キャリア Vol.286

サイバーエージェント新人王の転職理由~顧客の死に学んだ「お金よりも大切なこと」

転職する理由は人それぞれだ。

会社の人間関係に嫌気が差して辞める者。仕事が辛くて逃げ出す者。よりよい待遇に惹かれる者。その手腕に期待されて引き抜かれる者……。

現在、ポート株式会社で地方創生支援室の責任者を務める村井慎二氏の転職理由は、それらのどれにも当てはまらない。

かつて、サイバーエージェントで新人王を獲得し、入社2年目でマネジャーに昇進するなど、順風満帆な営業マン人生を歩んでいた村井氏。そんな彼を転職に導いたのは、“恩人”と仰ぐある顧客が残した言葉だった。

ポート株式会社 地方創生支援室 責任者 村井慎二氏

ポート株式会社
地方創生支援室 責任者
村井慎二氏

1991年、京都府生まれ。高校生からはじめたボクシングで頭角を現し、大学時はプロボクサーとして活躍。2013年3月にサイバーエージェントに内定者アルバイトとして入社、14年4月からは正社員に。入社1年目で新人王を獲得し、2年目でマネジャーに昇格する。16年3月に同社を退職し、同4月から現職

タイピングすらできなかった内定者時代、入社直後のミスでデスクワークからスタート

その恩人との出会いは村井氏が内定者アルバイトの時だった。

「それまで寝食を忘れるくらいボクシングに没頭していたこともあって、アルバイト入社直後の僕は、いま思えば自分でも笑ってしまうくらいITに関する知識がありませんでした。タイピングは人差し指だけを使っていましたし、メールも送るまでに30分くらいかかりました」

そんな村井氏は入社直後に大きなミスを犯し、クライアントに迷惑をかけてしまう。

「営業配属の予定で入社したんですが、最初は全然仕事ができなくて、Web広告のレポートを作成したり、営業アシスタントなど、バックヤード部門をまずは経験しました」

大阪支社での半年間のバックヤード勤務を経て、福岡支社に転勤になった村井氏。そこで営業デビューを果たす。

「在籍しているのは福岡支社なのですが、顧客が東京に多かったため、週の半分は東京にいましたね。当時のサイバーエージェントの文化もあったのですが、先輩に同行させてもらう期間もほとんど無く、いきなり独り立ち。昼は営業、夜は資料作りとがむしゃらに働きました。オフィスに寝て、家にはシャワーを浴びにだけ帰る毎日でしたね。ただ、まだまだ営業マンとしてはポンコツで。そんな時出会ったのが、東京で通販事業を展開していた白土社長でした」

恩人が教えてくれた「お金を稼ぐ」以外の自分の価値

この“ポンコツ営業マン”を“使える営業マン”にしてくれたのは白土氏だったと村井氏は回顧する。

ポート株式会社 村井慎二氏

「お客さまに『了解です』と言うなど、敬語も不完全だった僕を厳しく叱ってくれたのは白土社長でした」

そんな未熟な村井氏に、白土氏は自社のWebプロモーションの機会を与える。

「収益を上げる、という企業のゴールに向かって、僕は全力で思いつく限りの策を提案し、白土社長はそれを全力で受け止めてくれました。彼と二人三脚、本気でビジネス拡大に取り組んでいくことで、顧客の収益を上げるためには何をしたらいいのか、次に予測される新しい課題は何か、社内システムの組み方や商品コンセプトの考え方など、気付いたら組織経営をそこで学んでいました」

福岡での半年間の勤務を経て、新卒として正式にサイバーエージェントに入社。すでに営業スキルを身に付けていた村井氏は順調に成績を伸ばす。彼はそれまでの新人記録を塗り替え、新人賞に輝き、それと同時にチーフに昇格。さらにその1年後にはマネジャーに昇格と、とんとん拍子で出世街道をひた走った。

経営者の近くでビジネスを体験してきた村井氏。1年目からお金を稼ぐことに興味が湧いた。

「株や不動産など投資を中心にいくつか事業を始めました。サイバーエージェント2年目にはその収益が給与の数倍にまで増えました。この頃は、お金を稼ぐ、ということに夢中になっていたんです」

