Vol.390

「独身営業女子がママ社員として働いてみた」残業51%減・業績維持に成功したキリンに学ぶ‟営業の働き方改革”のヒント

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2月10日に開催された、営業職の働き方を考えるイベント『新世代エイジョカレッジ・サミット』で発表されたデータによると、営業職に従事する9割の女性が、10年以内に営業を辞めてしまうという。

営業女子、ひいては営業職全体の働き方改善を考えることが急務だ。ではどうすれば、全ての営業職が働きやすい世の中になるのだろうか。

同イベントでは、サントリーやリクルート、日本IBMなど15社31チームが集まり、働き方改革を推進するために「どうすれば営業職が労働生産性を高めて働けるのか」をテーマに半年間の実験・検証を行った結果が発表された。

最優秀チームに輝いたキリンの営業チームの実験事例から、「営業の働き方改革」のヒントをご紹介しよう。

最優秀チームに輝いたキリンの営業チーム

『新世代エイジョカレッジ・サミット』大賞に輝いたキリンの営業チーム

「私たち、このまま働いていけるの?」20代営業女子の不安から始まった、シミュレーション実験

「私たち営業女子は、このまま営業として働き続けられるのでしょうか」

そんな若手女性社員の不安から始まった今回の実験。営業女子が辞めてしまう大きな要因のひとつに、「出産後の働き方が難しいこと」がある。

ママになれば、保育園から突然の呼び出しがあるかもしれない。また、子どもが熱を出せば出社できないことだってある。顧客と予定を合わせて働かなければならない営業職にとって、予定の見通しが立たないことが仕事の妨げになるというのは想像にたやすい。プライベートな問題が仕事に影響するようになれば、周りの目はもちろん、自身の営業成績が気になってしまうだろう。

「そうは言っても、キリンで活躍する営業ママがいないわけではありません。そこで、私たち営業チームが考えたのが、『実際にママ社員と同じ状況を経験して、働きづらい点を改善していこう』というもの。そうすることで、労働生産性の高い働き方を学ぶことができると考えました」

そう話すのは、キリン営業チームの若手独身女性たちだ。

キリンの営業チーム

こうしてキリン営業チームは、よりリアルなママ社員になるために、就業スタイルに以下のルールを設定した。何が起こるか分からない状況下で、定時で帰ること。そんな制限のある環境下で、いかに効率的な働き方ができるのかを実験・検証した。

≪“なりきりママ”社員のルール≫
1.定時出社(9時)
2.定時退社(17時半)
3.夫サポート制度(週に一度、夫の力を借りて残業や飲み会に参加できる)
4.突発的な終日休み(ランダムに「子ども発熱」の連絡が入る)
5.突発的な早退(すぐに迎えに行かなければいけない発熱連絡)
6.シッター制度(帰れない時はベビーシッター利用を想定した罰金制)
7.20~5時は自宅PC使用可能(緊急対応が必要なときに備えた、実験中の特別措置)
8.ママ活動宣言(家に早く帰って何をやるかを宣言)
9.ママ日記(ママとしてやったことを毎日メモ)

「ルールを守り、徹底してこの働き方を実践してみました。突発的な連絡がきたときには、商談を断って帰ることもあります。ママ社員の大変さを感じながらも、改善点や効率化する点が徐々に分かってくるのを感じました」

効率的な働き方、エンドユーザーの理解……営業に価値のある実験結果

今までは毎日のように残業して、日々のタスクをこなしていたという彼女たち。働き方を制限される中で、営業成績が落ちてしまうのではないかと危惧していたが、結果は予想を上回る好調だったのだという。

「1カ月間実験をした結果、期間中のやるべきタスクは、概ね80%をクリア。周辺へのアンケートでは、迷惑だったとの回答はゼロ。チーム平均では残業を51%削減することに成功しました。また気になる業績ですが、結果は前年維持。しかし前年同様、全国平均を上回る数字を出すことができたのです」

その結果の裏側には、徹底した仕事効率化の動きがあった。

「日々、気付いたことを『ママ日記』に記して、効率化のノウハウをチームで共有していたことが実験成功の秘訣です。ルーティーン業務など、普段働いているときには気にならないような小さな改善の積み重ねが功を奏しました。上司からは『仕事のコツをつかんだね!』とコメントを貰うなど、周りにも目に見えて労働生産性の高い仕事をすることができました」

さらに実験では、独身のメンバーにママのような生活者・消費者としての視点が加わったことで、営業活動に大きな価値を生むことができたと話す。

「今までは遅い時間にしか行けていなかったスーパーマーケットに、夕方ごろに行けるようになりました。そうすると、私たちのエンドユーザーとなる生活者の日常を間近に感じられるようになります。消費者はこう考えているから、こうすれば売れるのではないかといったマーケティング視点が身に付くようになったんです」

もちろん、ママ社員になったことで、罪悪感を感じたり、日々プレッシャーと戦う恐怖はあったのだという。しかし結果的に、効率的な働き方を学べ、『ママになっても営業を続けられるかも』と、不安を取り除くことができたというから、実験は成功と言えるのではないだろうか。

働き方改革のヒントは「ママの仕事術」にあり

独身のメンバーが、疑似ママ体験をしたことでさまざまな効果をもたらした今回の実験。結果を受け、今後はキリングループを皮切りに全国的に「なりきりママ」を研修として取り入れてくれたら、と熱意を燃やす。

「今回のような内容を研修に取り入れることで、社員全員が男女、未婚既婚、子どもの有無など関係なく制限のある働き方を体験できます。今の仕事にムダがないか? もっと効率化できないか? といった現状の働き方を見直して意識を変えることができるんです。そうして時間内にいかに成果を挙げるか本気で考えること、そして多様な働き方への理解を深めることが、これからの働き方改革には必要なのではないでしょうか」

労働生産性向上につながる多くのヒントを持つ、ママ社員のノウハウ。我々が実際に体験することは、現状では難しいかもしれない。しかし、身近なママ社員などからそのスキルを真似してみたり、自分の中で制限を設けて労働生産性を意識してみるなど、要素を取り入れることはできるはずだ。そういった意識が社会全体に広がっていけば、営業職の未来は明るいだろう。

取材・文・撮影/大室倫子(編集部)

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■同イベント内で登壇したサイボウズ青野慶久氏の記事はこちら
「お客さまは神様なんかじゃない」サイボウズ青野慶久氏が提言する、営業職の働き方改革

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