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「出店無料化の次の一手は年内をメドに」Yahoo!ショッピング小澤隆生氏が描く、未来のeコマース構想

公開

 

ストア出店料と売上ロイヤリティをゼロ円に―― 。Yahoo!ショッピングヤフオク!への出店の敷居をグッと下げる、衝撃的な発表があったのは10月7日。

発表の内容もさることながら、孫正義氏が「eコマース革命」と胸に描かれたTシャツを着て「これまでのヤフーは間違っていたという結論になった」と発言したことも、業界内の耳目を集めた。

生まれ変わろうとするYahoo!ショッピング。この事業をけん引するのは、ヤフーで執行役員を務める小澤隆生ショッピングカンパニー長だ。

「おざーん」という呼び名で知られる同氏は、過去には中古品売買サイト『ビズシーク』を設立し、その後は楽天野球団の創設、個人投資家を経てソーシャルマーケティング支援のクロコスを共同創業するなど、数多くの事業を創造してきた。

プライベートでも1トン以上の豆を数百名で投げ合う『すごい豆まき』を企画・実行するなど、いわば新規事業のスペシャリストである小澤氏は、今回どのようにeコマース革命に挑むのか。戦略、戦術は、そして技術的な武器は何なのか。

「この7月に担当役員になるまで、Yahoo!ショッピングは一度も使ったことがなかった」という小澤氏に、eコマースの未来を編集長の伊藤健吾が聞いた。

プロフィール

ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長
小澤隆生氏

1995年に早稲田大学を卒業後、CSK(現・SCSK)に入社。すぐに新規事業を企画し、1999年にビズシークを事業化、2001年に楽天へ売却。以降、楽天オークション担当役員や楽天野球団の創設に従事。2006年楽天グループを退社し、スタートアップへの投資やコンサルティングを行う。2011年、クロコスを設立し取締役就任。2012年、クロコスをヤフーに売却し、ヤフーグループの一員に。YJキャピタル設立に伴い、取締役COOに就任。2013年7月より現職

いずれ「個人のたんすの中」まで売り買いの対象に

―― 本日は、お忙しいところありがとうございます。また、東北楽天ゴールデンイーグルスの日本一、おめでとうございます。

ありがとうございます。会う人会う人に言っていただいて、本当にうれしいです。

―― さっそく本題ですが、各種手数料を無料化してYahoo!ショッピングを生まれ変わらせ、eコマース革命を成し遂げることが、今の小澤さんのミッションだと思いますが、どうやって成功させますか?

現代社会は、ネットで買えるモノと量が増え続けています。今回Yahoo! JAPANが発表したeコマース革命の構想は、この進化のスピードをちょっとだけ上げるための取り組みです。

当面は、10月7日に発表した出店料と売上ロイヤリティ無料化を切り札に、主に売り手側への施策を重点的に行っていきますが、今後は買い手とのマッチングを含めたトータルな施策によってYahoo!ショッピングを生まれ変わらせたい。

―― 「進化のスピードをちょっとだけ上げる」とのことですが、そもそもeコマースの未来像はどのようなものになると?

例えば、今はペイメントサービスも発達していて、ネット決済のやり方もかなり変わっていますよね。100%すべてのモノがネットで売り買いされるとは思っていませんが、世の中のモノの20%くらいは、ネット上で買い物ができるようになるんじゃないかと推察しています。

それに、Yahoo!ショッピングは購買データを把握できるので、その人が買った商品をいつか売りたいとなったら、わざわざデータエントリーをしなくてもその商品に対するフラグを「所有」から「出品」に切り替えるだけで、買い手とのマッチングを始められるようになるかもしれません。

こんな世界がやってきたら、と考えるとワクワクしませんか?

―― その未来像を具現化するには、どのようなステップが必要になるのでしょう?

理路整然と、しかし熱っぽく話す様子が印象的な小澤氏

3つのフェーズがあると考えています。

第1段階は、今回打ち出した無料化しかり、料金的な壁を取り除くこと。2つ目は使いやすさの追求、3つ目がテクノロジーを駆使した買い手とのマッチングです。

第1段階の狙いは、もちろん出店数と品揃えを増やすことです。今回の無料化は、Yahoo!ショッピングを「何でもある世界」に作り直すためには必要不可欠でした。

また、出店数と品揃えを増やすには、売り手がめちゃめちゃ使いやすい仕組みづくりも重要です。

そういった仕組みを全部整えて、「Yahoo!ショッピングになら出店してもいいかな」と思ってもらえる場にするのが、第1~第2段階だと考えています。

自戒を込めて言うと、これまでのYahoo!ショッピングは、売り手が積極的に「出店したい」と思う存在ではありませんでした。アンケートを見ても、「楽天にも出したので、2店舗目を」といった方々が非常に多い。

これを、「Yahoo!ショッピングになら」へ変えていきたいんです。

出店者が爆増すると、出品数も爆増します。すると、買い手はこれまでネットでは買えなかったようなモノがYahoo!ショッピングでなら買えるようになります。また、同じものを買うにしても、価格やアフターサービスのバリエーションが増え、選択肢が増えます。

―― ヤフオク!も、手数料を無料化していますね。

誤解を恐れずに言えば、「個人のたんすの中」も検索対象にするためにハードルを下げたということです。

こうすることで、使わなくなったら死蔵しておくか、リサイクルショップに売るくらいだった個人の所有物が、ほかの買い手の買い物の対象になります。冒頭でお話した「フラグの切り替え」だけで売り買いができるショッピングサイトができれば、今までのものに比べて明らかに異次元の世界ができるはずだと。

2分で出店できるツールを開発中。農家、漁師のEC利用も探りたい

Yahoo!ショッピングの「出店者向けページ」のトップにも、eコマース革命の文字が(2013年11月時点)

―― 出店者数を増やすため、無料化以外に使いやすい仕組みを用意するとのお話ですが、具体的にはどんな施策を?

社内で「ライトツール」と呼んでいる、簡単に出店できるツールをリリースする予定です。

これまでは出店のプロセスが複雑で、出店準備には平均で約2週間かかっていました。これを、2分くらいに短縮できるツールを開発中です。

リリースは今年12月が目標ですが、実際はその時期にクローズドβ、正式リリースは来年にずれ込むかもしれません。

また、個人ユーザーをターゲットにした、スマートフォンから出店できるツールの開発も、同じスケジュールで進めています。

ツール開発のほかには、出店を検討されている方に向けたセミナーも開催したいと思っています。現在のところ、1000から1700カ所くらいで開催を予定していて、さっそく11月の頭から地方行脚に出ています。

―― 小澤さんもすべて出席を?

さすがに全部は難しいでしょうが、時間が許す限り出席して、出店を希望される方の目を見てお話をしたいし、聞いてみたいこともたくさんあります。特に、地方に行ってみたいんですよ。
(次ページへ続く)