キャリア Vol.957

逃げまくるWeb漫画家・やしろあずきに、“逃げる”と“頑張る”のボーダーラインを聞いてみた

家族や友人、自身のことをネタにし、バズる漫画を連発するWeb漫画家・やしろあずきさん。

彼のことを、「三角コーンの人(※)」として、認識している20’sも多いのでは?(※やしろさんと三角コーンの関係性の詳細はこちら

やしろさんは、大学卒業後、ゲーム会社に入社してプランナーとなったが、半年で退職。その後、大手ゲーム会社のセガに転職したものの、“会社員の働き方”が劇的に肌に合わず、Web漫画家としてフリーランスに。現在はWeb漫画家として活動する傍ら、株式会社グランツアセットの執行役員として企業役員の顔も持つ。

そんなやしろさんが、今月自身の経験をもとにした自著、『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社)を出版。今までの人生を振り返り「逃げまくってきました」と笑って話す。

とはいえ、仕事や嫌なことから逃げたいと思ったとき、“逃げるコマンド”を即選んでもいいものだろうか? “逃げるコマンド”と“頑張るコマンド”のボーダーラインはどこにあるのだろう。直接本人に聞いてみた。

やしろあずき
Web漫画家・ライター やしろあずきさん(@yashi09
Web漫画家、livedoor公式ブロガーとして月間2000万PVの漫画ブログを運営。母親に「人に迷惑をかけなければ大概のことはOK」と育てられたため、極めて自由な大人になる。就活に嫌気が差してきた頃、たまたま応募したゲーム企画コンテストでベストアマ賞を受賞。それによりゲームプランナーとなるが半年で退社。その後、大手ゲーム会社に転職するが自分の意思に関係なく働かねばならない会社員の働き方が劇的に合わず、仕事の傍ら趣味で続けていたインターネットへの漫画投稿の収益が本業の給料を抜いたことで手応えを感じ、フリーランスになる。15年Twitterに投稿した「スタバで見た小学生達の話」がこの年最もリツイートされた日本語アカウントランキング第4位にランクイン。一躍有名になる。以降、さまざまな連載、企業漫画を執筆しつつ、2018年に株式会社グランツアセット執行役員就任。19年漫画事業・工業用品レンタル事業を法人化し、代表取締役となった。2020年12月に『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』(ダイヤモンド社刊)を出版

「何でも逃げろ」と言いたいわけじゃない

――今回の著書では、“逃げるコマンド”が軸になっていますよね。これって、そもそもどういうものでしょうか?

日本には「一度勤めたら3年は働かないといけない」「逃げたらいけない」という考え方が根付いていますよね。だけど、本当に酷い職場で、「逃げないとこっちが死ぬ」みたいなケースもある。そういう場合は、全てを捨てて逃げるという方法もありだと思うんですよ。

もちろん、逃げることを推奨しているわけじゃありません。“逃げるコマンド”は、あくまで選択肢の一つ。

すぐに逃げて会社を辞めるんじゃなくて、「もしも逃げるという選択肢があったらどうなるのか」という視点で、自分の状況を俯瞰して考えてみてほしいんです。

やしろあずき

――実際に、やしろさんはこれまでの人生でどんなことから逃げてきたんですか?

例えば、高校1年生の時、美術クラブを辞めたんですが、その理由は「ゲームがしたかったから」でした。当時はネットゲームにハマっていて、そこで20代、30代の大人の人たちに出会い、いろんな人と友達になることの方が楽しいと感じたんです。

知らない世界の話や、社会人というものが何をしているのかを聞けたおかげで、人生を達観できたというか、ビジネス的な考え方ができるようになりましたね。

今でも彼らとはやりとりを続けていて、仕事をもらったりすることもありますよ。

――逃げた先での経験が、ちゃんと今につながっているんですね。社会人になってから“逃げるコマンド”を使われたのは、どんな時でしたか?

僕は新卒でゲーム会社に入社しましたが、新人に掃除をやらせる文化がすごく嫌だったんですよ。ゲームプランナーとして入社したはずなのに、電話番ばかりさせられる。「このまま終わりたくはない、時間が無駄だ!」と思い、半年で辞めました。

でも、辞めるか辞めないかは、かなり考えましたよ。自分の企画力に自信があったことと、ゲーム会社に知人が多かったことで、「転職先はどうにかなるだろう」という確信を持って、最終的には辞める決断をしましたけど。

――やしろさんは、最初の会社から逃げた後にゲーム業界大手のセガに入社されたんですよね。セガはどうでした?

