマンスの人は見ませんでした。あんまりマジメに仕事しなさそうだったり、もっとエリートだったり。

今回のツアーメンバーには経営者も多かったのですが、「自分が起業するなら、まずバイオレットみたいな人に『協力してみないか』って相談するわ」と口々に言っていました。

インターネットは否応なしに世界をつなげていきます。僕とバイトレットやエリックは、同じ世界の人間で友だちです。だから、どうやるとこれから先も、彼らと一緒に遊べるか、考えたりもしました。どういうのが、僕のバリューなのかなあ、とか。

もう少し英語が上手になったら、バイオレットにそういう相談もしてみたいです。

僕がプレゼントしたNecomimiを付けるバイオレット

最終日、僕は自分の付けているNecomimiをバイオレットにプレゼントしました。「これは自分も楽しいし、普通に仕事なんだから」と何度も固持していましたが、最後には受け取ってくれました。

11月のMakerFaire東京、Seeedのブースには、たぶんチームラボステッカーを付けたバイオレットがいます。

Seeedに入社してから彼女は、週末ごとにMakerたちとワークショップを行ってます。「休日はTVを見るぐらいしかしないから、面白いMakerたちとたくさんワークショップやって知り合うのはすごく楽しい」と語ります。

「日本のMakerに何かメッセージを」と聞くと、

Enjoy Making:)

と返ってきました。

「そういえば子供のころ、私のお父さんは子どもたちに、銅線でブレスレットを作ってくれた。Makeってそういうことだと思わない?」

彼女はMakerムーブメントが何なのかを知っています。

告知です

今年の12月7日~11日にまた、シーグラフアジアの直後にニコ技深圳観察会を予定しています。終了後にレポートを書き、自力で参加して、ツアー中のトラブルを解決できる(またはトラブルを不満に思わない)方であれば、誰でも参加を歓迎します。

>> ニコ技深圳観察会のFacebook

また、11月23日~24日のMakerFaire To-kyoに絡めて、25日~28日ぐらいに日本のMakeをバイオレットら外国人に見せるツアーを計画しています。こちらはやれるかどうか分かりませんが、東急ハンズ、秋葉原MOGRAなど、僕たちが好きな場所を紹介しようと思っています。

僕らは深圳が大好きになりました。彼らに東京を大好きになってもらいたいです。ご飯を一緒に食べてくれる、ツアーに参加して彼らと友だちになってくれる、バスの手配や通訳をしてくれるなど、協力者を募集しています。

>> 外国人Maker、日本ツアーのFacebookページ