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Windows 8ほか同時多発リリースで日本マイクロソフトが仕掛ける、「UX革命」の真相【キーパーソンインタビュー】

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Windows 8、Windows Server 2012のほか、Windows Phone 8や次世代のMicrosoft Officeのリリースも控え、畳み掛けるように新製品リリースを計画しているマイクロソフト。Outlook.comはすでにプレビュー版の提供を開始、Windows AzureはOSSサポートなどの拡充も予定しているなど、BtoC・BtoBの両方で一大攻勢に出ている同社の動きに、市場はさまざまな憶測をめぐらせている。各領域のライバルとどう勝負するのか、リリースラッシュ後のマイクロソフトはIT業界の何を変えるのか。日本マイクロソフトの全技術領域を司る大場章弘氏を、編集長の伊藤健吾が直撃した。
プロフィール

日本マイクロソフト株式会社 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長
大場章弘氏

1987年、日本アイ・ビー・エムに入社。業務系SEを務めた後、1991年よりマイクロソフト株式会社(現・日本マイクロソフト株式会社)入社。サーバアプリケーションの開発統括部長、モビリティソリューション事業部長などを経て、2003年、業務執行役員に就任。翌年の米国本社赴任から帰国すると、プラットフォーム戦略本部長、Windows本部長を歴任。2008年より現職

数年前から始まっていた「Windows Reimagined」の取り組み

―― 現在はマイクロソフトの歴史上でもまれに見る「同時多発リリース」の真っ只中でお忙しい時期かと思いますが、まずは日本マイクロソフトの現状について教えてください。

2012年のマイクロソフトはグローバルで大きく舵を切っているように見えるでしょうが、社内では数年前から大きな変化が始まっていましたので、世間で想像されているほど社内は混乱していません(笑)。グローバルな戦略においても、日本マイクロソフトとしての戦略においても、方向は明確に示されていますので。

―― 大きな変化とは? 社名変更やオフィスの移転ですか?

マイクロソフト内では以前から着々と進んできた「Windowsの再創造」について、そのプロセスを語る大場氏

マイクロソフト内では以前から着々と進んできた「Windowsの再創造」について、そのプロセスを語る大場氏

それも一つです。ただ、Windowsを再創造する~これを社内では「Windows Reimagined」と呼んでいますが~ことに向けた土台づくりは、数年前から始まっていました。これをベースにしたビジネス展開においても、方向性は明確でした。

―― その方向性とは、昨年7月に事業上の新年度を迎えた際に樋口(泰行氏 代表執行役社長)さんが発表していた「デバイス」、「クラウド」、「ソリューション」の3本軸ですね。

そうです。2011年は、すべての社員がこの3つの軸を強化するために走り出した年だったということです。

もう一つ、2011年からの象徴的な動きを言いますと、コンシューマー市場への取り組みを再強化するためコンシューマー&パートナー・グループというチームが結成されました。ご承知の通り、今後 PCとモバイルの双方で大きな変革を行います。どちらも既存OSとは大きく異なる技術要素を含んでもいます。

その新しい技術要素を確実にエンドユーザー、コンシューマーにお届けするためには、開発パートナーから販売パートナーまで、一貫した形でビジネス推進を支援する部隊が不可欠、との判断から生まれた組織です。

―― 最近のWindowsと言えばBtoBユースのイメージが強くなっていましたが、改めてBtoC領域でもWindowsをReimaginedするという意味合いだととらえれば良いですか?

はい、そもそも「Windows Reimagined」はWindows 8の開発のベースになるテーマだったわけですが、簡単に言ってしまえば、これまでの方向性を見直して、新しいイマジネーションで形にしていこうというもの。

互換性を重視し、尊重しながら進化してきたのがWindows 7までだとすれば、今回はまったく新しいトライをしました。

コンピューティングのUXを再創造するには、今がすべてを変える時期

マイクロソフトのホームページ上で公開されているWindows 8 Release Previewページ

―― その新しいトライの最重要ミッションは何だったのですか?

