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ヤフー新経営陣「スマホ時代のNext Big Thingを作るため、”ならず者”たちを解き放つ」【キーパーソンインタビュー】

公開

 
経営の若返りとスマホシフトに向けて、新執行体制へ――。日本のインターネット業界最大手であるヤフーが、今年3月1日に発表した新経営陣が、4月1日から本格始動した。その中心を担うのが、新CEOに就任した宮坂学氏と、”出戻り”でモバイル推進のトップに就いた村上臣氏。2人はこれからのモバイルWebの時代をどうとらえ、ニッポンのネット社会をどうチェンジしていくのか? 編集長の伊藤健吾が、その構想に迫る。
プロフィール

ヤフー株式会社 執行役員 最高経営責任者(CEO) (次期 代表取締役社長)
宮坂 学氏

1967年生まれ。同志社大学経済学部卒業。1997年よりヤフーに参加。ニュース、スポーツ、株式情報、映像配信など新聞・出版・放送とインターネットの領域でプロデューサーとして従事。2002年よりメディア事業部長、2009年よりコンシューマ事業統括本部長に就任。2012年4月、同社CEOに就任

プロフィール

執行役員 チーフモバイルオフィサー(CMO)
村上 臣氏

1996年、青山学院大学在学時に有限会社電脳隊を創業。ヤフーによるM&Aにより同社入社。以後、『Yahoo!モバイル』、『Y!ケータイ』などの設計・開発に従事し、モバイル関連技術のトップエンジニアとなる。2011年4月、スマートフォンへの転換期に際して新たな道を模索するため、ヤフーを退社。2012年4月にチーフモバイルオフィサー(CMO)として復帰

 
―― 今日はお時間をいただきありがとうございます。まずは4月からの新体制を発表後、最初の社内プレゼンでお話になった内容をお聞かせください。新聞報道によると「感動的な内容だった」と。
 
宮坂 簡単に説明すると、僕はインターネットが大好きで、まだまだネットでやれることってたくさんあると思っているから、ヤフーでしかできないスケールの大きなことをやろうという話をしました。
 
―― 業績好調にもかかわらず、今回の体制変更を行った最大の理由は、ヤフーがまだ本格的に着手していない「スマートデバイス時代の新しいネットサービスづくり」を加速化させるということでした。
 
社名である『Yahoo!』の語源を明かしながら、第二次創業期を「暴れながら創る」と宣言する宮坂氏

社名である『Yahoo!』の語源を明かしながら、第二次創業期を「暴れながら創る」と宣言する宮坂氏

宮坂 そうです。これまでのヤフーは、いろんな苦労はあったけれど、「PCのインターネット」の世界では一定の成功を収めてきました。でも、スマートフォンやタブレット端末の台頭もあって、これからは確実にネットのあり方も変わっていく。
 
私見では、2000年当時にインターネットが普及し始めたころの世の中にあったワクワク感が、もう一度復活したような印象です。
 
もともと、『Yahoo!』という社名は「ならず者」という意味を持っているんだと(米国ヤフーの共同創業者である)ジェリー・ヤンに聞いたことがあります。なので、社内プレゼンの時もその話を引き合いに出しながら、「もう一度僕らがならず者に戻って、ネットの可能性を広げるようなことをやってやろうぜ」という話をしたんです。
 
―― 日本のインターネット業界のリーディングカンパニーが、初心に戻って暴れるということですか?
 
宮坂 そうとらえてもらって構いません。ヤフーはこれまで、『Yahoo! BB』や『Yahoo!オークション』など、日本のインターネットで先駆けとなる事業を、どこよりも大胆な手法で成功させてきたと自負しています。でも、「スマートフォン時代のヤフー」は、まだまだやっていないこと、やれていないことがたくさんある。それらを、再びならず者の気合いでやってみたい、と。
 
―― 具体的に、ヤフーならではのスマートフォン・ビジネスとして構想しているものはあるのでしょうか?
 
宮坂 いろいろ考えていることはあります。ですが、まだ明確に公表できるような事業プランにはなっていません。これから(社長に正式就任する)6月までの間に、隣にいる村上なんかとも話し合いながら、具体的な形にしていきたいと思っています。
 

「ドロ水に浸からないと、モバイルの”リアル”は分からない」

―― 新体制が発表される中、特に注目したのが村上さんの存在です。一度ヤフーを離れていた村上さんを、宮坂さんが再び呼び戻した理由は?
 

