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[連載:Web業界「先駆者」の履歴書 市橋一弘 2/2] 自作アプリが名刺代わりになる時代。市橋氏が次に目指すのは……。

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市橋 1年くらいで仕事が取れるようになってきて、主にブラウザベースのアプリケーションでCRMやCMSシステムの開発をしています。Webアプリは少人数でも作れるという柔軟性があります。自分で営業して案件を取ってきて、プロジェクトをマネジメントして、仕事全体を見渡せる今のスタイルが気に入っています。大変なこともあるけれど、自分のペースで仕事ができますから。

市橋さんが会社を辞めて独立したのは、30代になってからのこと。IT技術者へのニーズの高まりは今後も続きます。しっかりと技術を培いつつ、常に新しいことにチャレンジする気持ちを忘れないことが大切です。

 

ほしいものを自由に作れる楽しさを感じて

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「趣味の延長で作ったWebアプリ・サービスが思わぬヒットをもたらす。これが今のWeb業界のトレンド」だと話す後藤氏

後藤 受託していたのはBtoBシステムが中心ですよね。『なまず速報β』はどうやって生まれたんですか。

市橋 ずっと一緒に仕事をしているメインプログラマーが新しいものを試すのが好きで、Androidアプリでもいろいろ作りたいという話をしていたんです。

で、もともとTwitterで地震速報をつぶやくサービスを個人的に作っていたので、東日本大震災をきっかけに、それをスマートフォン向けに置き換えようと。僕も「こうしたら使いやすいんじゃないか」とか、ちょこちょこ口を出していました。

後藤 最初は個人的に作っていたんですね。

市橋 趣味の延長みたいなものです(笑)。純粋に自分たちのほしいものを作ろうという。「仕事」にするつもりもまったくなかったのですが、ダウンロードが一気に伸びて、サーバがスケールアウトしてしまって。そこからは、必要な投資もして、しっかり管理を始めました。

後藤 いかにもWebアプリらしいブレークの仕方ですね。

市橋 まぁ、利益は出ていないですけど(笑)、今でも皆さんが使ってくださっているからやめられないんです。それまでは受託で仕事をしてきて、今回は自分たちが主体となっての開発でしたから、すごく面白かったですね。

後藤 今後やりたいことは何ですか。

市橋 『なまず速報β』については、さらに完成度を上げていきたい。サービスの継続性も考えていかなくてはいけないし、機能的にも視認性を高めたり、リスト数を増やすなど、いろいろなアイデアがあります。まずは、ほかのアプリケーションでも使えるようにプラグイン機能を実装できたらと考えています。あとはもちろん、いろいろとアイデアがあるのでまた別のソフトを作っていきたいと考えています。きっと、いくつかやっていくうちに自分たちの勉強にもなり、経験も増えていくでしょうし、独自開発は続けていきたいですね。

後藤 エンジニアとしては、どんなキャリアプランを描いていますか。

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「エンジニアがストレスなく技術を突き詰めていけるように、技術者を守る立場になりたいですね」(市橋氏)

市橋 将来的には、「エンジニアを守る立場」になりたいですね。業界全体を見渡すと、納期も予算も少ない中で、エンジニアに必要以上の負荷が掛かっているのも事実ですから、職人気質で技術を突き詰めていくエンジニアと仕事がしたいし、そういう人たちを守っていきたい。

Webアプリの開発でも、今後はある程度クオリティを保つための基本的なプロセスを作っていく必要があると考えています。その方がエンジニアも作りやすいし、発注する側も安心ですから。

後藤 業務系で培ったノウハウがそこで生きてきますね。Webの世界は、自動車向け組込みソフトの世界とはかなり違いますが、ギャップを感じることはありませんでしたか。

市橋 もともと趣味の範囲でアプリ開発をしていましたし、まったく抵抗がなかったですね。規模は小さくてもアイデアを形にできるのが、この世界の魅力。もちろん一つのソフトウエアを作り込んで完成度を上げていくというのも好きなんです。ただ、それは大きなプロジェクトになってしまいますよね。今のところは全体が見渡せて、自分で考えたものを自由に作れて、反響も直に感じられるのが楽しいです。

後藤 それをできるのがWebの世界ですよね。スマートフォンも今後さらに通信速度が速くなって、細かな設計が求められるでしょうし、ゲームアプリもより複雑になっていくと思います。これからはまさに個人エンジニアの出番ともいえます。

市橋 使ってみたいけれどまだ出ていないサービスはたくさんあって、そういうものを作っていけたら面白いなと。興味のある方はどんどん作れば良いと思うんですよ。会社に勤めながらでも、十分できますからね。

高度な技術や莫大なリソース、豊富な人脈がなくても作れてしまうのがスマホアプリです。エンジニアなら、少し勉強するだけで開発することも可能業務系ソフト開発の経験しかなくても、あれこれ悩む前にまず作ってみるのも一つの手です。今は、それ自体がエンジニアとして最高の名刺代わりになる時代。市橋さんはまさにその好例と言えます。