Vol.474

クラウドワークス吉田浩一郎氏に学ぶ、起業に成功する営業マンの条件「創業メンバーとは信頼関係ゼロからスタートせよ」

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いつかは起業して自分でビジネスをやってみたい。そんな夢を思い描く若手営業マンは少なくないだろう。一方で、営業のスキルが経営にも役立つものなのか、疑問を抱いている人も多いかもしれない。

そこで、営業職出身の起業家であり、日本最大級のクラウドソーシングサービスを提供する株式会社クラウドワークス代表取締役の吉田浩一郎氏に、「起業に成功する営業マンの条件」について聞いた。

株式会社クラウドワークス 代表取締役兼CEO 吉田 浩一郎氏

株式会社クラウドワークス 代表取締役兼CEO 吉田 浩一郎氏

1974年生まれ。大学卒業後、パイオニアに入社し、営業職として活躍。その後、リードエグジビションジャパンを経て、ドリコムの執行役員として東証マザーズ上場を果たした後、2007年に独立。11年、クラウドワークスを設立した

「売上さえ上げればいいだろう」気付けばオフィスに一人ぼっちになっていた

「2度起業した経験から私が言えるのは、ビジネスを成功させるには、チームプレーができる仲間が不可欠だということ。だから弊社の前年度までの行動指針には“チーム・クラウドワークス”を掲げていましたし、仕事の基本方針の1つにも『いいチームをつくろう』というものがあります。私自身、社長としてチームププレーを大切にしたい。営業出身者はどうしても個人プレーに走りがちですが、起業を目指すならその点は修正していく必要があると思います」

起業に成功する条件として、吉田氏が「チームプレー」という答えを真っ先に挙げた理由は、彼のキャリアを知れば納得できる。大学卒業後、電気機器メーカーのパイオニアに就職し、営業として活躍。入社2年目にして関東圏トップの成績を叩き出した後、外資系企業の営業や株式会社ドリコムの執行役員を経て、2007年に1度目の起業を果たす。一見すると順調にステップアップしているように思えるが、実は失敗体験の連続だったという。

「私はドリコムの役員をクビになっているんですよ。理由は『売上さえ上げればいいだろう』と考えて、開発部門の工数を無視して勝手に話を進めたり、管理上の手続きを軽んじたりして、周囲に迷惑を掛けまくったから。その前に勤めていた外資系企業でも、営業事務の女性が『吉田さんの仕事はしたくない』と言って、私の業務をボイコットしたこともあるくらい、当時の私はチームプレーなんて全くできない人間でした」

クラウドワークス吉田氏

それでも、役員としてドリコムをマザーズ上場に導いたことで自信をつけた吉田氏は、満を持して33歳の時に起業に踏み切った。「ずっと営業だったので、製造や開発をやってみたかった」という思いから、アパレル事業や海外事業を次々と立ち上げたものの、売上規模が小さ過ぎたり大量の在庫を抱えたりと、なかなかうまくいかない。そこへ追い打ちをかけるように、吉田氏をどん底へ突き落とす出来事が起こる。

「ナンバー2として会社を支えていた役員が、取引先を全部連れて独立してしまったんです。しかも調べてみたら、半年前から出て行く準備を進めていたことがわかった。裏切られたと思ったし、死ぬほど悔しかったけど、後の祭りです。でも、今思えば『そりゃそうだよな』と。当時私が注力していたベトナムの事業は収益が出なかったので、日本国内の受託やコンサル事業で稼いで、そのお金を海外ビジネスに注ぎ込んでいたんです。出て行った役員は国内事業の担当だったので、自分が頑張って上げた利益を他人にどんどん使われたら、面白くなくて当然です」

国内のクライアントを失い、収益源を断たれたからには、もはやベトナムのビジネスも撤退するしかなかった。海外事業担当の役員も会社を離れ、とうとう吉田氏はオフィスに一人取り残された。「また営業マンに戻って、保険か布団のセールスでもやろうか」。そんなことを考えていた時、会社のインターホンが鳴った。

「過去に取引のあった企業から、お歳暮が届いたんです。その時は本当に孤独で寂しかったので、こんな自分にお礼の品を贈ってもらえたことがものすごく嬉しかった。お歳暮って、感謝の気持ちを伝える象徴的なアイテムですよね。それでこう思ったんです。『人の役に立ち、相手から“ありがとう”と言われることが、働く上で一番大切なのだ』と」

会社のメンバーは「召集された代表チーム」。気が合うよね、ではやっていけない

こうした経験を経て、2度目の起業で挑んだのがクラウドワークスだ。創業からわずか3年でマザーズ上場を果たした後もビジネスは拡大を続け、現在は社員数も120人を超えた。創業メンバーである役員3人は、6年経った今も一人も辞めずに吉田氏と行動を共にしている。前回の起業では“人”で失敗した吉田氏が、今回は信頼できる仲間を順調に増やせたのはなぜだろうか。