UI/UX、とりわけユーザー・エクスペリエンスの改善です。つまり、新しいWindowsのユーザーインターフェースを追加実装することで、過去にない操作感の実現を目指しています。

―― UI/UXの領域は、どんなサービス・プロダクトでも昨今の注力分野となりつつありますが、今日ぜひ伺いたかったのは、なぜこのタイミングで大幅に見直すのか? です。

マイクロソフトが行ったWindows Phone 8の紹介イベントで、新しいインターフェースについても触れている(画像をクリックするとムービーが見れます)

マイクロソフトが行ったWindows Phone 8の紹介イベントで、新しいインターフェースについても触れている

(※画像をクリックするとムービーが見れます

平たく言えば、マルチデバイス環境でWindowsを利用し続けてもらうためです。

PCへのニーズは今後もなくならないでしょうが、従来型のPCデバイスやインフラでは「できること」の限界が見えてきた。大きな変革をしなければ、拡大するニーズに応えることができないと判断したのが、Reimaginedのスタート地点です。

具体例を一つ挙げるなら、マルチタッチインターフェースという可能性。マイクロソフトはユーザビリティ・ラボという部門で長年取り続けてきたデータをもとに、よりユーザーフレンドリーなコンピューティングの開発を何年も前から志向してきましたが、一方で過去のWindowsとの互換性を重く見てきたがゆえに大胆なチャレンジができなかった面もあります。

しかし、今回は違います。新しいWindowsのユーザーインターフェースの導入で、PCはもちろん、Windows Phoneやタブレットといったあらゆるデバイスの操作性を一新します。

UXの面で考えれば、現代におけるコンピュータ端末の利用シナリオが、PCデバイスだけでは語れなくなっていますよね? であれば、4インチ画面のスマートフォンであろうと、イベント会場に設置された大型ディスプレイであろうと、同じ操作性で、同じアプリケーションを自由に使えるようにするのが正しい方向性なはずです。

だからこそ、Windows Phoneではバージョン「7」から新しいWindowsのユーザーインターフェースを採用しましたし、Xboxにおいても順次導入を進めてきました。PCとタブレットについても採用していきます。

―― UXを再創造するためには、デバイス、ソフトウエア、OS、インフラすべてを一気に変えた方が効果的だと?

そう思ってもらって構いません。あらゆるデバイスから、あらゆる情報ソースにクラウドを通じてアクセスし、あらゆる機能を活用してもらうための準備を進めてきたのが昨年までで、2012年に、ようやくすべてのラインアップが出そろうわけです。

カーネルまで共通化を図ることで、BtoBとBtoCの「垣根」を払拭する

―― アップルやGoogleとの差別化についてはどうでしょう? 特にモバイル領域において、現状はこの2社の勢いが際立っているように感じています。

USでは2012年8月時点でBlackBerryのシェアを超えたという調査結果もあるWindows Phone

USでは2012年8月時点でBlackBerryのシェアを超えたという調査結果もあるWindows Phone

もちろん大いに意識しています。ただ、特にエンジニアの皆さんにお伝えしたいのは、Windows 8と次バージョンのWindows Phone は、カーネルも共通化しているという点です。

これまでお話ししたように、マイクロソフトが目指しているのは、あらゆるデバイスで、すべてのユーザーに共通のエクスペリエンスを得ていただくことにあります。今後、Windows 8 上で動くソフトウエアやアプリケーションを開発した場合には、非常に高い互換性を持ってWindows Phone へ移植が可能です。

PCとモバイル間で、開発環境・開発言語をここまで共通化できているのは、現時点ではマイクロソフトだけと自負しています。

―― 今のお話は、BtoB市場におけるソリューション提供のあり方や、パートナー企業の今後にも大きな影響を与えそうですね。あくまで私見ですが、マイクロソフトはさきほど挙げた競合よりも、BtoB市場における影響力が強い。

ありがとうございます。ご指摘の通り、BtoB市場でのサポートも強化していきます。特に今後は、コンシューマライゼーションがビジネスコンピューティングで大きな意味を持ってくると考えています。

―― BtoCのサービスや機能を企業の業務でも活用する、というコンシューマライゼーションは、ここへ来て広く語られるようになりました。マイクロソフトとしては、どう活かしていくのでしょう?
(次ページに続く)