Vol.379

「お客さまは神様なんかじゃない」サイボウズ青野慶久氏が提言する、営業職の働き方改革

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今、企業が社員の働き方を見直す「働き方改革」が、日本全体で注目されるようになっている。

特に営業職にフォーカスしてみるとどうだろうか。2017年2月10日に開催された、営業職の働き方を考えるイベント『新世代エイジョカレッジ・サミット』で発表されたデータによると、営業職に従事する9割の女性が、10年以内に営業を辞めてしまうという。ライフステージの変化が働き方に影響を受けやすい女性にとって、営業職は「働きづらい」職種のひとつなのだろう。

ではどうすれば、営業女子がずっと働きやすい環境になるのだろうか。また、女性を筆頭に、営業職全員の「働き方改革」をするにあたって、必要なことは何なのか。同イベント内でサイボウズ代表の青野慶久氏が語った事例から、そのヒントが見えてきた。

サイボウズ青野慶久氏
サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏

多様な営業マンが活躍するために必要なのは、チーム営業の体制

性別や個人の状況を問わずに「営業職が働き続けられる会社」にするには、「チーム営業の組織体制を作る」ということが解のひとつだと思います。

営業のようにお客さま対応が必要な仕事では、全てを1人でこなすことは難しいもの。確かに、商談はSkypeなどでも可能ではありますし、事務的な作業であればリモートワークで対応はできます。ですが、子供を寝かしつけている時に電話に出ることはできないですよね。

そこでサイボウズでは、どんな状況にいても営業職が活躍できるよう、お互いをサポートし合う「チーム営業」の形をとっています。例えば「どうしても外せない商談があるのに、子どもを預けられない」という場面があっても、チームのメンバーがフォローすることで解決する、という体制ですね。

この前もサイボウズでは、商談に行っている上司の家でメンバーが子守をしながら在宅勤務をしていた、なんてことがありました。

営業をチーム化することは、こういったイレギュラー時の対応の他にも、個々の強みを生かした役割分担が可能になるというメリットもあります。例えば「こういう案件がきたから、彼女が担当する」と、自分が得意な分野を担当することができたり。チーム内で価値がある人なら成果も上げやすいし、成果を出していれば時間の制約も関係なくなります。

また、例えば営業職を続けるのが難しいと言われているママ社員であれば、「保育園を見る」、「夕方の時間のスーパーを見る」など、若手営業マンとは違った生活を経験できるはず。そういった、会社の仕事をやっていない時間だって絶対にムダにはならない、というのが僕の考え。仕事以外の時間が、インプットとして価値あるものになるからです。それこそ、その生活をしているママ社員にしかできないバリューを生み出すことに繋がるのではないでしょうか。

チーム営業運営のポイントは「給与は市場性で決定」「補完関係のあるチーム編成」

一方で、チーム営業を導入するにあたって、課題はたくさんありましたよ。

まず、チーム営業だと、個人の給与や評価を決めるのが難しい。制度導入時は、「営業は個人の目標がないとモチベーションが上がらない」という声も多数ありました。チームで営業していると、「この手柄は誰のものなのか」というのが分かりづらいもの。そのため、この問題は「賃金」とセットで考えなければいけないと思いました。

もともとサイボウズでは、普通の会社と同じように、役職ごとに段階を持たせる給与テーブルで運用していました。しかし賃金モデルを変えていかないと、チームの健全な運用はできません。

そこで私たちが出した結論は、単純な売上数値ではなく、個人の「(一般的な転職市場の)市場価値」と「社内の信頼度」で賃金を決定するということ。もちろん、年功序列にはしませんし、結果以外の部分を特別扱いにだってしません。その人がしている仕事が、どのくらいの価値があるものなのか、で給与を決めたのです。

その人の市場価値を決める際は、転職サイトに載っている他社の標準給与を見たり、弊社の中途採用の方針から決定しています。あとは社員が直接交渉してくることもありますよ。「私は今、〇〇社からいくらでうちに来ないかって誘われているんですが」って(笑)。

これって社員にとっては決して甘い制度ではなくて、給与が下がる場合だってあるわけです。もちろん、給与を下げられた人は不満を言いますが、それがその人の市場価値なので。

そうやって社員が自分の市場価値に興味を持つ、ということも、会社を作っていくには大事なことだと思っています。個人と会社の対等な関係が築けているということですから。

また、チームの編成に関しては、できるだけ補完関係が生まれるように考慮しています。上司がママだったら「私がいつかママになったら、こういう風に仕事がしたい」と考えたりするので、お互いに上手く相互作用が起きて、自身のキャリアや働き方を考える良いきっかけになるのです。

ギスギスしてもいい。それはクリエーティブの機会なのだから

チーム営業を導入してよく聞かれるのが、「ママ社員など、早く帰る人がいたら残っている人が割を食うのでは? 不満が生まれてしまうのでは? 」というもの。

そこに関しては、前述したような話をきちんと説明して、「ママのためじゃなくて皆のためにやるんだ」と納得してもらわないと、メンバー間に摩擦が起こってしまいます。

まぁ、ギスギス感が全く生まれてこないのかといったら嘘になりますよ。でもそれが「多様性がある」ということなのだと思います。サイボウズでは「議論の文化」を大事にしているので、その多様性を感じ、不満をきちんと整理して、独自のフレームワークに沿って議論するようにしています。

ただの悪口や不満を言うのではなく、問題を議論することで、その「ギスギス」はクリエーティブを生むきっかけに変わります。「ではどうすればもっと働きやすくなるのだろう」「どうすれば自分が不満を持たずに、効率的に成果を出すことができるのだろう」と論理的に考えることができる絶好のチャンスだと思うわけです。

また、もう一つ懸念点だと思われるのは、「時短の社員が増えたりしたら、お客さまに迷惑がかかるのではないか」ということ。いくらチームでお客さまの情報を共有していても、実際にその人が現場に行かなきゃならないことだってあるはずです。そんなとき、僕は「お客さまに素直に無理です、と謝ればいい」と言っています。お客さまは決して、神様なんかじゃないんですから。

お客さまに「どうしても明日までに」と頼まれた仕事を、若いメンバーは無理してでもやろうとしますが、果たしてそれは本当に良い仕事なのでしょうか。日本の営業職全般に言えることですが、お客さまの都合ばかり考えていてはこちらが疲弊してしまい、良い仕事は生まれません。

サイボウズでは、そうした働き方を認めながらも、売上は落ちていません。むしろ、業績は好調なんです。お客さまは神様で、営業は時間と足で稼ぐものだという古い考えは捨てて、多様性を認め、より価値のある仕事をしていきたいものですね。

取材・文・撮影/大室倫子(編集部)

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