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ユーザー体験をうまくデザインするために知っておきたい「UXタイムライン」とは

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Webやアプリサービスの企画・開発で重要視されるようになっているユーザーエクスペリエンス(以下、UX)。

日本の成長を長年支えてきた家電製品が販売不調になり始めた10数年前から、「今後のモノづくりでは機能価値よりも体験価値が大事」という指摘はあった。が、最近はありとあらゆるビジネスで、「UXをどうデザインするか」が成長のキーファクターとなりつつある。

そんな時代背景を受け、今年2月3日、東京・港区で『Value of UX for Buisiness』と題するセミナーが行われた。主催は、サンフランシスコと東京に拠点を構えるグローバルクリエイティブエージェンシーbtrax。同社が2013年から提供しているUXデザインコンサルティングの知見を踏まえて、理想的なUXを生み出す方法をCEOブランドン・ヒル氏が講演した。

その中で出てきたのが、「UXタイムライン」という概念である。

UIの満足度は「使う時間」と反比例するが、UXの満足度は比例する

UXデザインについて講演するブランドン・ヒル氏

説明に入る前に、なぜ今になってUXデザインがここまで重要視されるようになったのかを簡単に紐解こう。

ブランドン氏いわく、「商品やサービスの機能で差別化を図るのが難しくなってきたため、企業がカスタマーにどういう体験を提供するかを考えざるを得なくなった」のが、“UXブーム”の背景にある。

とりわけIT・Web関連のビジネスでは、『Airbnb』や『Uber』を筆頭に「シェアリング・エコノミー(共有型経済)」が盛り上がっていたり、Internet of Things(モノのインターネット)も徐々にだが形になってきた。

これまでWebに“閉じていた”サービスが、どんどん現実社会やリアルマテリアルと連携し始めると、今まで以上に「体験」としての満足度がサービスの生命線を握るようになるのは自明の理だ。

「よく『UIとUXの違いは?』という質問をされるのですが、僕の定義だと、UIとは見た目を含む操作画面のことで、UXは触ってみて・使ってみて得られる体験のこと。UIの満足度はユーザーが費やした時間に反比例し、一方のUX は費やす時間に比例して満足度が上がっていくのが理想。だからこそ、部分最適ではダメなのです」

そこで知っておくべきなのが、「UXタイムライン」だ。

btraxが紹介する「UXタイムライン」

上の写真の通り、より良いUXをデザインするには、「Product」を開発する前に「Marketing」の方針を決め、「Channel(提供手段)」も練らなければならない。

かつ、タイムラインの幅が最も長いことが示すように、「Customer Service」の部分がユーザー満足度を高める大きな要因となる。

こうやって図で示されると、当たり前だと思う読者もいるだろう。ただ、実際のところ多くのサービスが、「Product」を基点にして開発されているとブランドン氏は指摘する。

「その背景には、企業内で担当部署が分かれていることもあるでしょう。皆が『UXデザインが大事』と分かっていつつも、マーケ、開発、ユーザーサポートとそれぞれの立場でしか手を打てず、タイムライン全体を考えながらデザインすることができていないのです」

USベイエリアのスタートアップの中には、「UXデパートメント」と呼ばれるUXデザインの専門部署を作る企業も出てきたそうで、彼らはUXタイムラインの上流から下流までをトータルに設計している。「こういうチームがない企業であれば、プロダクトマネジャーがその役割を担うべき」とブランドン氏は言う。

すでにサービスがある場合の「UXリデザイン法」

UXデザインには、写真右のように「Strategy(全体戦略)」、「Scope(施策の範囲選定)」、「Structure(施策設計)」、「Skeleton(施策のワイヤーフレーム開発)」、「Surface(ビジュアル/プロダクトデザイン)」という5つのレイヤーがある

では、そもそもタイムラインの流れを実践できないケース、つまり「すでにプロダクトがリリースされている」場合はどうすればいいのか。

「UXデザインを見直す際には、現状の利用データやユーザーヒアリングで得た結果から仮説を立て直し、マーケティングやチャネルの部分まで立ち戻ってファインチューニングをしていくのがよいでしょう」

先に挙げたAirbnbも、サービスをローンチした後、多くのユーザーがいたニューヨークで地道なユーザーヒアリングを行ってUXデザインを見直していたとブランドン氏は説明する。

また、TwitterやInstagramのように、作った人間が想定していたユーザー/使われ方とは異なる部分で火が付き、爆発的に普及するサービスもある。その場合も同様に、ユーザーデータやヒアリング結果を基にUXデザイン全体を見直した方が“長寿”なサービスになるという。

「ユーザーヒアリングには、フォーカスグループエキスパートレビューなどさまざまなやり方がありますが、気を付けるべきは質問の仕方。すでにサービスが走っている場合、サービス提供側が『このサービスをどう思うか率直に聞かせてほしい』と質問しても、本音ではなく色好い回答をしてしまうのが人の常です。ですから、例えば『毎日電車に乗っている時はスマホで何を見てる?』といったように、ヒアリング対象者の日常から質問していくスタイルの方が、本音を引き出せます」

ちなみに、こういった施策を行うのは、もはやプロダクトマネジャーやUXデザイナーだけではなくなっているというのがブランドン氏の持論。UXタイムラインをうまくデザインするには、「Product」の開発を担うエンジニアにも、UXを高めるための視点が必要になるからだ。

仮説を持ちながら開発を行う姿勢や、データを見ながらファインチューニングをしていく姿勢は、今後いっそう問われるようになるだろう。

Write code!の前にMake concept!な時代になってきた。

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)