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『Yahoo! JAPAN』CMO村上臣に聞く、「爆速」を生む組織マネジメントの極意【連載:BizHack】

公開

 
CTOが、他社CTOに直接聞きたいことを聞く!自らもエンジニアながら、3社の経営に携わっている竹内真氏をインタビュアーに迎え、注目のIT・Webサービスを展開する企業の技術トップにインタビューを敢行するこの企画。ビジネスの最前線で、技術のみならず経営をも担うCTO同士の対話から、エンジニアがどのように「ビジネスを創ることのできる技術屋」へと進化すべきか、その思考・行動原則をあぶり出していく。
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連載第2回目となる今回登場してもらったのは、今年4月の経営陣刷新以降、モバイルファーストを旗印に矢継ぎ早に新施策を打ち出す新生『Yahoo! JAPAN』のCMO(チーフモバイルオフィサー)、村上臣氏だ。

同社のスマホシフトの中心を担う立場として精力的に動き回る村上氏は、取材当日もイベントでの講演終了直後に駆け付けてくれた。文字通りの「爆速」で社内外を走り回る彼が、日本一の巨大インターネット企業をどうやって変革しているのか。

日本のモバイルビジネス黎明期から技術者として活躍してきた村上氏の、「エンジニア出身CxO」としての流儀に迫った。

CTO対談「BizHack」 インタビュアー・プロフィール
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株式会社レイハウオリ 代表取締役 | 株式会社ビズリーチ・株式会社ルクサ CTO
竹内 真氏 (blog:singtacks) 

電気通信大学を卒業後、富士ソフトを経て、リクルートの共通化基盤やフレームワークの構築などを担当。並行してWeb開発・制作会社であるレイハウオリを設立。その後、ハイクラス転職サイトを運営するビズリーチ、国内最大級のタイムセールサイトを運営するルクサを創業、CTOに就任。mobyletなどのOSS活動も行っており、The Seasar Foundationのコミッターとしても活躍

今回のゲストCxO
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ヤフー株式会社 執行役員 チーフモバイルオフィサー(CMO)
村上 臣氏(@phreaky) 

1996年、青山学院大学在学時に有限会社電脳隊を創業。ヤフーによるM&Aにより同社入社。以後、『Yahoo!モバイル』、『Y!ケータイ』などの設計・開発に従事し、モバイル関連技術のトップエンジニアとなる。2011年4月、スマートフォンへの転換期に際して新たな道を模索するため、ヤフーを退社。2012年4月にチーフモバイルオフィサー(CMO)として復帰

竹内 はじめまして、本日はよろしくお願い致します。

村上 こちらこそ、よろしくお願いします。

竹内 村上さんといえば、わたしがCTOを務めているタイムセールサイト『ルクサ』で、先日セスナの体験飛行チケットをご購入いただいたそうですね! 体験飛行はいかがでしたか?

村上 すごくよかったですよ! 実は僕、昔からパイロットになりたいって夢を持っていたので、「これは!」と思って申し込んだんです。やっぱりセスナの免許はいつか取りたいですね。休みが取れればですけど(笑)。

竹内 確かに(笑)。今日はこんな雑談を含めて、Yahoo! JAPANのこと、村上さん個人のこと、いろいろと伺いたいと思いますので、よろしくお願いします!

村上 はい! 何でもどうぞ。こちらこそよろしくお願いします。

ツリー構造からベンチャーの集合体のようなユニット組織へ

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一度ヤフーを退職している村上氏。「出戻りCxO」として同社のスマホファーストをけん引する

竹内 Yahoo! JAPANは、村上さんがCMOに就任した今春に経営陣が若返り、モバイル、スマホ環境への最適化を「爆速」で進められていると聞いています。具体的にはどのような形で進められているのですか?

村上 そもそも、Yahoo! JAPANはスマートフォンへの取り組みが早かったんです。2008年にiPhone3GをSoftbankで取り扱うことが決まった時からですから、どこよりも早くスマホ市場に参入していたことになります。

竹内 なるほど、確かにそうですね。

村上 今も昔も、Yahoo! JAPANはユーザーファースト、おもてなしの精神でUIを考えているのですが、当時はどこにもスマホに最適化されたサイトUIなんて存在していませんでした。そんな折、孫さんから「iPhone取ったどー!」って連絡が来て(笑)、「iPhoneでYahoo!を見ると文字が小さい。何とかしなきゃ」って話が出まして。その後すぐに動いてからが、僕らのスマホ対応の始まりなので、Yahoo! JAPANがどこよりも先にスマホに最適化したんじゃないかって思ってるんですよ。

竹内 わたしもニュースコンテンツなどを通じてYahoo! JAPANさんにはお世話になっていますが、初期のころからスマホに最適化されていたような記憶があります。

村上 でも、あれから4年経って、内部では意思決定や実行が遅くなるという問題を抱え始めたんです。Yahoo! JAPANも、グループ全体で5000人くらいの規模になりましたからね。業務を回すためにラインをつくり、組織のツリー構造化を進める過程で、どうしてもコミュニケーションロスが増えていった。

竹内 そうだったんですか。

村上 特にここ数年、市場環境が厳しくなるにつれ、会社としてもできる限り体脂肪を落とし筋肉質な組織になろうとムダを削ぎ落してきました。もちろん、それはそれで一定の成果はあったんですが、今度は職種ごとの部分最適が進み過ぎてしまい、今度は部門間で仕事の橋渡しがうまくいかなくなるような問題も出てきたんです。

竹内 サッカーで言う「リベロ」っぽい動きができる人がいなくなってしまったんですね。

村上 そうなんです。クルマのエンジンも、キチキチに組んでしまうとピストンが動かなくなるじゃないですか。でも逆に、緩過ぎれば緩過ぎたでガタついて上手く動かない。組織にも、管理されたアソビが必要だったことに気付くわけです。

竹内 確かに。

村上 それで、今春の組織改革で「1サービス1チーム体制」に改めました。京セラさんの「アメーバ経営」のように、社員全員に当事者意識を持ってほしかったからです。各職種をサービスごとの小さなユニットに分けたことで、Yahoo! JAPANはベンチャーの集合体のような組織に生まれ変わったと言えます。

新規プロジェクトの承認プロセスも、「8」から「2」へ減らす

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話題はおのずと「爆速」を生み出す体制の詳細へ。CTOとして会社を率いる竹内氏も興味津々の様子

竹内 1つのユニットはどのくらいの人数なのですか?

村上 5人~10人くらいのチームが多いですね。多くても1チーム20~30人くらい。最小だと企画担当が1人、エンジニア2~3人、デザイナーは複数のチームにまたがっていることも多いので1人。そのくらいの規模感ですね。

竹内 思ったよりも小さなチームでサービスを開発・運営しているんですね。

村上 チームごとにP/Lを見るようになったことで、開発者であっても広告の売り上げを気にするようになり、意思決定から実行までのスピードがずいぶんと速くなりました。この組織変更によって、今まで8個もあった新規プロジェクトの承認プロセスも、2つに減らせたんですよ。
(次ページへ続く)