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大前広樹×安生真×小林俊仁「モバイルWeb時代の開発は、道具をキュレーションする力がより大事に」【4/22トークLive開催レポ】

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ここ最近のWeb業界では、ソーシャルゲームの勃興やスマートフォンの普及、SDKやHTML5といった新技術の普及など、モバイルオリエンテッドなWebサービス開発が一大トレンドになっている。

写真左から、安生真氏、大前広樹氏、小林俊仁氏。3人のディスカッションに、当日は100名分の座席も満席だった

写真左から、安生真氏、大前広樹氏、小林俊仁氏。3人のディスカッションに、当日は100名分の座席も満席だった

はたして、注目を集めるモバイルWeb開発において、今もこれからも求められるエンジニアの資質とは何なのだろうか。

この命題の答えを見つけるべく、4月22日(日)に東京国際フォーラムで開催された『エンジニア適職フェア』イベント内にて、「モバイルWeb時代を生き抜く『エンジニア力』って何だ!?」をテーマにトークLiveが開催された。

パネラーは、UnityTechnologies Japan日本担当部長の大前広樹氏、日本Androidの会運営委員長・安生真氏、Aiming東京開発グループのジェネラルマネージャー・小林俊仁氏の3人。彼らが語る「モバイルWebの今と時代を切り拓くエンジニア像」とは一体どんなものなのか。さっそく、トークLiveの様子をレポートしよう。

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変化し続けるからこそ、”捨てる前提”で技術を使う

―― まずお3方にお伺いしたいことは、「現在のモバイルWeb開発における技術トレンドとは何か」ということです。

アプリを「作ってリリース」のラッシュがひと段落し、今はセキュリティにも注目が集まっていると話す3人

安生 去年後半あたりから、セキュリティが一つの話題になっています。アプリを作ってリリースして、という一連の流れの中で、今まではあまり意識されていませんでした。しかし最近では、作り手側もセキュリティには神経質になり始めていますよね。

小林 現在、Aimingで行っているスマホプロジェクトは、8割近いプロジェクトでUnityを使ってクライアントサイドを開発しています。サーバサイドは、Web APIであればRubyやPHPで作ることが多いです。ただ、モノづくりの開発環境やツールはこれからも新しい技術によってどんどん変わっていくので、”捨てる前提”で技術を使っていますね。

―― つまり、開発言語や環境は変わっていくのが大前提だと?

小林 はい。新しい技術に固執するよりも”新しいこと”をやっていくのが大切で、「うちはJavaの会社です」みたいなことを言って技術で自分たちを規定してはいけないと思っています。個人についても同じかと。

大前 Unityを使っている会社の多くも、実は技術的な特徴とは別の話として、「自分たちにしかできないコンテンツをちゃんと企画しているのか」というところに時間をかけています。開発ツールを考える以前に、「自分たちが提供するバリュー」をしっかり認識することが大切なんだと思いますよ。

―― 技術よりもコンテンツが大事、ということでしょうか?

大前 ユーザーが常にサービスに触れられるモバイルの世界では特にそう。Unityは統合制作環境として、今までの開発環境よりずっとコンテンツが作りやすくなっています。しかし、例えば「ビデオカメラを持っていれば誰でも映画を撮れるか」という話と同じで、誰でも優れた3Dゲームが作れるか、と言えばまったく別の話。技術による障壁はなくなってはいますが、コンテンツを作る能力まで埋まるわけじゃない。

小林 ツールはツールでしかなくて、必要であれば使うし、そうでなければ使わない。Aimingでも、会社内にはひたすらゲームをやるだけの社員が二人いて、市場で流行っているものを研究しています。

研究した内容を軸に、「この市場でこういう要素とこういう要素を組み合わせたゲームを作れば、これくらい売れるんじゃね?」みたいな話で新しいゲームを開発していくんです。その後、プリプロとかやってどんどん変えて、こねくり回しながら改良していくんですが、はじめに立てた軸は絶対にぶらさない。そのために最適な技術を選択しているんですよ。

逆に、下手に社内ライブラリとかを頑張って作ってしまって、「ちょっと古いけどもったいないから使ってしまえ」みたいなことになっている会社もありますが、これは技術がコンテンツを規定してしまっている状態なので、健全じゃありませんよね。

市場に出ているゲームや数字を研究して、そこから新しくコンテンツになりそうなものを常に探す。こうしたコンテンツの源泉がないと、技術力だけでは良いものは作れません。

提供価値を最大化するために身に付けるべき2つの考え方

―― そこで皆さんにあえて伺いたいのが、「今の時代、そもそもエンジニアって何をする人になるのか」ということです。仕様書通りに作れる人、コードを書ける人、それだけではダメなのでしょうか?

「デキるエンジニアは、常に『好奇心』を持って新しい技術に触れているという」安生氏

安生 エンジニアであれば、開発キッドでもフレームワークでも、「新しいものが出たらとりあえず使ってみたい」という人の方が多いとは思いますが、そうした好奇心を持ったり、面白そうと思えることが大事なのではないでしょうか。日本Androidの会でたくさんのエンジニアとかかわってきましたが、常に新しい技術を先んじて身に付けていく人は、はじめは仕事と関係なく始めている人が多い気がします。

新しいフレームワークなんかを好奇心で試してみて、詳しくなっていった人がその技術の専門書を書くようになって……。そうして、周りから求められていくようになるんですよね。

大前 モバイルサービスの開発に限った話ではありませんが、IT業界のトレンドに適応できて残っているエンジニアには、2種類のタイプがいると思っています。

1つ目は、エンジニア自身がコンテンツ設計力を持っている人で、世の中にこういうサービスがあったら面白いんじゃないか、次はこれが面白くなってくるのではないか、ということを考えて、自ら作ることができる人です。

2つ目は、「触媒」として機能する人。自分たちの商売やサービスの中で価値を産むポイントを理解して、それに必要な技術や、提供価値を最大化するために取り組むべきポイントが分かる人です。

例えば自分たちの商売が、「いかに多くの営業担当の人が同時に活動できるか」によって売り上げが増加するようなものなのであれば、いかにそれを最大化するかということに取り組むというのが本質です。そこには、技術者が通常扱う、いわゆる「技術の範疇」を超える事柄が含まれるかもしれませんが、それも含めて取り組むことで、はじめて流行り廃りに流されない技術の選択ができたり、新技術の評価ができるのではないでしょうか。
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