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欲求とリスクを知って壁を越えろ~やまもといちろう×楠正憲「ネット業界“ソーシャルの次”を本気で考える」(後編)

タグ : SNS, やまもといちろう, ソーシャル, 楠正憲, 業界有名人 公開

 

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サービスが「作り手の手元から飛び立つ幸運」の後に問われる能力

やまもと ちゃんとインターネットの特徴やお客さんのニーズにフィットしているのであれば、別にFacebookにはなれなくても、一定の規模のビジネスをインターネット上で実現できるんじゃないの? と思うんですよ。

 そうですね、Facebookだって最初は現実世界の在校生名簿の置き換えでしたけど、コミュニケーションプラットフォームとして多くのユーザーを獲得して、「さあ次は何やろう」って時には、もはや(Facebookという名の)飛行機の車輪は現実世界という滑走路から離れていて。あらゆる機能を取り込みながら、自分で操縦桿を握って飛んでいったわけです。

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From Guillaume Paumier
ザッカーバーグ氏はFacebookを開発した当初に「今の姿」を想定していたか? と考えると…

やまもと 文字通り、サービスが作り手の手元から飛び立ったわけですか。

 その時にこそ、作り手たちには全然違う能力が問われるようになるというか。今世の中にあるものをシステムに置き換える能力ではなく、そもそも人はネットを使って何をしたいんだとか、人間の欲求中心に再設計できる能力の方が大事になる。

やまもと それまでの作り方とは、別の壁を越えなければならない?

 そういう瞬間があるんだと思います。ソーシャルWebの現状を考えれば、これから作り手たちに必要となる能力はまさにこういう類のものだと思います。

―― 今お2人が話した「欲求中心にサービスを再設計できる能力」の正体とは何なのでしょう?

やまもと 質問の答えになるか分かりませんが、今の楠さんの話を聞いて、思い出したことがあります。実は僕にも楠さんと似たような失敗経験がありまして。

『ニコ生』の誕生~発展に学ぶ、“欲求ドリブン開発”をうまくやるカギ

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楠氏の体験談と同じく、過去携わったサービス開発での苦い経験を明かすやまもと氏

やまもと 以前、吉本興業と東京電力の合弁会社が展開していた『casTY(キャスティ)』という無料動画ポータルのサービス企画にかかわっていたことがあるんですが、今にして思えば、あの時僕らは『ニコ生』をやりそびれたんですよ。

 と言いますと?

やまもと ユーザー自身が自宅からネット放送できるような仕組みを考えていたんですけど、東京電力の担当者が「やまもとさん、家の背景が映り込んでもし自宅が特定されるようなことになると、防犯上大丈夫なんですか?」と。そんな少しズレた議論ばかり重ねた結果、僕らはキャズムの敷居を越えることができずに終わってしまったんです。

―― そうなんですか。

やまもと 要するに大規模ビデオチャットだったんですが、その時はテレビ電話のASPサービスというような事業領域で考えていた。でも、ドワンゴさんはコンテンツドリブンで、最初はYouTubeを使った弾丸コメントのアドオンサイトとしてスタートして、まずユーザーの目線に立って成功を果たした。

 なるほど。

やまもと 『ニコ生』は、当時の僕らができなかったことをやり切ったことになる。

 日本の場合、リスクを認識してしまったらあきらめるか、もみ消してなかったことにするかのどちらかになりがちですからね。

やまもと そう。でも、「ネット社会の考え方が変わったから」という外的要因はさておき、あえて今「たら・れば」で『casTY』での一件を考えれば、作り手側に

①直面するだろう問題への理解
②リスクテイクする意思
③そしてフィードバック後すぐに改善していく現場感覚

があったら、当時はムリだと言われたサービスを作れたんですよ。

 「リスクをつぶす」でも、「リスクを取らない」でもない。いわば、リスクを理解した上でどうベネフィットを出していくか、という開発の進め方ですね。

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のちのちスケールするかもしれないサービス開発の肝は、想定リスクとの付き合い方にあるとの意見で2人は一致

やまもと ソーシャルWebの世界でも、これからのネットサービスを作っていく人たちに必要なのって、そういうマインドなんじゃないかと思います。

―― なるほど。

やまもと エンジニアであれば、自分の持てる技術でそのリスクを許容できるか、突破できるかってことに対して敏感であるべきというか。そこからしかホントのイノベーションって生まれない。

 やまもとさんの考えに乗ると、会社とかチームレベルでも、直面するであろうリスクに対処できる構成にしておくのが大切になるでしょうね。壁を壊すには、専門分野に長けているだけでなく、ネット業界の歴史を知ることもそうだし、倫理面で業界は今どういうパワーポリティックスで動いているかってことが把握できていないといけない。それらに精通するプロフェッショナルが現場感覚のあるエンジニアと手を組むことで、チームとしてユーザーに“壁の向こう”を見せることができるかもしれない。

―― そういったリスクテイカーは、今後日本のネット業界にも現れると思われますか?

やまもと どうでしょうね。そもそも、リスクを知った上でリスクを取れる事業家って、総じてマッドな人ばかりですから。日本で言えば楠さんの勤め先のグループを創った人とか……。

 えーっと、その話題はやめませんか(苦笑)。

―― このたびは長時間にわたりお話しいただきありがとうございました!

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴




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