エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

誰が会社をつぶすのか~「長生きする企業」の社員像を考える【冨山和彦×梅澤高明】

公開

 

今の時代、倒産企業の平均寿命は23.5年――。

これは東京商工リサーチが2012年に調査した結果である。ならば、この平均寿命を超えてなお成長し続ける企業と、寿命とともに消えていく企業の差はどこにあるのか。

企業と組織のあり方に詳しい2人のトップコンサルタントへの取材から読み解く。
※このコンテンツは、就職学生向け情報誌『就活type』(2013年11月1日発売)の巻頭企画「誰が会社をつぶすのか?」からの転載となります。本誌情報は記事末尾にて。

【分析1】 組織論の視点から

株式会社経営共創基盤 代表取締役 CEO
冨山和彦氏 

1960年生まれ。東京大学法学部を卒業後、1985年にボストン コンサルティング グループに入社し、コンサルタントとして活躍。1986年、コーポレートディレクション設立に参画し、2001年、代表取締役に就任。2003年の産業再生機構の発足とともに代表取締役専務兼COOに就任。2007年4月、経営共創基盤を起業し、現職に。近年は、政府のJAL再生タスクフォースでサブリーダーを務めるなどの実績を持つ。近著に『結果を出すリーダーはみな非情である』(ダイヤモンド社)などがある

日本特有の「ムラ社会」を変えるミドルリーダーの存在が大事

会社が成長期に続く「衰退期」を乗り越え、長生きできるかどうかは、組織が定期的にバージョンアップできるかどうかに懸かっていると思います。

しかし、特に日本企業の場合、放っておくと不作為のワナに陥りがちです。会社組織というのは1つの共同体=ムラ社会で、共同体の調和を重視する性質があるので、気を抜くと「調和を守ること」が第一の目的になってしまうのです。

これはもう、どうしようもなくわれわれのDNAとして組み込まれています。長年同じ会社というムラ社会で育ち、エスカレーター式でトップになった経営者がいると、調和を保とうとし過ぎるあまり、必要な改革が行われず、肝心の会社自体がズッコケてしまう。

このワナに陥らないためにも、経営者には危機に瀕する前に改革を断行する力が問われます。ただ、経営者だけが声高に叫んだところで大きく変わらないのも、調和を好む日本の組織の特徴です。

そこでカギを握るのが、改革の意思を持った中間管理職、ミドルリーダーの存在です。

上と下の両方に精通する立場だからできること

彼らは、文字通り「現場」と「上層部」の中間にいるため、最も多くの情報を持っています。現場に集まる社内外の最新情報と、会社を動かしている政治的な思惑の両方に精通していると、変えるべき課題は何で、どうすれば会社全体を動かせるかを理解できます。だから組織をバージョンアップさせる上で適任なのです。

明治維新を実現した中心人物たちを見ても、日本を変えようとまい進したのは皆ミドルクラスのリーダーでした。

ただ、例えば西郷隆盛には薩摩藩藩主の島津斉彬という力強いパトロンがいたように、改革の旗手となるミドルリーダーを支える存在も必要不可欠です。

経営者には改革を推し進めるミドルリーダーたちのパトロンになる勇気が必要で、現場社員はミドルリーダーと共にボトムアップの変化を形にしなければならない。この連携がうまく取れると、ムラ社会の力学が徐々に良い方に変わり始め、改革を成し遂げられるのです。

【分析2】 環境適応の視点から

A.T. カーニー株式会社 日本代表/グローバル取締役会メンバー
梅澤高明氏 

1962年生まれ。東京大学法学部卒。1986年4月、新卒で日産自動車に入社。その後、米留学でマサチューセッツ工科大学の経営学修士課程を修了した後、A.T. カーニーのニューヨーク事務所に勤める。1999年に日本へ移り、2007年1月に日本代表に就任。全社戦略・事業ポートフォリオ、グローバル戦略、マーケティング、組織改革に関するコンサルティングを行うかたわら、経済産業省「クール・ジャパン官民有識者会議」の委員なども務める。近著に『最強のシナリオプランニング』(東洋経済新報社)がある

