会社を目利きするプロフェッショナル5人は、さまざまな物差しを使って会社の良しあしを判断する。その物差しとは、会社の制度や数字といったハード的な物差しと、社長などの人物を評価するソフト的な物差しとに二分される。ここでは、その物差しでキャリアを潰す危険な会社の特徴を教えてもらう。
社会保険労務士の斎藤隆浩氏は、労務という制度面から企業をサポートしている。しかし、「残念ながら、労務が整っている会社というのは、上場企業であっても少ない」と話す。そんな斎藤氏が必ずチェックしているのは「2ちゃんねる」。
「すべてを鵜呑みにはできませんが、内部告発系の投稿から、企業の人材に対する考え方が分かります」
また、あまりにも給与が高すぎる、手当が乱発されているなどの企業も危険。どこかにカラクリがあると考えて間違いない。
一方、元ITベンチャーの社長であり、現在は投資家として活躍中の板倉雄一郎氏は、「株主や従業員、取引先などといったステークホルダーのバランスが最も大切」と断言する。
「すべての関係者のバランスが取れていて、持続的に経済価値を配分できているのが良い会社。一部の誰かが大きく損をしている状態だと、必ず破綻します」
そのバランスを見極める参考になるのが、有価証券報告書。ビジネスモデルや株主構成、パートやアルバイトの比率など、企業に関するすべての情報が盛り込まれている。これを読まずして企業を判断することなど、不可能に等しい。
また斎藤氏は、労務対策の一環としてスキルアップ支援が充実している会社を高く評価している。しかし「制度が機能していない会社も多いので見極める必要がある」と指摘。さらに厳しい意見を出したのが板倉氏。「投資家や顧客から得た金の無駄遣いにつながる教育制度は、むしろ必要ない」と斬る。
経営上層部の言動から多くのヒントを読み取る
一方、経営者を見て判断しているというのは、ベンチャー支援を行うドリームインキュベータ代表取締役社長の山川隆義氏。「ベンチャーは社長の個性が色濃く反映するため、時間にルーズだったり、論理が破綻している社長には警戒している」と話す。
ただし、投資のプロとはいえ、時間を掛けた面談を繰り返さなければ、真実は見抜けない。そこを定性的なものを定量的に分析するユニークな方法を教えてくれたのが、資産運用会社レオス・キャピタルワークス代表取締役社長、藤野英人氏。「ホームページに社長の顔写真が載っていない会社は要注意」だという。
「今までに逮捕された経営者の会社を調べると、もともと顔写真を載せていないところがほとんどなんです。どこか後ろめたいことをしているのかもしれません」
では、転職時の面接で善し悪しを見抜く方法はあるのだろうか。組織人事コンサルティングファームのマーサー ジャパン代表、古森剛氏は、「面接官から得られるシグナルもたくさんある」と話す。
「上層部に行けば行くほど態度が大きく、現場を分かっていないというのは危険な兆候。上と下が乖離しているという印象には要注意です」
ただし、会社の良しあしは個人の志向によるというのが古森氏の持論。
「会社に何を求めるのかという自分の本音を認識しておくべき。転職してはいけない会社とは、自分のベクトルと合わない会社なんです」
また、あえてこんな提案も。
「これだけ人材が流動している時代、むしろ怪しい会社で修羅場を経験し、キャリアに活かすというのもアリなのでは?」(板倉氏)
いずれにせよ、自分の軸を認識しない限り、自分にとっての“転職するべき会社”の選択は難しいといえる。
キャリア論の先駆者 高橋俊介が語る“人材”で見る 良い会社の条件
慶應義塾大学 大学院教授
高橋俊介さん
会社の良しあしは個人の目指すべき方向で異なるが、世の中には確かに「人材輩出企業」と呼ばれる会社が存在する。優秀な人材を育て上げる“良い会社”とは、どんな条件を兼ね備えているのか?
「若手社員1400人を対象に『成長実感』について調査を実施したところ、実感値が高い人は、教育制度の充実度よりも、チャレンジ度の高い職場環境に身を置いているケースが多いことが分かりました。こうした職場では上司の質が良く、意識的に若手を伸ばそうとしているので、“命令”でなく“問いかけ”がある。
また、モチベーションを上げるのもうまい。一人一人の成長に応じた成果を求めるため、健全なプレッシャーを適度に与えている。こうした条件をすべて持っていることが、良い会社の条件といえるでしょう」
絶対に転職してはいけないブラックリスト企業の真実!
イレギュラーズ アンド パートナーズ株式会社 代表取締役
山本一郎さん
大学卒業後、2ちゃんねる関連のイベントを通し、ネット業界で「切込隊長」として知られる存在に。ブロガー、ライターのかたわら、複数企業の代表としてファンドビジネスなどを手掛ける
転職してはいけない会社とは、何もビジネスモデルや業績が悪い会社ばかりではない。そこで有名企業の内部事情に詳しく、自らも経営者である山本一郎氏に、業界内でブラックリストに挙げられる要注意企業の真実を聞いた。
ブラックリスト 1 社員は完全な“使い捨て” 某外資系中堅証券会社
中堅規模の金融機関は成果重視で現場が厳しいのは有名。ある外資系の証券会社はフリーアドレスなんですが、要するに社員全員分のデスクが確保できないだけ。それもPCは各自、自分のものを持参するという決まりになっています。当然、社員に対する待遇も劣悪で4?5人同時に採用した場合、そのうち1人は入社当日に退職するそうです(笑)。外資系への憧れめいたイメージだけで、転職を考えてはいけない好例です。
ブラックリスト 2 事業の多角化に失敗して迷走した成長企業
一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していた企業の話ですが、強引に事業を多角化した結果、次々と事業の撤退や譲渡を繰り返さざるを得なくなったんです。現在はコアビジネスだった事業のみ、辛うじて残っている状態で、超大手企業のグループ傘下に収まっています。今後も合併などの予定があり、てんやわんやの状態だと聞いていますよ。
ブラックリスト 3 とあるネット企業の知られざる残酷悲話
成長業界であるインターネット企業の中にも、厳しい労働環境の会社はある。ある社では、入社から7年経っているのに仕事の内容も肩書も給与も同じというところも。こうなるとほとんど?飼い殺し?ですよね(笑)。ビジネスが経営トップの構想次第という企業は要注意。貴重な経験にはなるけど、いつまでも同じ仕事だけ続ける状態ではキャリアアップは望めないですよ。
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