すごく良い会社でしたね。ただ、僕は朝起きれなくて(笑)。朝起きて会社に行くという働き方が自分には無理なんだと思いました。

漫画を本格的に描き始めたのはこの頃からです。実は、学生時代から、「将来的には会社を辞めて、自分の得意なことを仕事にしたい」という気持ちがあったので、漫画の収入が会社員の収入を抜いたらフリーランスになるつもりでいましたし、結果としてそうなりました。

やしろあずき

「逃げる」と「頑張る」のボーダーラインって?

――積極的に“逃げるコマンド”を使ってきたやしろさんは、“頑張るコマンド”を使ったことはあるんでしょうか?

周りの漫画描きの人たちからは、「仕事が忙しい時でも漫画を描き続けていたこと自体が“努力”だ」と言われましたね。僕としては努力している意識はなく、嫌な仕事から逃げてただけなんですが。

でも、漫画描きの人からすれば、仕事を続けながら徹夜で漫画を描いてること自体がすごい努力なんだと。

僕はこれまで自分なりの目的は持ちつつ、いろんなものを経験しては嫌なことから逃げてきました。ある種、消去法の人生で、いろんなことに手は出すけれど、違うと思ったらすぐに見切りをつけてきた。

そうやって最後に「あれ? 楽しいから逃げなくてもいいな。これは続けていけるな」と思えたものが漫画だったんです。やりたくないことから逃げたから、やりたいことが見つかったという意味では、“逃げるコマンド”の先に“頑張るコマンド”があるんだと思いました。

――ということは、“逃げる”と“頑張る”のボーダーラインはない?

そうですね。次にどうするかをちゃんと考えて“逃げるコマンド”を使って、最終的にたどり着いている状態が“頑張るコマンド”なのかもしれません。

自分のやりたいことに没頭して頑張っているときって、「頑張っている」実感ってないと思うんですよ。頑張っている状態が普通というか。

自分の好きなこと・やりたいことの中では、“逃げるコマンド”は出てこないんじゃないかな。

――なるほど。では、“逃げるコマンド”を使うべきタイミングって、どう見極めればいいんでしょう?

うーん、人それぞれですよね。人には得意・不得意もあれば、向き・不向きもある。

職場環境や人間関係もそれぞれ違いますから、そこは自分で考えて決めればいいと思っています。大事なのは、“自分の心”に従うことですかね。

僕自身、人から押し付けられることが嫌いなので、「自分の考え方が正しい」とも思わないし、「この通りにやっておけばOK」とか、「会社員は古いからこれからの時代はフリーランスだ」とか、そういうことを言うつもりは全くないんですよ。

やしろあずき

――では、やしろさんのように“逃げるコマンド”を使って、やりたいことにたどり着くためにはどうすればいいと思いますか?

「逃げて何もしない」じゃなくて、逃げた先で何かをやってほしいですね。やってみたいことをどんどんやっていく中で、自分に合うもの、合わないものが分かるし、諦めずにやり続ければ、やりたいことを仕事にできるチャンスに気付けると思います。

やりたいことを実現するためのチャンスは誰にでも回ってくるもの。そこでチャンスをつかむ人は、常に「これがやりたい。絶対にやってやるぞ」という意識を持っていて、無意識のうちにアンテナを張っています。

だからこそ、チャンスに気付くこともできるし、手を伸ばすことができる。引き寄せという言葉がありますが、それって本人がチャンスに気付けるか気付けないかというだけのこと。運の良し悪しは関係ないんだと思います。

――「やってみたいことがない」と悩んでしまう人もいますが、この場合はどうすれば?

誰にでも、「やっていて楽しいこと」ってあると思うんです。今までの人生を振り返ってみれば、「楽しい」と感じた経験は絶対にあるはず。

何もやりたいことがないなら、過去の楽しかった経験から探してもいいですし、親や友達に聞いてもいい。それで気になったことに手を出しまくってみるといいんじゃないかな。

日本は不況だと言うけれど、まだ豊かな方であり、社会保障もあるし、お金がなくても体験できることがたくさんありますよ。それに、今の時代はネットもあるんで、何でも仕事にしやすい環境があると思いますね。

やしろあずき

ゲームと同じで“逃げる”は最終手段であるべき

――“逃げるコマンド”を使う際の注意点はありますか?

「何となく」を理由に逃げるのは良くないと思いますね。逃げた先でどうするのか、自分なりに目的を持っていることが大事です。

ふんわりした目的でもいいから「自分はこうなりたい」がないと、うまくいかない

逃げるなら逃げるで、ちゃんと自分の気持ちやその先のことを考えた上で選択してほしいし、もしそれがないなら、“なりたい姿”を見つけるために現状から逃げるという選択でもいいと思います。

――“逃げるコマンド”を正しく使わず、ただ逃げ続けていたらどんな弊害があると思いますか?

