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[コラム] 『ソーシャルアプリWinner’s Circle』で分かった、ヒットを生むゲーム開発の視点

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2013年、市場規模は国内マーケットだけでも約3000億円規模に(※2010年10月、いちよし経済研究所予測)――。

ITにまつわるビジネス群の中でも、市場の伸び率がひと際目立つ、ソーシャルアプリの世界。Web系のみならず、業務系のアプリ開発や運用に携わるエンジニアにとっても転職先として赤マルチェック必須なこの業界は、これからどう動いていくのか。

3月7日に開かれたイベント『ソーシャルアプリWinner’s Circle』で語られた内容は、今後を読み解く一つのカギになるだろう。

イベントを共催したのは、サイバーエージェントグループのSAP(ソーシャルアプリプロバイダー)である、サムザップとCyberX。前者は『GREE』の人気ゲームランキングで1位を取ったこともある『COORDE MANIA』 や、『モバゲーTOWN』で人気の『行列のできるラーメン屋さん』などをリリースしているSAP。CyberXも、『mixi』の人気アプリ『星空バータウン』などのリリースで有名だ。

サムザップ代表の辻岡義立氏と、CyberX代表の小柳津林太郎氏が行ったトークセッションでは、共に「これからはモバイル、特にスマートフォン上でどう勝負していくかがカギ」と予想。両社も、いわゆるガラケー向けアプリの開発・運営は続けつつ、スマホ対応アプリのリリースを視野に入れて準備しているという。

『mixi』 、『Ameba』はまだまだブルーオーシャン領域 

それ以上に注目したいのは、この2社が、『Amebaブログ』をはじめサイバーエージェントが提供する各種ネットサービスや、『mixi』のプラットフォームにも目を向けている点だ。

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「幅広いプラットフォームに展開できる強みを活かしていろんなタイプのアプリを開発していく」と語るCyberXの小柳津氏

「GREEやモバゲーのプラットフォームにアプリ提供しているSAPは非常に多く、マーケットはレッドオーシャン化している。われわれも、このフィールドで引き続き存在感を示せるように頑張っていくが、一方で、mixiアプリはまだどのSAPも”一人勝ち”していないし、Amebaには今のところサイバーエージェントグループしかアプリを提供できない。この2つのプラットフォームは、まだブルーオーシャンな領域だと見ている」(CyberX・小柳津氏)

『GREE』や『モバゲー』に比べると、この2つのプラットフォームはまだまだ未開発な領域だと、辻岡氏も同調する。

最近は『Facebook』ユーザーの伸び率が喧伝されているが、メディアインタラクティブが今年3月、日本国内800名の男女を対象に行った「ソーシャルネットワーキングサービスに関する利用実態調査」では、いまだ『mixi』が69.6%で第一位。そのほかのSNSの利用率は『Facebook』が23.0%、『GREE』が19.6%、『モバゲー』が19.4%であることからも、プラットフォームとしての『mixi』の強さが垣間見える。

さらに、同調査では「5年後も利用したいSNS」でも一位が『mixi』(38.2%)となっており、ここでアプリを積極展開し、成功を収めることのメリットは大きいと語る小柳津氏の視点は的を射ている。

要素の作り込み以上に、ソーシャルグラフの仕組みづくりが大事 

ちなみに、一位の『mixi』がユーザーから評価されている点の上位3つは、「周囲の友だちがやっている」(52.0%)、「楽しい」(51.9%)、「便利」(48.6%)だった。この結果から察するに、『mixi』のみならずSNSサービスにユーザーが期待するのは、リアルな友だちや知人とのコミュニケーションが簡単にできることだといえる。

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サムザップの辻岡氏は、ソーシャルグラフでのシェア獲得を狙いながら、いずれは海外進出も視野に入れるという

こうした背景を見ても、サムザップ・辻岡氏が語った「今後のゲームアプリ開発の肝」が非常に興味深い。今後、家庭用ゲーム開発をメインにしてきた各種ソフト会社もソーシャルアプリの世界に主軸を置き始めると予想される中で、SAPはどう勝負していけばいいか、という問いへの答えだ。

「家庭用ゲーム会社とも差別化していくために、僕たちが注力しているのは『ソーシャルグラフ』。人と人とのつながりを生むゲームアプリを作り続けてシェアを取っていくことができれば、いわゆる『ゲームづくり』を本業にしてきたソフト会社とも十分に競争していけるし、むしろ一歩先を行けると思っています」(サムザップ・辻岡氏)

今回セミナーを開催した両社は共にサイバーエージェントグループということもあって、Webの世界で人とのつながりを醸成していくノウハウはグループ間共有などで蓄積されているという。こうした利点も活かしながら、ソーシャルグラフのあり方を追求していきたいと話す。

モバイル、特にスマホ対応ばかりが注目されているソーシャルアプリ開発の世界だが、SNS本来の使われ方を理解した上で各種プラットフォームへ全方位型で開発を進めていくことが、シェア競争で優位に立つポイントになるだろう。

取材・文/伊藤健吾(編集部)