Vol.377

AI時代も営業って必要? 元マイクロソフト代表・成毛眞が考える10年後“生き残る”営業マンの条件

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この先、営業職ってどうなっちゃうの?
未来の「営業不要論」は本当か
あと10年で、人間が行う仕事の約半分はAIやロボットに奪われる—ーそんな衝撃的な予測が話題となっている。では、このままテクノロジーが進展すれば、営業職は必要なくなってしまうのだろうか? そんな時代に、生き残っていける営業マン像とは? 各界の識者たちにその答えを聞いた。

人間の職業が、AIやロボットに代替される時代。元マイクロソフト日本法人代表の成毛眞氏の最新著『AI時代の人生戦略』も、そうした未来に備えて「STEAM」(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、マスマティックスの頭文字)の知識を身に付ける必要性を説いた1冊だ。

しかし成毛氏は、「AI時代においても営業マンの仕事はなくならないだろう」と語った。なぜそう言えるのか。そしてその時代にも価値ある営業マンでいるためには。成毛氏に話を聞いた。

成毛眞 氏
成毛眞 氏
1955年北海道生まれ。中央大学商学部卒業後、自動車部品メーカー、アスキーなどを経て、86年日本マイクロソフト設立と同時に参画。91年同社代表取締役社長就任。2000年退社後、投資コンサルティング会社インスパイア設立。10年おすすめ本を紹介する書評サイト『HONZ』を開設、代表を務める。早稲田大学ビジネススクール客員教授

9割の営業職はなくならないと語る2つの理由

成毛氏は「扱う商品や取引先にもよるので一概には言えないが、BtoBの営業職の9割は、AI化されてなくなるということはないのではないか」と話す。そう言える理由は大きく分けて2つあるという。

第1の理由は、「仕事の性質上、ビッグデータ解析によって価値を出すのに十分なデータが集まらないから」だ。

「値引きなどの取引や、開発中の製品に関する話など、営業現場では常に臨機応変な対応が求められます。そうした情報はその性質上、ネット上に公開することができませんよね。AI化することの目的の一つは、大量のデータをビッグデータとして解析することで新たな価値を生み出すことにあるので、情報量が足りないこうした職種ではAI化するメリットがないのです」

世の中に営業と呼ばれる職種に就いている人は確かに多いが、扱う製品や取引先が違えば、そこで交わされる情報を一緒くたにはできない。そのため、AI化の恩恵を享受することが難しいのだと成毛氏は言う。

営業職がなくならないと言える第2の理由は、情報の非対称性(売り手のみが専門知識と情報を持ち、買い手はそれを知らないというように、双方で情報と知識の共有ができていない状態のこと)に関するものだ。

「BtoCであっても、例えばハウスメーカーなど情報の非対称性のある分野は、仮に価値ある情報が開示されていたとしても専門的すぎてユーザーが活用できない。だからAI化しても意味がないんです」

インターネットによりさまざまな情報が手に入るようになった今日でも、それを十分に活用して専門的知識まで学ぼうとする人はほんの一握りだろう。多くの人は情報を手に入れられる状況においても取りにいかないものであるため、情報の取捨選択・翻訳をする営業が必要なのだ。

ただし、生き残るにはSTEAMの知識が不可欠だ

しかし、だからといって今のままで問題ないと安心するのはまだ早い。営業マンもまた、STEAMの知識、つまり理系的な専門知識を身につけることは不可欠であると成毛氏は指摘する。

「例えば、卸売営業の人が取引先のスーパーにおいてタブレットでデータを見ながら交渉する、といったことは既に行われています。AI化が進めば、こうした場面で参照するデータの量は膨大になり、より複雑化します。そうなれば、営業マンであっても統計学などの専門的知識を持っていなければやっていけなくなるでしょう。実際に社内で初等数学の研修をやる企業も出始めています」

もちろん、必要な専門知識は扱う商品によって変わる。メーカーの営業であれば、求められるのは製品に関する技術的な知識だ。

「自動車の営業マンは昔であれば『新しい車です』でよかったところ、EVだ自動運転だと次々に技術革新が起きれば、それらを全て説明できる必要性が出てきます。しかも、そうした専門的知識を求められるのは、かつては自動車や飛行機などの一部の業界だけでしたが、今では土木業界でさえそうです。側溝の形状だけで20種類、コンクリート工法だけで200種類ある今では、土建屋だって一種のエンジニアなのです」

企業によっては技術職の中に「セミ技術職」のような人がいて、顧客に対する技術的な説明をそうした人が担っていた時代もあった。だが、開発競争が激化している今日では、どの企業でも技術者は開発・研究に専念しなければならなくなっている。つまり、今後顧客に対して技術的な説明をする役を演じるのは、営業マンであるということだ。

とは言え、日々の業務やノルマに追われながらSTEAMの知識について学ぶのはハードルが高いと感じる人もいるかもしれない。そこで成毛氏が提案するのは、友達をうまく活用する方法だ。

「今まで興味がなかった分野の話は、一人で頑張って勉強しようとしても、結局は身につかずに終わってしまう。それよりも、技術について面白おかしく話す友達を身近に置いて、その会話の輪に加わることです。そうしたことに詳しい友達が身近にいないようであれば、TwitterやFacebookでそういう人をフォローするというのもいいでしょう」

価値ある営業マンは今も昔も「しゃらっとしている」

成毛眞 氏

ほとんどの営業職はAI時代にもなくならない。そう太鼓判を押す成毛氏が考える、普遍的に価値ある営業マンとはどんな人たちなのだろうか。営業マンに必要な能力は「物を売る力でも、人付き合いの良さでも、熱意でもない」と成毛氏は言う。

「体育会系で人当たりが良い熱血漢みたいなのってとっくに終わっていると思いますね。お客さんはビジネスでの成功を求めているんだから、そんなことで商品を買ったりしない。それよりも専門的知識を持っていることの方がずっと価値があると思います。これまでもそうでしたが、これからはよりそうなるでしょう」

成毛氏の知る優秀な営業マンは、揃ってみんな「しゃらっとしている」のだという。「しゃらっと」とは言い換えれば、「のめり込まない」ということだ。

「商品にものめり込んでいないし、接待の席でも無駄に長居せずにスーッと帰れる。STEAMもそうですが、知識でちゃんと武装できている人は、自然としゃらっとするものなんです。開発者はのめり込まないといいものが作れないですが、営業マンは商品にも人間関係にものめり込まない方がいいんだと思います」

こうした「しゃらっとした営業マン」には、その先のキャリアにも可能性があるという。自ら起業してひらく、経営者としての道がそれだ。

「GMO、サイバーエージェント、インテリジェンス……ITベンチャーの経営者で成功しているのは軒並み営業出身者です。私が考えるその理由は、やはりしゃらっとしているから。開発者出身の経営者はプランAにこだわり続けるから、結局それが売れずに失敗することになる。営業出身者はプランAにこだわりすぎることなく、何かのきっかけで着想を得たプランBに移行できるから、成功できるんです」

そして、営業マンがそうした将来を見据えた上でも、STEAMの知識は活きると成毛氏は語った。

世の中全体がサイエンスとエンジニアリングに向かっている今、時代の変化をキャッチアップして自分の専門性を磨いていける人。そして人付き合いや人情に甘えず、自分の頭で考え企画提案できる人こそ、10年後も生き残っていける営業マンの姿なのだろう。

取材・文/鈴木陸夫 撮影/栗原千明(編集部)

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