実は“お得”な成長フィールド「金融SEへの転職」が正解なワケ
IT技術者の中でも、特に高度な技術力と業務遂行能力があることで定評ある金融SE。しかしなぜ、金融業界でIT技術者として働くことが、人材としての価値を大きく高めることになるのだろうか。識者と現場技術者の声からその理由を検証するとともに、これから金融IT業界への転職を考える技術者の活躍できるフィールドを探る。 【Word/MASARU YOSHIHARA(E-type) Photo/TETSUJI OSHIMA】2008年5月号より
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マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン
小塚裕史 氏
Hiroshi Kozuka
アソシエイト プリンシパル
小塚裕史 氏
Hiroshi Kozuka
アソシエイト プリンシパル
マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン
横浜信一 氏
Shinichi Yokohama
プリンシパル
横浜信一 氏
Shinichi Yokohama
プリンシパル
図1:金融機関の経営3本柱
図2:金融業界のシステム開発トレンドと
関連するスキル・知識
図3:SEに期待される役割とスキル
「金融は、『IT=経営』の図式が成立する稀有な業界です」と語るのは、戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーのプリンシパルで、日本支社ビジネステクノロジーグループ(BTO)のリーダーを務める横浜信一氏。確かに、小売業や流通業などでは人やモノが動いて初めて業務が成立する。ITはそれを円滑に実現するための「サポート役」と見られている。しかし金融は、カネという数字のやりとりこそがビジネス。いわば情報処理そのものが業務遂行、さらには経営と不可分な業界なのだ。
「金融SEになるということは、金融機関の経営の一部に携わることも意味します。金融の社会的影響力を考えると、金融SEとして高い能力を獲得すれば、世の中にも影響を与え得るということになるでしょうね」
特に、上流工程を担当するとなれば、システムのグランドデザインを描くこともある。それは業務の全体像をデザインすることであり、金融としての事業戦略を描くといっても過言ではない。金融SEの果たすべき責任は大きい。
「現在、金融機関の経営において、事業戦略、オペレーション戦略、IT戦略という3本の柱が限りなく1つに融合しつつあります(図1)」とは、同じく日本支社BTOリーダーの小塚裕史氏。業務のIT化が進み、従来ならCEO、COO、CIOそれぞれが担っていた意思決定の境界線がなくなってきたということだ。
「加えて金融業界は今後、ますますIT化が進み総知産業(=携わるすべての人の知が結晶して機能する産業)を指向する時代に来ています。たとえ小さなプログラムひとつであっても、それがシステム全体に及ぼす影響は決して小さくはありません」(小塚氏)
金融SEとは、金融機関全体を、ひいては世の中全体を自分が主役となって動かす仕事だといえそうだ。組織の一員として業務をこなすのではなく、一人一人が「金融とは何か?」を常に考える。そうした姿勢で仕事に臨めば、担当する業務のみに目を向けて仕事をする場合に比べて、得られる手応えややりがいが大きいのは言うまでもない。
「金融業界全体を見ると、ここ数年で成長領域へのIT投資が増加し始めたように感じます」(小塚氏)
システムを「守り」と「攻め」に分類すると、金融業界ではその両方で新しいシステム開発案件が続々と進行している(図2)。金融自体の業務経験や業界知識がなくとも、これまでに培った技術力を活かせる案件は確実に存在するはずだ。
「金融に限ったことではありませんが、SEはITの専門家としての強みを確立していく必要に迫られるでしょうね。その点で金融業界は、各々の専門性を確立するための格好の“成長の場”となるのは間違いないでしょう」(横浜氏)
金融を手掛けるSIerに転職する場合、銀行や証券など、金融の現場で働くプロたちと肩を並べてプロジェクトを推進する機会は多い。複雑で難解な金融業務の知識も、実践を通じて習得していける。また、大規模なSIerであれば扱う案件の幅も広い。自分の志向に沿ったスキルをとことん究め、ITの専門家として成長するための土壌が整備されているのだ。
「SEに期待される役割とスキルは、大きく4つに分けられます(図3)。金融SEの場合、他業種のSEに比べて業務内容の専門性が高いため、これらすべてがスキルセットとして要求されます。その上で、特に“強み化”したいスキルに磨きをかけて専門性を高めていけば、ゆくゆくは金融という枠を超えて、どの業界でも通用する技術者になれると思います」(横浜氏)
「金融SEになるということは、金融機関の経営の一部に携わることも意味します。金融の社会的影響力を考えると、金融SEとして高い能力を獲得すれば、世の中にも影響を与え得るということになるでしょうね」
特に、上流工程を担当するとなれば、システムのグランドデザインを描くこともある。それは業務の全体像をデザインすることであり、金融としての事業戦略を描くといっても過言ではない。金融SEの果たすべき責任は大きい。
「現在、金融機関の経営において、事業戦略、オペレーション戦略、IT戦略という3本の柱が限りなく1つに融合しつつあります(図1)」とは、同じく日本支社BTOリーダーの小塚裕史氏。業務のIT化が進み、従来ならCEO、COO、CIOそれぞれが担っていた意思決定の境界線がなくなってきたということだ。
「加えて金融業界は今後、ますますIT化が進み総知産業(=携わるすべての人の知が結晶して機能する産業)を指向する時代に来ています。たとえ小さなプログラムひとつであっても、それがシステム全体に及ぼす影響は決して小さくはありません」(小塚氏)
金融SEとは、金融機関全体を、ひいては世の中全体を自分が主役となって動かす仕事だといえそうだ。組織の一員として業務をこなすのではなく、一人一人が「金融とは何か?」を常に考える。そうした姿勢で仕事に臨めば、担当する業務のみに目を向けて仕事をする場合に比べて、得られる手応えややりがいが大きいのは言うまでもない。
金融SEへの転身は今がチャンス!?
では、今から金融SEへ転身するという選択は、果たして賢いといえるのか。「金融業界全体を見ると、ここ数年で成長領域へのIT投資が増加し始めたように感じます」(小塚氏)
システムを「守り」と「攻め」に分類すると、金融業界ではその両方で新しいシステム開発案件が続々と進行している(図2)。金融自体の業務経験や業界知識がなくとも、これまでに培った技術力を活かせる案件は確実に存在するはずだ。
「金融に限ったことではありませんが、SEはITの専門家としての強みを確立していく必要に迫られるでしょうね。その点で金融業界は、各々の専門性を確立するための格好の“成長の場”となるのは間違いないでしょう」(横浜氏)
金融を手掛けるSIerに転職する場合、銀行や証券など、金融の現場で働くプロたちと肩を並べてプロジェクトを推進する機会は多い。複雑で難解な金融業務の知識も、実践を通じて習得していける。また、大規模なSIerであれば扱う案件の幅も広い。自分の志向に沿ったスキルをとことん究め、ITの専門家として成長するための土壌が整備されているのだ。
「SEに期待される役割とスキルは、大きく4つに分けられます(図3)。金融SEの場合、他業種のSEに比べて業務内容の専門性が高いため、これらすべてがスキルセットとして要求されます。その上で、特に“強み化”したいスキルに磨きをかけて専門性を高めていけば、ゆくゆくは金融という枠を超えて、どの業界でも通用する技術者になれると思います」(横浜氏)
「金融SEへの転職」が正解なワケを語る