勢いに乗る村井氏のもとに、悪い知らせは突然飛び込んできた。
白土氏が、亡くなった。

「亡くなったという知らせを聞いたとき、彼が口癖のように言っていた言葉を思い出したんです」

“村井くん、人生は一度きりだから後悔しない生き方しなよ――”

28歳という若さで亡くなった恩人の言葉は、「生きていることが普通」だった村井氏のテンプルを、見えない角度からのフックのように打ち抜いた。

「お金稼ぎに夢中になっていた時期でしたが、『このままでいいのだろうか』と考えるようになったんです。僕もいつか死ぬ。このままWeb広告の営業マンを続けていって、死ぬ時に後悔しないだろうか。何か大きな価値を残せるのだろうか。白土社長の死をきっかけにそれまで考えたこともなかった危機感が僕を襲ったんです」

自分の生きる理由を探すように自問自答する村井氏。彼が辿りついたその答えは「社会貢献」だった。

「投資を通じて、政治や経済に関心を持つようになっていたんです。どうせ死ぬなら社会的課題を解決して、『価値』を残して死にたいと、これが僕の生きる理由だと思ったんです」

自分の存在価値は、遠隔診療・地方創生での社会貢献

誰かのためになること、の答えを遠隔診療や地方創生に求めた村井氏。起業への準備を進めていたところに、同じビジョンを持っていたポートのCEO、春日博文氏と出会う。

現在、村井氏は同社で、遠隔診療と地方創生の事業を牽引している。

「これからの日本は、社会の問題を解決するのに、政府主導ではなく、まずテクノロジーによる問題解決という選択肢が示される世の中になると思います。インターネットの普及により、もう情報格差はなくなりました。いわば、知識レベルはインターネットさえあれば、世界中で同質化されているんです。あとはどう知識を知恵に変えて、実行に移せるかだと思っていて。だからこそ、僕たちのような若い世代が、もっとテクノロジーの力を使って、社会課題を解決できるような事業を生み出していくべきだと思っています」

ポート株式会社 地方創生支援室 責任者 村井慎二氏

「人それぞれ生きる目的は違う。僕は自分の感情に素直になって、やりたいことは後悔しないようにやろうと決めたんです。白土さんから学んだものは今も僕の中に生き続けていますよ」

“村井くん、人生は一度きりだから後悔しない生き方しなよ――”

転職する理由は人それぞれだ。
死ぬ時に後悔したくない、それもまた理由のひとつ。

村井氏はおそらく、転職という選択をしたことを後悔しないだろう。「社会貢献することが僕の存在価値だから」。まっすぐに筆者を見てそう語る村井氏の目には、強い信念を感じさせるような深く鈍い光が宿っていた。

>>転職するべき?しないべき?「転職力診断テスト」を受けてみる
>>なりたい自分を目指す!大手人気企業の求人

取材・文/佐藤健太 撮影/大室倫子(ともに編集部)

この記事が気に入ったらいいね!しよう

20's typeの最新情報をお届けします

JOB BOARD編集部おすすめ求人

RELATED POSTS関連記事

この記事に関連する求人・キャリア特集

株式会社エイネス ビジネスパーソンとしての成長を求めるあなたに、2020年代を牽引する企業とは
記事検索

記事ランキング

「“無駄な業務”を切り捨てる20代を、誰も助けようとは思わない」産業医・大室正志流“断る/断らない仕事”のボーダーライン

「“無駄な業務”を切り捨てる20代を、誰も助けようとは思わな...

25歳の平均貯金額【最低でも50万円】って何で若いうちからこんなに貯金しなくちゃいけないの?

25歳の平均貯金額【最低でも50万円】って何で若いうちからこ...

【麻美ゆま・TENGA・宋美玄】20代男子がやりがち? 誤解ばかりの「女はこうすれば喜ぶ」テクニックは即やめよ!

【麻美ゆま・TENGA・宋美玄】20代男子がやりがち? 誤解...

転職で年収17倍!「能力ではなく可能性を信じる」26歳アメフト元日本代表営業マン、芦名佑介の仕事哲学

転職で年収17倍!「能力ではなく可能性を信じる」26歳アメフ...

2億円の初期投資も「不安はなかった」暗闇ボクシング『b-monster』を21歳で創業した女性が信じた“直感”

2億円の初期投資も「不安はなかった」暗闇ボクシング『b-mo...

TAGS

営業求人を探す