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公務員を辞め、Makerをつなぐハブに~シンガポールの“巨人”ウィリアム・ホイが手掛ける新ビジネス【連載:高須正和】

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高須正和のアジアンハッカー列伝

高須正和(@tks

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動中。MakerFaire深圳、台北、シンガポールのCommittee(実行委員)、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があります。各種メディアでの連載まとめはコチラ

シンガポールのMakerイベントに必ずいる人

写真右側がウィリアム・ホイ

William Hooi(ウィリアム・ホイ、以下ウィリアム)はシンガポールMaker界のジャイアントです。前回紹介したヴィヴィアン大臣をはじめ、シンガポール中のMakerが彼を知っています。

シンガポールは人口わずか500万人あまりの小さい国ですが、高度にマネージメントされています。労働者はだいたい移民なので、シンガポール人は投資やマネージメントをしていて、手を動かす人は少ないため、DIYのムーブメントは大きくありませんが、ワークショップや展示会は多く行われ、互いが互いを知っています。

ウィリアムはもともとシンガポールの公務員でしたが、独立後、シンガポールや周辺諸国のMakerムーブメントをつなぐハブとして大きな役割を果たし、小さい国に大きなムーブメントをもたらしています。

シンガポールのビジネスパーソンの良い例でもあると思いますので、彼のキャリア含めて紹介します。

彼が開いたイベント Makeblock Singaporeにてプレゼンするウィリアム。日本を含む世界10数カ国からの出展者が集まった

ウィリアム自身はマレーシアの生まれで今もマレーシア国民ですが、高校の教師として、さらにはシンガポールの科学未来館であるサイエンスセンターシンガポールで、15年間シンガポールの公務員として働いてきました。

特にシンガポールサイエンスセンターで働いていたここ3年間、彼は世界やシンガポールでのMakerムーブメントの流れに強く惹かれていました。

ウィリアムはMakerムーブメントについてこう語ります。

「Makerムーブメントは世界的なDIYの盛り上がりと、それにより新たな産業が生まれ世界を変えていく流れです。大学や企業の研究開発部門のように新しいプロジェクトや製品を生み出していますが、彼らMakerの多くはテクノロジー好きのアマチュアから生まれた、これまでの社会に存在しなかった、まったく別の階層(クラス)です。

彼らイノベーターは、オープンソースの技術を使い、思い付いたらすぐ手を動かすラピッドタイピングの手法を使って、これまでの形式張った学習の枠を見えなくさせ、クリエイティブな科学技術の可能性を生み出しています」

シンガポールで行われた国際的なプレゼン大会 CHAOS ASIAで3rd Prizeに輝くウィリアム

ウィリアム自身、針金と乾電池を使って子どもにその場でモーターを作らせるなどのワークショップを行い、カンボジアやオランダなど、海外からもよく招待されています。

彼自身がアツい言葉でMakerのことを語り、人を惹きつけます。

ウィリアムはサイエンスセンターで働いていたころから、国際的にネットワークされたMakeと教育の組織HACKADEMIA(ハッカデミア)で、シンガポールのチームリーダーを務めていました。シンガポールではじめて行われたMini Maker Faireのまとめ役も行っています。

Makerムーブメントにもっと深くコミットするために、この3月、彼はサイエンスセンターから独立し、彼自身が代表となって「いかに人をクリエイティブにするか」というコンサルティング会社HYPERFLOW Groupを設立しました。

国際的なイベントMakersblock

6月には早くも最初の大きなイベント『MakersBlock Singapore』を開催します。シンガポールの中心地サンテックシティーに300m2の会場を借り切り、10日間にわたって展示やワークショップを行いました。

マレーシアやインドネシア、カナダ、アメリカなど10数カ国を超えるMakerが参加、日本からはスケルトニクスが招聘され、シンガポールの新聞に見開きで掲載されるなど、大きな評判を呼びました。

さまざまなワークショップが行われたMakesblock

スケルトニクスのデモは大人気

ウィリアムはスケルトニクスについて、「もちろん大きいから目立つのもあるけど、見れば仕組みが何となく分かること、目の前にいる人たちが手で作ったことが伝わってくることが何より人を興奮させる。自分も何か作ろうと思わせる」と語ります。

スケルトニクスに大喜び

続いて8月には、生まれ故郷のマレーシア、ペナンのジョージタウンでまた大規模なイベントを行います。

シンガポールのMakerの本拠地 OneMakerGroup

さらに9月、シンガポールの国立デザインセンター(美術館ではなく、アーティストの活動を支援する施設)と提携して、シンガポールの5つのMakerグループを連携させ、『OneMakerGroup』(以下、OMG)を立ち上げました。

OMGは100m2を超えるスペースに、3Dプリンタ・大型レーザーカッター・バズソー・ボールソーなどの工作機械と常駐のスタッフを備え、200シンガポールドル(1万7000円ほど)の月額会員制でいつでも使うことのできる、テックショップのようなスペースです。

■Homefix DIY(東急ハンズやコメリのようなDIYショップ)が設備と材料をサポート

■Sustainable Living Lab(デザインに優れたリサイクル製品を生み出すことで、DIYで生活できる人を増やすグループ)がワークショップと製品開発をサポート

■Simplifi 3D(3Dプリンターのショールーム、普及活動を行っている)が3Dプリンティングの設備と技術をサポート

■SG Makersとして、彼らに発表の場所を与えるイベントを行う

■HYPERFLOWとして、Makerと産業を結びつけたい人たちのコンサルティングを行う

と、それぞれ得意分野があり、単体ではNPOに近いものを、組み合わせることでビジネスが生まれるようにしています。

ここからアートと産業が生まれることで、国の施設であるデザインセンターのプログラムとして入居することを可能にしました。全員が得意分野を出していくことで、単体では成り立たないビジネスを立ち上げるアイデアは見事なものだし、実際にそれぞれと深い信頼関係を築いて成立させる手腕は見事なものです。実際にこのスペースから、いくつかビジネスになっているプロジェクトが生まれています。

12月に、このスペースのお披露目をかねて、『Maker Festival Singapore』として、2週間のイベントを行います。最初の1週間はOMG、次の1週間はシンガポールのアートサイエンスミュージアムでMakerのイベントを行います。

以前ご紹介したヴィヴィアン大臣だけでなく、シンガポール政府全体がウィリアムのようなMakerを応援しています。

次のイベントは東京!

ウィリアムは日本のMakerたちに深い関心を持っています。

「日本のテクノロジーの幅広さ、特にアニメやマンガに影響された技術はすばらしいモノです。ガレージやアパートから出てくるたくさんのプロジェクトは、まるでアジアのシリコンバレーのように見えます。

久川真吾&まり子夫妻(鳥人間)、石渡昇太(機楽株式会社)、明和電機、丸幸弘(リバネス)のような、友だちの日本のMakerには多くを教えられています。私が彼らから学んだ文化とテクノロジーを、自分たちの手で美しいモノを生み出したいと思っている、多くの人に伝えたいです」

ウィリアムの次のイベントとして、シンガポールのMaker数名を引き連れて東京のMakerFaireに行きます。僕も連動して東京のMakerFaireや、同時期に行われているPixiv祭、翌週から始まるチームラボ展などの案内をします。

彼らのツアーの一環で、11/25~27日・各日18:00~21:00に秋葉原のDMM.Make AKIBAにて、ニコニコ技術部を中心に日本のMakerを集めた展示会を行いたいと思います。

>> Maker Villa Tokyo告知サイト

出展希望者をお待ちしています!

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