「事業の寿命」に直面した時、救世主になる社員の特徴

「組織のあり方によって企業は長生きできる」という冨山さんのお話を踏まえた上で皆さんにお伝えしておきたいのは、本来、企業には寿命がないということ。

では、なぜ少なくない企業が衰退し、倒産してしまうのかと言えば、「事業」には寿命があるからです。

どんな企業にも屋台骨を支える主力事業がありますが、それはいつの時代も主力であり続けるわけではありません。その企業にしかない技術力や、時流をとらえたマーケティングなどによって競合他社よりシェアを獲得できていた事業も、新技術の登場や顧客ニーズの変化によって寿命を迎えてしまいます。

過去の花形事業であったTVに固執して経営不振に陥った日本の家電メーカーも、まさに「事業の寿命」に直面したケースと言えるでしょう。

大胆な改革を行う際は社内の「異端者」が重要に

こうした状況を迎えた時、健全な企業は「選択と集中」による業態の変化や、新規事業の創出を行います。それらの改革によって、寿命を迎えそうな事業から、新たな成長をもたらす事業へと軸を移すのです。

ただ、冨山さんが指摘された通り、多くの企業は落ち目を迎えた主力事業に自ら“死刑宣告”を下すことができません。なぜか。社内に「異端」と呼ばれるようなタイプの人材が少ない、もしくは活用されていないからだと思います。

よく「変化は常に辺境から起きる」と言いますが、改革の担い手となり得るミドルリーダーというのは、会社の保守本流である主力事業とは異なるところで、会社全体の動向を客観的に見ています。

一般に「はみ出し者」と呼ばれるような人ですが、無能なわけではありません。仕事はできるけれど、共同体=ムラ社会の中で1人だけまったく違う意見を持つために、傍流に追いやられているケースが多いのです。

彼らは社内政治を気にしませんから、思い切った改革を行う際の旗手には適任です。経営層には、こういう異端者を組織内に留め、抜てきする度量の大きさも必要になってきます。

《対談》企業の寿命を決める「変化する組織」のつくり方

―― まずは、前段でお話のあった「事業の寿命」について伺いたいのですが、梅澤さんのご指摘通り、やはり自ら寿命に気付き、改革を実行するのは難しいのでしょうか?

梅澤 低迷している原因が事業の寿命にある場合、ほとんどの経営者はそのことに気付いていると思います。問題は、冨山さんのおっしゃるような組織的な問題によって、その気付きを改革につなげられないことです。

冨山 うすうすは気付いていても、認めたくないっていう気持ちがあるんだろうね。経営者も人間だし。

梅澤 われわれのようなコンサルタントに企業再生や全社改革の依頼があって、客観的に課題を洗い出してみると……。

冨山 「やっぱりそうか」と(笑)。それと日本企業の場合は、欧米に比べてCEOの任期が短いのも問題ですよね。

梅澤 欧米の優良企業だと、CEOの任期が20年近くあったりしますから、時間をかけて改革プランを計画・実行できる。

冨山 一方の日本は、オーナー社長以外のサラリーマン経営者は4~5年で交代しちゃう。短い任期だと、自分がトップにいる時期に失敗をしたくないから、大胆な改革ができないというのもありますよ。

梅澤 そして改革が手付かずのままどんどん次の社長、その次の社長へと負債が回されていく。

冨山 企業を再生するためにガラッと事業や体制を変えるには、それまで注力していた何かをいったん捨てないと難しい。それができない会社が、問題を5年も10年も先送りしちゃうんですよね。

人は、人から学ぶもの。リーダーシップも同じだ

―― つまり、成長し続けるための改革を進めていくには、経営者の任期の長さは必要不可欠?