“逃げ癖”が付きますね。ゲームの“逃げるコマンド”は選択肢の最後に配置されていますけど、“逃げる”が“戦う”より前に出てくるようになってしまう。

戦うことなく、“逃げる”を連発するようになれば、自分に向いているか向いていないかを考えることもできず、どこにもたどり着けなくなります。

「やったことのない仕事や責任を任されることが嫌で、何となく逃げたい」という人もいますが、逃げた先に目的がないなら、とりあえず目の前のことをやってみて、その結果として分かることもあると思います。

やってみて向いていたら、そのまま進めばいいし、「やっぱダメだ」となったら“逃げるコマンド”を使って、また違うことを始めてみたらいいんじゃないかな。とにかく、動かないままでいるのが、一番時間がもったいないですよね。

――一方で、“頑張るコマンド”ばかり使ってしまう人もいますよね。

いますね。つらい、嫌だと思っても、責任感があり過ぎて逃げることすら思いつかない人。

ただ、“頑張るコマンド”ばかりでは、最終的に潰れてしまいます

この世界では、悲しいことに真面目な人ほど損をするんですよね。逃げることは悪じゃないし、辞めても死ぬわけじゃない。逃げた先にも、他の世界が広がっていると知ってもらえたらいいなと思います。

精神的に追い詰められると、物事を俯瞰で見れなくなるから、そうなる前に“逃げるコマンド”という選択肢を検討してほしいですね。

やしろあずき

――でも、世間の目が気になって、逃げることを敗北だと思ってしまう人もいますよね。

そこについては、自分の心が納得できているかどうかが大事ですよね。納得できていないから病んだり、時間を無駄にしてしまうんじゃないかな。

僕は、目の前の状況を俯瞰で見て、「絶対にやらなくていいだろ、これ」とか、「どうしても精神的にやりたくない」という自分の心の声に従ってきました。

要するに、世間がどう思おうと、自分が負けだと思っていなければいいんですよね。世間の目や価値基準を気にしてばかりいたら、自分が自分じゃなくなっちゃいますよ。

「自分の人生は一回きり」だということを念頭に置いた方がいいと思います。死んだら終わり。どんだけ頑張っても、苦労しても、耐えても、死んだら終わりです。

それに、人間いつ死ぬかも分からない。多少の迷惑を掛けることがあっても、ある程度は自己中でいいと僕は思っています。

自分の心と向き合って出した結論なら、それがその人にとっての正解。“逃げる”の先の“頑張る”を見つけるためには、自己中な生き方も大事なんだと思います。

取材・文/上野真理子 撮影/赤松洋太 編集/川松敬規(編集部)

information
書籍『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』好評発売中!
書籍『人生から「逃げる」コマンドを封印している人へ』好評発売中!

・Twitterフォロワー「50万人超」!
・ブログ「月間2000万PV」を突破!
・話題のWeb漫画家が「自分ファースト」で生きるコツを伝授!

頑張ることは才能です。でも、心がボロボロになったり、なにも考えられないくらい追いつめられてはいないでしょうか? この本は、すべてのことから「逃げろ!」というものではありません。 「いろんな選択肢を持ち、それを自分で判断して使えるように」そのお手伝いをする1冊です。
>>詳しくはこちら
この記事が気に入ったらいいね!しよう

20's typeの最新情報をお届けします

RECOMMENDED POSTSあなたにオススメ

RELATED POSTSあわせて読みたい

JOB FEATURE編集部おすすめ求人特集

記事検索

サイトマップ

記事ランキング

25歳の平均貯金額【最低でも50万円】って何で若いうちからこんなに貯金しなくちゃいけないの?/

25歳の平均貯金額【最低でも50万円】って何で若いうちからこ...

高木琢也が“日本一予約が取れない美容師”になるまで「不器用だし、カットがうまいわけでもなかった」/

高木琢也が“日本一予約が取れない美容師”になるまで「不器用だ...

27歳、SHOWROOM最年少部長が直面したコロナ禍の“エンタメ危機”。新規事業『smash.』立ち上げで乗り越えた壁/

27歳、SHOWROOM最年少部長が直面したコロナ禍の“エン...

【戦慄かなの】“少年院上がり”の異色アイドルが人生を投げ出さなかった理由/

【戦慄かなの】“少年院上がり”の異色アイドルが人生を投げ出さ...

自由すぎるゲイバー店員・カマたくの“This is me”な生き方「人生なんて全部後付け。テキトーに今を生きる方が幸せよ」/

自由すぎるゲイバー店員・カマたくの“This is me”な...

営業求人を探す