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3D映画『ウォーキングwithダイナソー』監督いわく、「エンジニアリングという魔法は恐竜をもよみがえらせる」

公開

 

7000万年前のアラスカを舞台に、かつて生息していた恐竜たちの生態を描いた映画『ウォーキングwithダイナソー』が12月20日から公開される。

この作品の最大の魅力は、『アバター』などで使用された最先端の3DCG技術と、BBC EARTHフィルムズが得意とする大自然の描写とが絶妙に組み合わされていること。

BBC EARTHフィルムズはイギリスの国営放送BBCの商業部門から派生したネイチャードキュメンタリーの撮影に定評があるフィルムメイカーであり、その技術が存分に発揮されている。

特に、登場する恐竜たちの描写では最新の科学的検証に基づいて鱗や羽毛の1枚1枚の動きまでもが忠実に再現されており、観る者を太古の世界へといざなう。

監督を務めたニール・ナイチンゲール氏は、『ディープ・ブルー』、『アース』、『ライフ —いのちをつなぐ物語—』といった劇場作品を手がけてきた人物。

今回、『ウォーキングwithダイナソー』のプロモーションのために来日したナイチンゲール氏に、作品づくりの裏側について話を聞くことができた。

プロフィール

映画『ウォーキングwithダイナソー』監督
ニール・ナイチンゲール

オックスフォード大学で動物学を専攻し、主席で卒業。化学専門誌『New Scientist』のジャーナリストを経て、1983年にBBCに入社。2003年から2009年までは、BBC自然番組制作班のトップとしてテレビ、映画など約1000時間におよぶ作品を制作。2009年にはBBC EARTHのクリエイティブ・ディレクターに就任(BBC自然史番組制作班のエグゼクティブ・プロデューサーも兼任)

BBC EARTHは映画によってタイムマシンを実現する

映画『ウォーキングwithダイナソー』監督のニール・ナイチンゲール氏

—— まずは、BBC EARTHがこの作品を手掛けた意図について聞かせてください。

BBC EARTHは、これまでもテレビだけでなく多様なメディアを通じて、地球や大自然の魅力をさまざまな角度から取り上げ、紹介してきました。世界中の誰でもが楽しめるコンテンツの1つとして、今回の映画製作も実現したのです。

いわゆる“ネイチャーもの”と言われる作品が好きな人たちは、テレビや映画はもちろん、ネットや展覧会など、メディアを問わずいろんな手段で楽しみたいと思っています。今回、映画というメディアを選んだのは、7000万年前を生きた恐竜たちが存在する“アメイジングな世界”を、1人でも多くの人たちに体感してもらいたいと考えた際に、テレビではその大迫力を再現できないと考えたためです。

約46億年と言われる地球の歴史の中で、7000万年前の白亜紀後期は多様な恐竜たちが生息していた特別な時代です。この時代にタイムスリップして、スケールの大きさやリアルな恐竜たちの動きなどを体感してもらうためには映画、それも3DCGによる表現力が必要不可欠だったのです。

劇場にいながら7000万年前の世界にタイムスリップできるなんて、エキサイティングだと思いませんか?(笑)

その楽しさ、面白さをぜひ世界中の人たちに味わってほしいんです。

うろこの動きまで再現するために専用ソフトを開発

—— この映画の大きな見所として『アバター』などでも使われた3D技術を用いて、実写とCGとを組み合わせた映像づくりが話題になっていますね。

実は、背景となる7000万年前のアラスカの景色は実写による撮影なんです。今回は3Dによる映像再現のメリットを最大限に活かせるように、ライティングなどの工夫をしながら2台のカメラを使って撮影しました。

3Dによるアニメーション、実写撮影、それにライダー(LIDAR=Light Detection and Ranging)と呼ばれる最新のリモートセンシング技術の3つを組み合わせることにより、限りなくリアルな7000万年前のアラスカの景色の再現に挑戦しました。

—— 特に恐竜の動きがリアルに感じられます。

世界でも最先端の映像技術を駆使していますが、うろこの1枚1枚、羽毛の1本1本が恐竜の動きに合わせて自然に形を変えたり、動いたりします。これは、アニマル・ロジック社というVFXスタジオに依頼して、彼らが『RepTile』、『Quill』といったソフトをこの映画のために開発したことで実現しました。

最近、化石の発掘により羽毛を持つ恐竜が存在していたことが判明して話題になりましたが、このような最新の科学的な検証結果を取り入れていることも、リアルな再現を可能にしています。

—— 創作ではなくて再現。そうした究極のリアルさの追求に、4年間の製作期間を要したわけですね。

そうです。観る人を実際に7000万年前の世界にタイムスリップさせるという目的のために、リサーチも含めて4年かかりました。

最新技術を活用しながら、技術を“気付かせない”映像表現

作品制作における自身のポリシーを熱弁するナイチンゲール監督

作品制作における最新技術導入のポリシーを熱弁するナイチンゲール監督

—— どんな技術をどう組み合わせて7000万年前の世界を再現させたのかが気になります。

これは特に強調しておきたいのですが、われわれは決して最新の3DやCGの技術を見せるためにこの映画を製作したのではありません。

あくまでも、観る人すべてを7000万年前の世界にタイムスリップ~連れ去って、主人公のパッチ(パキリノサウルス)に感情移入してもらい、彼とともに旅をする~という体験をしてもらうために、さまざまな最新技術を用いたのです。

わたしは監督として、ネイチャー系の映画で最先端技術が観客の目を引いてしまっては「負け」だと思っています。

最新の技術はそれだけで観客を驚かせるものではなく、あくまでも映画を観ている人を映画に没入させるための一つのツールに過ぎないと思っています。

もしこの映画を観て、少しでも「技術の部分」を感じさせてしまったとしたら、監督であるわたしの責任です。監督失格ですよ(笑)。

—— そうした監督の意図や思いがスクリーンから読み取れる作品だと思います。

この映画では、まるでマジシャンによるショー、イリュージョンを楽しむように恐竜たちが闊歩し、争い、冒険する様子をワクワクしながら味わってもらいたいと思っています。

7000万年前の太古の時代のスケールの大きさ、ダイナミックさとともに1頭の恐竜が旅しながら成長していく姿を、できる限りリアルに描くことで、われわれも同じ時代、同じ環境に生きているかのような体験をしてもらいたい。それが監督としての願いです。

―― 素敵なお話をありがとうございました。

《映画『ウォーキング with ダイナソー』は12/20より公開》

映画『ウォーキング with ダイナソー』では、美麗な3DCG技術と、実写映像との組み合わせで、かつて恐竜が生きていた太古の地球の旅を体感できる。

12月20日(金)より全国で3D吹替版・2D吹替/字幕版が同時公開される(※一部劇場を除く)ので、タイムスリップを体験してみたい人はぜひ観てみてほしい。

>> 映画『ウォーキング with ダイナソー』公式サイト
(C)2013 Twentieth Century Fox

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