冨山 ある意味ではそうだと思います。創業社長やオーナー社長がいる会社って、その経営者が優秀で、きちんと長期的視野を持ってガバナンス(企業統治)を効かせていれば、わりと長生きしているケースが多いですし。

梅澤 ガバナンスが重要だという点ではわたしも賛成ですが、かといって、オーナー社長じゃないと企業は長生きできないという話にはならないと思いますよ。サラリーマン経営者でも、窮地にひんする会社を生き返らせた例はあります。

―― では、会社も人も成長し続けるために必要なものとは?

企業ガバナンスを大前提とした上で、トップのみならず現場の意識変革も必要と語る2人

梅澤 概念的ではありますが、現状の延長線上ではないところに会社の未来の姿を描いて、改革し続けるような組織をつくることだと思います。若手ビジネスパーソンの立場でいえば、そういう組織に身を置いてみる。

冨山 事業が安定していても、そうじゃないときも、常にそういう覚悟を持った経営者がいることは必須でしょうね。そこに、改革を断行できるミドルリーダーが何人かいれば、会社も人も成長し続ける可能性は高い。だから、若いうちから必要なマインドセットを持つような教育が必要だと思うんです。

梅澤 そういう人材は自然発生的には出てこないですからね。わたしは『ISL』というNPOで経営者育成プログラムに携わっていますが、40代中心の受講生に、経営トップに必要な視点やスキルを1年かけて学んでもらうんです。最初は経営者としての視点や心構えが足りなかった人も、どんどん変わっていきますよ。

まず、自分が「ここで働く意味」を深く考えてみる

冨山 もちろん、若手や中堅社員の全員が全員そうである必要はなくて、リーダー候補は全体の1割いれば十分だけど。

梅澤 必ずしも若いうちでなくてもいいので、リーダー候補にはどこかの段階で、自分が働く意味 =「What」を見つけてほしいですよね。

冨山 そうですね。僕もいわゆる中堅時代、コーポレートディレクション社からある企業に出向して、一般的なサラリーマン生活を経験したことで、会社組織というのは正論では変わらないんだと痛感しました。そこで重要なのが、「だからダメだ」とさじを投げるんじゃなく、「なぜこうなっているのか」と好奇心を持って見てみること。そういう過程を経て、今の仕事につながるWhatを見つけることができた。

梅澤 僕もアメリカで経営コンサルタントを4年やった後、「日本の企業のために何かしたい」と強く思うようになって帰国しました。

冨山 そう思った時っておいくつでした?

梅澤 36、37歳だったと思います。

冨山 あ、僕もちょうどそれくらい。だから、社会へ出てすぐに「What」なんて持ってなくてもいい。

梅澤 でも、「就職」ではなく「就社」の意識で社会人になった人には、一生見つけられないかもしれませんね。仕事のWhatは、社会へ出ていろんな仕事を経験するうちに、やがて見つかるものだと思います。

冨山 会社を改革するような大作戦を断行するには、それだけの覚悟や真剣さが求められる。その機会がいつ来てもいいように、若いうちから問題意識や危機意識を持って会社という“生き物”を見ておく姿勢が大事なのかもしれないね。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴

●雑誌『就活type』とは?

2007年に創刊した、就職活動に臨む学生に向けた就職情報誌です。「働くの本質を考える」を媒体コンセプトに毎年1回の雑誌発刊と関連する就職イベントの開催を行っています。

2013年11月1日(金)発売の雑誌では、本対談のお2方のほか、大前研一氏やリンダ・グラットンさん、DeNA南場智子さん、サイバーエージェント藤田晋氏etc.のトップビジネスパーソンへのインタビューのほか、ライフネット生命保険・岩瀬大輔さん×ウォンテッド仲暁子さんの豪華対談などを掲載しています。販売は全国主要大学の学生協ほか、大手書店にて(290円)。
その他、キャリアセミナー情報はWebサイト『キャリアビジョンtype』でご覧いただけます。