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なぜ、ウォンテッドリーは連絡帳アプリ『CONTACT』をリリースしたのか? 制作指揮を執った仲暁子CEOの狙い

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2014年2月、シゴト充実化を促進するためのアプリやツールを提供しているウォンテッドリー株式会社は、iOSアプリ版『Wantedly』をリリースした

そして今年5月14日、同社が次なるスマホ向けアプリとしてリリースしたのが、『CONTACT(コンタクト)』だ。iPhoneやFacebookの連絡先を一括管理でき、社名や所属などの情報からも検索できる連絡帳アプリである。

日本におけるソーシャルリクルーティングサービスのパイオニア的存在として地位を築いてきた同社は、なぜ今になって事業ドメインの異なる「連絡帳アプリ」を出したのか?

少々違和感のある新展開の狙いを聞きに行ったところ、開発の陣頭指揮はCEOの仲暁子さん自身が執ったとのこと。そこには、仲さんの強い決意が秘められていた。

転職しない人たちにも価値を提供できるメディアに

「ウォンテッドリーは、ソーシャルリクルーティングサービスからビジネスにおける“キャリアプロフィール”のプラットフォームにシフトしつつある段階」と仲さんは話す。

「これまで『Wantedly』はサイト内で完結する求人媒体という面が強かったですが、去年の夏くらいから『Wantedly』の使われ方が変わってきたことに気付きました。プロフィール機能を充実させたことにより、他人に自己紹介する時の自分データベースとしての使い方をする人や、ほかの転職サービスを使う際の履歴書・職務経歴書代わりに『Wantedly』ページのURLを送る人がいることが分かったんです」

これらは、定期的に行っているユーザーテストやSNSの分析結果から導き出された傾向だという。また、スタートアップ企業のデータベースとして閲覧するといった、転職に限らない使われ方も広がってきているという。

「会社が面白いから見ているという人や、業界トレンドを研究するために見ているという人もいるようです」

このようなユーザー層の変化を受け、仲さんは『Wantedly』を中心として、ウォンテッドリーを転職希望者以外のユーザーにも価値を提供できる組織に変えなくてはいけないという考えに至る。

その過程で出てきた答えの1つが、連絡帳アプリの開発というプランだった。

「わたしはFacebookで知人と連絡を取ることが多いのですが、所属や著書は思い出せるのに名前が思い出せない、なんてことがよくあるんです。Facebookでは名前でしか個人を検索できないので、そんなフラストレーションを常日頃から感じていました。また、同じ一個人の情報でも、媒体ごとにアップデートが必要なため、ネット上に散らばっている情報ごとに差異があったりします。それらを全て解決できるインフラを作りたいんです」

同社のビジネスシフト構想は、『Wantedly』のコンセプトの変化からも読み取れる。

「去年までの“『何をするか』より『誰とするか』で運命のチームやシゴトに出会う”というコンセプトは、あくまでも仕事を探す、という面が強く反映されていました。が、今年1月からサービスコンセプトを“『はたらく』を面白くする”に変えたのは、Wantedlyを『必ずしも転職を考えていなくても働いている人なら使うのが自然』という状態に進化させたいという気持ちがあったからです」

機能、UI、安全面…『CONTACT』の開発ではすべてにこだわった

『Wantedly』の使われ方の変化と、自身の経験から「連絡帳アプリ」の制作に至ったという仲さん

『Wantedly』の使われ方の変化と、自身の経験から「連絡帳アプリ」の制作に至ったという仲さん

こうした思いを具現化する第一歩としても、『CONTACT』の開発では使いやすさに徹底してこだわったと話す。

「iPhoneの電話帳はもちろんのこと、『Wantedly』やそれに登録されているTwitter、Google +、GitHub、Facebookの情報を同期し、常に新しい情報が反映されるライブ機能、起動してすぐに電話を掛けられるクイックダイアル機能、ドラッグ&ドロップで直感的にグルーピングできる機能などを搭載しています」

仲さんがFacebookでの検索で不自由さを感じていた、社名だけでの検索ももちろん実装。ほか、名前や社名が分からなくても、iPhoneの連絡先の「ノート」に登録しているテキスト情報で検索できる機能などを搭載した。

そうなると気になるのが情報取得や連絡先の同期方法についてだが、この点には細心の注意を払っている。

「iPhoneの中にある連絡先はWantedlyのサーバに送信されない仕組みにしており、iPhoneの連絡先を勝手に『吸い上げる』ことはありません。iPhoneの連絡帳を反映した上で、WantedlyやFacebookでつながっている方の連絡先のみを反映する形式にしています」

そのほか、使いやすさを決定付けるアプリのUI設計は、ユーザーテストの結果も反映しながら何度も精査したという。

「ユーザーテストでは主に操作を間違える人の数を見ていました。ユーザーテストは約20人で行っていましたが、テスト開始後、最初の5人が終わって3人が間違えたらその時点ですぐ改良、というように、改善とテストのサイクルを短いスパンで回していました」

目指すは、「働く」を総合的に応援するプラットフォーム

「『Wantedly』を働く人全員に使ってもらいたいんです」と力強く語る仲さん

「『Wantedly』を働く人全員に使ってもらいたいんです」と力強く語る仲さん

この『CONTACT』が普及すれば、仲さんの狙い通り、今までの『Wantedly』とは異なるユーザー層にもリーチできるようになるだろう。

つまり、ウォンテッドリーがこれから『CONTACT』などのアプリリリースで目指すのは、「転職活動のスマホ最適化」のさらに先にある世界。人が働き、仕事を通じてキャリアを創っていくプロセス全体のスマホ最適化ということになる。

「日本のビジネスパーソンはみんな『Wantedly』を使っていて、ユーザーじゃない人が『えっ、使っていないの!?』と驚かれるくらい、当然な存在にしたいですね。『CONTACT』はそのための一歩で、だから妥協は許されなかった。気合入りまくりです!」

そう力強く話す仲さんからは、気圧されるくらいの決意と自信を感じた。

取材・文/佐藤健太(編集部) 撮影/竹井俊晴