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東京五輪招致VTRの制作会社KOO-KIの「絶対に『オモシロイモノ』しか作りません」宣言を支える「演出的な感覚」とは

タグ : iPhoneアプリ, KOO-KI, カンヌライオンズ, 映像制作, 東京オリンピック, 江口カン, 空気株式会社 公開

 

福岡のクリエイティブ・スタジオ 空気株式会社(KOO-KI)

2020年、東京でオリンピックが開催されることが決定してはや1カ月。

招致成功に貢献したPRフィルム『Tomorrow begins ~未来(あした)がはじまる~』を企画・制作したのは、福岡市を拠点にしているクリエイティブ・スタジオ、空気株式会社(KOO-KI)である。

同社は2009年のカンヌ国際広告祭(現在は「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」に改称)での金賞受賞や、2013年の観光映像大賞での観光庁長官賞受賞など、国内外から高い評価を受けている。

東京ではなく地方に拠点を置く企業が世界中からオファーを受けられる理由について、KOO-KIの共同創業者であり、同社のディレクターを務める江口カン氏に聞いた。

そこには、KOO-KIのモノづくりに対する強いこだわりが垣間見えた。

映像の輸出において意識すべきは非言語コミュニケーション

空気株式会社(KOO-KI)江口カン氏

九州でskypeでの取材に応じてくれた江口カン氏

国際的な評価の高いクリエイティブをリリースし続けているKOO-KI。海外で評価されるもの、日本国内で評価されるものに違いはあるのだろうか。江口氏は次のように語る。

「海外ではノンバーバルコミュニケーション、つまり非言語での表現が重要な傾向にあります。日本のCMなどは言葉で状況や商品を説明していたり、字幕や商品名のテロップが表示されていることが多いですが、われわれの作品のうち、海外で評価されたものはほとんどそれがありません。そこが一番大きな違いですね」

その違いはKOO-KIが過去に手掛けてきた作品を見ても顕著である。

2009年のカンヌ国際広告祭で金賞を取った『LOVE DISTANCE』や2008年の同コンクールで銅賞を獲得した『NIKEiD [escort]』は、そのほとんどの時間が音楽と映像だけで構成されており、初見では企業のロゴが出るまで何のCMなのか分からない構成になっている。

「LOVE DISTANCE」

「LOVE DISTANCE」 ※動画はリンク先から(一部モバイルでは表示されない可能性もございます)

「NIKEiD [escort]」

「NIKEiD [escort]」 ※動画はリンク先から(一部モバイルでは表示されない可能性もございます)

逆に日本国内で話題になった『スニッカーズ [ロッケンロール]』や『マキタ「草刈だ!」』のCMは、全編登場人物のセリフで内容が補われている。

「スニッカーズ [ロッケンロール]」

「スニッカーズ [ロッケンロール]」 ※動画はリンク先から(一部モバイルでは表示されない可能性もございます)

「マキタ『草刈だ!』」

「マキタ『草刈だ!』」 ※動画はリンク先から(一部モバイルでは表示されない可能性もございます)

このような差が生まれる原因を、江口氏は次のように推測する。

「多民族で形成されているアメリカなどの国では、映像におけるバーバルなコミュニケーションが成り立たない場合も少なくありません。そのため、国内ではノンバーバルな表現に触れる機会も自然と多いのでしょう。隠喩表現を読み解く力が自然と鍛えられているのかもしれません」

江口氏は続ける。

「今回の東京オリンピックの国際招致映像のようなPRフィルムは、どうしてもたくさん説明したくなりがちなんですよね。東京のインフラはこうで、東京でやるメリットはこうで、というように。そういった役割は、ほかのチームが作る映像に任せて、僕らの担当する映像は海外を意識して言語による説明を一切省き、全世界の人が分かるようなエンターテインメントに徹しました」

仕事の価値は自分が“嫉妬”できるかどうか

「絶対に『オモシロイモノ』しか作りません」宣言は同社HPの「about」のページでされている

「絶対に『オモシロイモノ』しか作りません」宣言は同社HPの「about」のページでされている

上記で紹介したCMでも分かるとおり、KOO-KIが作る映像作品はかなりエッジが立ったものが多い。同社は自社サイト上で「絶対に『オモシロイモノ』しか作りません」と宣言している。クリエイティブに絶対の自信がある表れと見て取れるが、ここで言う「オモシロイ」の基準とはいったいどこにあるのだろうか。

「ホームページで掲げている宣言の中での『オモシロイモノ』の基準は、(1)しっかりとエンターテインメントな映像であること。(2)しっかりと記憶に残る映像であること。(3)しっかりと効果や影響力のある映像であること。(4)何よりもおもしろくて楽しくて見ていて時を忘れるほどワクワクする映像であることです。われわれは映像を作る時、必ずこのあたりに意識をおいて製作をしています」

江口氏個人としての「オモシロイ」は、さらに少しニュアンスが加わるようである。

「わたし個人としての「オモシロイ」の基準は“嫉妬”するかどうかですね。ある作品をわたしじゃない誰かが作っていたとして、それを第三者目線で見たときにわたしが“嫉妬”の感情を抱くかどうか、『やられた!』と感じるかどうか、感じられたらそれは『オモシロイ』作品なんです。当たり前ですが、自分が生み出すものはそうであってほしいと思います」

 アプリUI設計を助けた映像制作のノウハウ

こうした「オモシロさ」を生み出すKOO-KIのモノづくりには、映像の冒頭を見て最初にどう惹きつけるのか、それからどのような感情を与えて、どう行動に移させるのか、最後にどのような印象を与えて締めくくるか、という「演出的な感覚」が必要だと江口氏は語る。

「KOO-KIでは、映像作品のほかに『Mr.shape(ミスター・シェイプ)のタッチカード』というiOS対応のアプリもリリースしています。このUI設計にも、映像製作で培った『演出的な感覚』が活きていると思います」(江口氏)

『Mr.shape(ミスター・シェイプ)のタッチカード』

『Mr.shape(ミスター・シェイプ)のタッチカード』は第15回文化庁メディア芸術祭にて、審査委員会推薦作品(エンターテイメント部門)に選出された

『Mr.shape(ミスター・シェイプ)のタッチカード』は触って楽しめる絵カード知育アプリ。実際にアプリをやってみると、ホーム画面で表示されるメニューボタンが動いており、どこをタップすればいいかが子どもでも一目で分かるようになっているのと同時に、つい押してみよう、という気持ちに駆られる。

メイン機能である「あそぶ」のボタンをタップすると、自転車やピアノ、ブドウなど9つのカードが表示され、そこから1つを選んで絵を触る。すると絵に仕込まれた細かいギミックが画面の触り方、指の動かし方によって変化する。

例えば、ブドウのカードなら房についている紫の巨峰の実を動かすと、その後ろからマスカットのようなグリーンの実が表れる。

また、グリーンの実の代わりにMr.shapeの顔が隠れていたりする。このように、アプリ立ち上げからカードを選択し、実際にカードで遊ぶまで、子どもが強い興味を保ったまま、楽しめる仕組みになっている。

地方に拠点を置く企業が海外から発注を受けられるのも、自分たちの考える『演出的な感覚』を信じ、「オモシロイモノ」を実現し続けてきた結果だという。

今後も九州福岡市から世界に向けて「オモシロイモノ」を発信し続けるKOO-KIに注目だ。

取材・文/佐藤健太(編集部)




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