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「スマホで知育」のベターな距離感を考える~スマートデバイスを使いこなす子どもたち【連載:五十嵐悠紀】

公開

 
天才プログラマー・五十嵐 悠紀のほのぼの研究生活
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筑波大学  システム情報工学研究科  コンピュータサイエンス専攻  非数値処理アルゴリズム研究室
五十嵐 悠紀

2004年度下期、2005年度下期とIPA未踏ソフトに採択された、『天才プログラマー/スーパークリエータ』。筑波大学 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 非数値処理アルゴリズム研究室(NPAL)に在籍し、CG/UIの研究・開発に従事する。プライベートでは二児の母でもある

iPhone5s/5cなどの新機種が発売され、先月には薄型iPad Airなど新機種が発表と、ますます注目されているスマートデバイス。

スマホを操作する子ども

子どもがスマホをいじる姿はすでに一般的になりつつある

それに伴い、スマホユーザーの低年齢化も進んでおり、街中でスマホを操作する子どもの姿も珍しくなくなりました。

「小学生未満(0~6歳)の子どもが、家族で所有するスマートフォンやタブレットを利用している割合は43%」という驚異的な数値からも分かるように、子どもへの普及率もどんどん伸びています。

また、各おもちゃメーカーからも、スマホ型のおもちゃがたくさん販売されていたりします。

わが家の子供たち(4歳と2歳)もスマホ大好き人間で、興味を持って使い出したのは1歳半ごろ。母であるわたしの使い方を横目で見ていて、使い方を覚えてしまいました。

写真の一覧から自分の好みの写真や動画(ほとんどが自分の写っているものですが。笑)を選んだり、再生したりはお手の物。

パスワードも盗み見して、番号を覚え、ロックを解除して遊んでいます。新型iPhoneに指紋認証がついたのは、このようなお子さんが勝手にいじってしまうような環境にいる方から見ても、喜ばしいことですね。

今回は教育という観点から、スマートフォンが子どもにもたらす功罪について述べてみたいと思います。

「スマホで動画」は、語学を聞きながら学べるetc.の利点も

「スマホ利用の低年齢化」と聞くと、悪いことばかり取り沙汰されているようにも思いますが、わたしは“うまく”使えば良いと思います。

電車内でスマホの動画ばかり見せる母親や、子どもにはスマホを見せながらカフェで友人とお茶をする母親など、どうしても悪い部分は目立ってしまいますが、マナーに良い悪いがあるように、何にでも良い面と悪い面があるので一概にスマホの低年齢化はよくない!と決めつけるのもよくないでしょう。

わが家では夫が反対派、わたしが賛成派なので、わたしが見ている範囲ではOK、夫の在宅時間はダメ、と子どもは勝手に判断するようになり、夫が帰ってくると、ほかのおもちゃの片付けと同様、「おしまーい」と定位置に片付けるようになりました。

スマホの低年齢化でもたらさせるメリットですが、わが家ではスマホを通じて、子どもが語学に興味を持つようになりました。

YouTubeのサジェスト機能が楽しいらしく、子どもが自分で遊んでいるうちに、いつのまにか英語など日本語以外の歌も聞くようになっていました。読み書き共に「あいうえお」よりも先に、ABCの26文字を覚えてしまい、発音もとてもよく、親としてはびっくりします。

フォニックス(※a=ェア、b=ブッ、c=クッ、のようにアルファベットすべての発音の規則性を学ぶ学習方法)関連の動画も好んで見ていたので、知らない単語でも綴りを見て発音だけはできたり、中国語で童謡を歌い出したこともあります。

語学は耳から入る音が大事だったりするので、YouTubeなどに挙がっているホームビデオなどで十分楽しみながら音を覚えることができるようです。RとLの発音などのように幼いころに身に付けることを推奨されているようなものには最適ですね。

教育を「スマホだけ」で行わない工夫も大切

息子専用に夫婦で自作したしょうちゃんカルタ

わが家のひらがな教育に一役買っている、長男のために夫婦で自作した『しゅうちゃんカルタ』

一方、教育ではスマホばかりに偏らないよう、実際に手を動かすブロックやパズル、折り紙などにも興味を持たせるように仕向け、スマホと合わせてバランスよく使っています。

例えば、上記の語学の例だと、英語だけでなく、ひらがなも覚えてもらうために、Amazonで『無地かるた』というものを購入し、息子専用に夫婦で自作カルタを作って3歳の誕生日にプレゼントしました。

集中してカルタで遊び、1週間でひらがなを覚えてしまいました。ひらがなを覚えた後に待っていたのは、読み札を読む係を3歳の息子がやり、大人が絵札を取り合うという、想像もしていなかった光景でしたが(笑)。

今は、漢字書き順アプリに夢中で、ひらがなの時には書き順は無視で形だけで覚えていたのですが、「書き順」というものがあることに気付き、「山」や「中」などの簡単な漢字や漢数字などを自主的に練習しています。スマホの画面をなぞって何度も練習し、書き順が違うと教えてくれる。そんなフィードバックを楽しんでいるようです。