長年ヤフーのモバイルサービスを手掛けてきた村上氏を「呼び戻す」形でCMOに任命した宮坂氏。信頼は厚い

長年ヤフーのモバイルサービスを手掛けてきた村上氏を「呼び戻す」形でCMOに任命した宮坂氏。信頼は厚い

宮坂 今後スマホに注力していくにあたって、村上しかいないと思い、お願いしました。僕が知る中で、スマホビジネスといったら村上の右に出る者はいません。だから、新生ヤフーを作っていくのを手伝ってほしいと、「出戻り」をお願いしたんです。

 
―― 宮坂さんも認める「ならず者」代表といったところでしょうか(笑)。
 
宮坂 その通りです(笑)。
 
―― 村上さんの経歴を拝見すると、確かにモバイル畑一筋ですよね。
 
村上 えぇ、わたしはヤフーだけでなく、世の中のインターネットビジネスの主流が圧倒的にPCだった時代から、モバイルしかやってこなかったような人間です。特に日本のモバイルプラットフォームは長きに渡って”閉じた世界”だった。通信キャリアが違うと行き来さえできない。ソフトバンクがボーダフォンを買収するまでの間は、『Yahoo! モバイル』もいわゆる「勝手サイト」でしかなかったですし。それを、何とかオープンで可能性のある面白いステージにしたくて、ずっと格闘してきました。
 
― 村上さんが一度ヤフーを辞めた理由は何だったのですか?
 
村上 これは良い・悪いという話ではなく、やはりこれまでは「ヤフー=PCサービス」の会社だったわけで、PCの優先度が高かった。けれど、近年いろんなスマホ向けサービスが加速度的に立ち上がっていく中で、「ドロ水に浸からないと、この世界で起きている”リアル”は分からない」と考え、外に出ることを決めました。
 
―― 「ドロ水に浸かる」とは?
 
村上 わたし流の言い方なんですが、要するに自分でも手を動かして、スピード感を持ってプログラムと向き合わなければ、モバイルユーザーの満足度向上とか、そういう部分に到達できるサービスは生み出せないと考えたわけです。ヤフーは大きな会社になりましたし、わたしも以前の在籍時は管理職のような立場で100人くらい部下をいただいてしまっていた。ありがたかったけれど、「これじゃドロ水には浸かれない」と考えたんです。
 

新興ベンチャーとも伍して戦うための「爆速化」を推進

―― 村上さんがおっしゃったように、最近のスマートフォン向けサービスやアプリ開発などの世界は、少数精鋭のチームがものすごいスピードで開発して成功を収めています。ちょっと意地悪な質問になりますが、いまや巨大組織になったヤフーが、勢いのあるスタートアップベンチャーやソーシャル系サービスの会社と伍して、「ドロ水に浸かる」ような世界で勝負していけるのでしょうか?
 
村上 確かに、最近元気のあるスタートアップベンチャーは、良い発想が浮かんだらすぐに形にしてリリースしてしまうスピードを持ち合わせています。そんな世界で、エンジニアだけでも約2000人を擁する大所帯のヤフーに何ができるのか? というのは、今後の命題だと考えています。
 
宮坂 でも、それをやり遂げるために、今回の体制変更がある。そこで、まずは「爆速化プロジェクト」を立ち上げました。
 
―― 「爆速化」とは?
 
ソーシャルサービスの開発で台頭する各種スタートアップ企業にも負けない「思考と開発の高速化」を推進する村上氏

ソーシャルアプリの開発などで台頭する各種スタートアップにも負けない「思考と開発の高速化」を推進する村上氏

村上 情報を得てからの状況判断の速さ、意思決定の速さ、そして(開発の)手を動かす速さ。この3つを爆発的にスピードアップしよう、という社内キャンペーンみたいなものです。
 
宮坂 具体的に何を「爆速」で作っていくかについては、村上に任せています。ただ、2人で共有しているのは、「スマートフォン時代になってもヤフーが『世の中の課題解決エンジン』になれるサービスを開発しよう」というポイントです。
 
インターネットはこれまで、社会や生活の「こうなったら良いのに」といういろいろな課題を解決するエンジンになってきました。でも今、PCからスマートフォンに移行し、有線から無線にシフトしてきて、また新たな「こうなると良いのに」が生まれています。そこで、まずはPCにはできなかった課題解決をどうやるかを考えなければならない。そのための「爆速化」です。
(次ページに続く)