「1度目の起業と決定的に違うのは、創業メンバーである役員たちと、『自分たちの信頼関係はゼロである』という前提でスタートしたこと。役員の一人とはTwitterで出会いましたし、共通の知人もいないから、友人という感情は全くありませんでした。前回は、他のメンバーと『俺たち、気が合うよね』という100点満点の状態から始めたので、あとは減点にしかならなかったんですよ。仕事を一緒にやるうちに、『自分とはここが違う』『ここも違う』と感じて、ズレばかりが気になってしまって」

クラウドワークス吉田氏

「私はこれを、よくサッカーの日本代表に例えます。普段セリエAやJリーグで活躍している選手たちがある日突然招集されて、そこに日本代表チームとしての信頼関係があるかといえば、ないですよね。一緒に練習して、皆で試合に勝って、初めて信頼関係が生まれるわけです。会社の起業もそれと同じ。それぞれ異なる前職で活躍してきた人が、集まって始めるのですから。そう考えれば、お互いの考えや意見にズレが出てきても、『もともと信頼関係がないのだから、自分たちが悪いのではない』と考えられる。だったら、あとは改善するためのルールを整備すれば、仲間同士がぶつかり合わずに済みます」

例えばクラウドワークスでは、創業からしばらくは「口頭での業務依頼」と「1対1でのメール・チャット」を禁止していた。口頭でメンバーに仕事を頼むと、あとで「言った、言わない」のトラブルが起こりやすい。だがメールで依頼すれば、確実な記録が残るのでムダな言い争いが発生しない。

「議論する時も、メーリングリスト上で“全員返信”でやっていました。1対1だと感情的な言い合いになりがちですが、他の人も巻き込んで公明正大に話し合えば、全員が納得感を得られる。100人規模になった今はさすがに全員で議論するのは難しくなりましたが、組織が小さいうちは、こうしたルールは有効だと思います」

また1度目の起業では、営業出身者ならではの意外な反省点もあったという。

「優秀な営業マンほど、顧客の気持ちを敏感に察して、100%相手の立場に立って考える人が多いと思います。以前の私も、まさにこのタイプでした。ところが社長になると、これとは真逆のスキルを求められる場面が多い。相手の立場を考える以前に、リーダーとして『自分は何をしたいのか』『この会社は何を目指すのか』という明確な意志を社員たちに伝えなければ、人がついてきてくれることはないからです。つまり、“自分の軸”を持たない人に、社長は務まらない。2度目の起業がうまくいったのは、私がその点を改善したからだと考えています」

「営業力」という強みの先にやりたいことを見つける

では、営業出身者が自分の意志を発信できるようになるには、どうすればよいのか。吉田氏はその問いに、「自分の強みの先に夢を描くこと」と答える。

「私の強みは何かと聞かれれば、やはり“営業力”です。ところが前回の起業は、『営業とは違うことをやってみたい』という思いだけが先走ってしまった。アパレルも輸出入も海外展開も、私は何一つとしてやったことがなかったので、他のメンバーに『ベトナムの事業はいつまでやるんですか』と聞かれても、『今はまだ分からない』というフワッとしたことしか答えられませんでした」

クラウドワークス吉田氏

「それに対し、クラウドワークスでやっていることは、すべて過去の自分のキャリアに基づいている。私が得意な法人営業の領域で、経験のあるインターネットサービスを扱い、営業スキルを生かしたユーザーエクスペリエンス(UX)を差別化要因としている。『どうすればユーザーが使いやすいサイトになるか』『どうすればより多くの人に“会員登録”のボタンを押してもらえるか』などを考える時に、顧客視点で物事を見るのが得意な営業マンの経験が活きるんです。営業力という強みの先にやりたいビジネスを見つけた今は、社員からクラウドワークスの未来や方向性を聞かれた時も、自信を持って堂々と答えられます」

そして、これから起業を目指す若手営業マンには、こんなアドバイスを送る。

「まずは、20代のうちにたくさんの物事をインプットしておくこと。起業に役立ちそうなことなら、IT技術でも金融の知識でも英語でも何でもいい。それと、孤独に慣れておくこと。営業は他人と関わるのが好きで、人と飲みに行ったり遊んだりするのが楽しいタイプが多いと思いますが、社長というのは孤独なもの。たとえ最後は自分一人になっても、身一つでこのビジネスをやり遂げるのだという不退転の覚悟で臨むのが社長という仕事です。だからこそ、一人になって本を読んだり勉強したりするインプットの時間を増やすことが重要になる。いくら仲良しを増やしても、他人があなたの人生を保証してくれるわけではない。自分の人生の責任を取れるのは、自分しかいないんです」

吉田氏のキャリアは、営業出身者ならではの成功体験と失敗体験で溢れている。起業を夢見る若手営業マンにとって、これ以上ない教訓になるはずだ。

取材・文/塚田有香 撮影/桑原美樹

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