ただし、これもそのままにしてしまうと「画面上で指を使ってなぞって書く」だけになってしまうため、紙に書く習慣をつけるためにも「どういう字が書けるようになったの?」と紙を渡して鉛筆で書いてもらったり、毎日絵日記を書かせてみたりしています。

「スマホ×子ども」から生まれる研究の種

子どもの検索の仕方は面白く、長男が3歳半のころには

「はやぶさのれてくるぷられーるのうた」

と入力して“検索結果はありません”なんて表示されていたこともあります。

正確には、東北新幹線“はやぶさ”のプラレール(電車のおもちゃ)が出てくる動画を見たかったのですが、子どもは単語で区切って検索する、なんてことを知りませんし、日常会話の中で「出てくる」を「れてくる」と思い込んでいたのです。

こんな子どもの検索に対応できるような検索エンジンというのも、既存技術を組み合わせて作れそうで研究ネタになりそうだな、と思いながらその様子を眺めていました。

しかし、1週間後には、きちんと文節に区切って検索をすることを覚えて「おりがみ おりかた」と検索していました。検索結果として出てきた折り方の手順(イラスト)が難しいと、先の検索キーワードに「かんたん」を付け加えて検索することまで覚えていました。

子どもの操作方法や考え方を見ていると、子どもの順応力に感服すると共に、技術で何とかしようとすれば自動的に補完や修正をすることは可能であることでも、そのように自動でやってしまう“機械任せ”で本当に良いのか? といったことも考えさせられます。

最近はSiriで遊ぶようにもなりました。音声認識技術も発達して、「ドラえもん」や「アンパンマン」などの固有名詞も検索で簡単に認識します。

しかし、2歳の次男がSiriに向かって「あんまんまん」と発音すると、「うーうー」と認識されたりと、まだつたない子どものしゃべりは認識しづらいのが現状です。

例えば、それを母親が「アンパンマン」と文字で訂正入力してあげることで、次回からは「あんまんまん」の入力が来たら「アンパンマン」と認識される、という技術もできることでしょう。これも上記と同様、支援してあげてしまうことが良いことかどうか、というのは疑問が残りますが。

フリック入力

幼児から大人までフリック入力は世代を問わず使える

昔ながらの携帯(フィーチャーフォン)で、「あ」を5回押すと「お」に変換されるということを子どもが理解するには時間がかかりましたが、フリック入力はすぐにできるようになりました。

「か」と長押しして、「きくけこ」と表示されるのを待ってから入力、とゆっくりですが、自分で文章を入力できる喜びを感じているようです。

このようなユーザへの視覚的なフィードバックをつけておくことで、対象年齢を広げることができますし、フリック入力が不慣れな人でも入力可能になります。

いろいろな場面でユーザインタフェースを考える上で視覚的フィードバックや音声フィードバックなど必要な人に必要なときにだけフィードバックすることの大事さを実感できます。

ちなみに、研究成果のアプリも多く登場しています。

例えば、コンピュータグラフィックスの国際会議SIGGRAPHで発表された技術によるアプリだと、フリーハンドで描くだけで3次元モデルを作ることができる“Teddy”のアプリ『Sunny3D』や、人が描いたスケッチを「これは○○の絵ですね」と判断してくれるシステム論文“How Do Humans Sketh objects?” のアプリ『WhatsMySketch』、写真や画像を指で動かしアニメーション化できる研究のアプリ『Dance Me』などもあります。このように最先端の研究成果に一般の人が直接触れることができるのもアプリの利点です。

スマホネイティブ世代を守る親のフィルター

わが家ではスマホ型おもちゃは使っていません。おもちゃを買わなかった理由は、当時おもちゃ屋さんで見ていたどのおもちゃにも、たまたま、小さい「ゃゅょ」がなかったからです。

長男が興味を持った頃は、文字を押すと読み上げてくれるようなスマホ型おもちゃが主流だったのですが、うちの子の名前には小さい文字が入るので、自分の名前を読み上げてくれないのは残念なので買わないうちに大きくなってしまいました。

本物ではなくおもちゃだからダメ、というわけではありませんし、おもちゃもたった数年でどんどん進化してきており、本物顔負けのスマホ型おもちゃがたくさん発売されていて面白いですね。

わたしが初めてゲーム機に触れたのは、5歳の誕生日に買ってもらったファミコンでした。当時とってもうれしくて毎日ゲームをしていたのを覚えていますが、両親はそれを規制するわけではなく、ピアノを弾いたり、本も読む楽しさなどと同じように、時には一緒にゲームをしたりしながら、バランスよく見守ってくれていたように思います。

わが家の長男ももうすぐ5歳の誕生日。たくさんの情報があふれていますし、デジタルデバイスも増えていますが、子ども心を思い出しながら、良いところも悪いところも理解した上でうまく使いこなせたら良いと考えています。