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受託開発でも社員定着率96%の理由は“SMAP”にあり?

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定着率96.7%。人材流動性が高いと囁かれる受託開発会社の中で、特筆に値する数値を誇る会社がある。

2003年創業、従業員数90名、金融・通信・製造などのシステム開発を担っている、一見すると“普通の”システム開発会社、TSOneだ。

人材会社の求人制作担当者に聞いたところ、一般に二次請け、孫請けの受託開発会社では離職率がだいたい10~20%。「3年で社員の3割が入れ替わる会社もざら」だという。

こういった開発会社のエンジニアは常駐先で働くことが主で、流れてくる業務を「こなす」仕事が多くならざるを得ない。そのため、人によっては自分が思うようにスキルアップができず、やりがいを感じにくいため、転職や独立などで職場を変えることも多いのだ。

そんな現状に対して、なぜTSOneは前述のような数値を残すことができるのか。行っている愚直な離職対策の取り組みの一つは、「社内勉強会」であると佐藤幸二社長は言う。受託業務だけでは得にくい、スキルアップによる成長感を勉強会で補っているのだという。

しかし、世の開発会社を見渡せば、勉強会の開催もまた、取り立てて珍しいことではない。実際にはどのような勉強会が行われているのかを、勉強会の先生役と生徒役、そして、中堅社員のエンジニアに聞いた。

勉強会でスキルアップをフォローするようになった理由

(写真左から)話を聞いたTSOneの坂本健氏、宮坂守氏、吉田定雄氏

(写真左から)話を聞いたTSOneの坂本健氏、宮坂守氏、吉田定雄氏

「勉強会? たぶん、吉田さんがやっているJava塾とかのことですね」

そう話すのは、システム開発統轄部の宮坂守氏。38歳で、肩書きは主任。7年前、TSOneに中途で入社した。

「前の会社では、そういう勉強会はありませんでした。業務が忙しすぎて、社外の研修に参加する機会もなく、勉強するなら独学しかありませんでした。ただ、わたしは独学が苦手で……」

スキルアップの必要性は分かっていたが、なかなかそれを実現できないでいたという。

ところが、TSOneには望むような勉強会があった。勉強会は必要に応じて、定時後に社内で開催される。先生役を務めるのも社員だ。

Java塾の先生は、システム開発統轄本部担当部長の吉田定雄氏。最近はもっぱら横浜の顧客先に詰めているが、勉強会となると、東京・人形町の本社で指導に当たる。会社創設時からの社員である吉田氏は、「以前はこういった勉強会はなかった」と振り返る。

「創業当時は、そういうことを考える余裕はありませんでした。勉強会ができたのは、それから、2、3年経ったころです。会社が、社員のために何をすべきかを改めて考えた時に、現場はそれぞれ別でも、集まって何かをする機会を設けるべきだと判断したんです」

それがきっかけで始まった勉強会。教える側にも準備が必要になる。

「学び効果」で深まる理解と、変わる意識

なんとなく動いているから良しとしているのであって、JavaScriptをしっかり学んだ人は少ないのでは、と話す吉田氏

JavaScriptは比較的簡単に動作まではさせられるので細かく学んだ人は少ない、と話す吉田氏

「準備には時間がかかります。自分で理解しているのと、人に教えるのとでは違いますね。JavaScriptの勉強会の時もそれを痛感しました。JavaScriptって、実はしっかりと勉強した人は少なく、HTMLの延長で何となく独学で学んできた、という人が多いです。

改めて調べ直してみると、同じJavaScriptでも、使われ方、書き方が時代によって移り変わっているんですね。人に教えるための準備だったはずなのに、自分自身の勉強にもなりました」(吉田氏)

勉強会のテーマは、社内からの「これを学びたい」、「ここに不安がある」といった声から拾われ、設定される。テーマはニーズによって決まるのだ。

先生役は、その分野に強い人。前出の宮坂氏も、得意のデータベース関連の勉強会では先生役を務めた。社内の勉強会でフィードバックすることを考えると、自然と社外研修への取り組み方も変わるという。

「社外で受けてきた研修を社内に持ち帰って横展開する、という意識があると、自分が社内で話す時にはどのように説明したら分かりやすいか、など、研修に参加しているときから考えるようになりますね」

TSOneのユニークなところは、こういった座学での勉強会のほかに、実践編ともいえるプロジェクト型の勉強の機会も設けていることだ。

これは“SMAP”と呼ばれている。名前はもちろん、あの人気グループにあやかっている。