「List10. プロジェクトをまわす」 時代を生き抜く女のチカラ! 30歳までにしたい10のシゴト
全体を見渡せる立場を経験することは
「ステップアップの最短ルート」でした
田島涼子さん(28歳)
システム企画
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大学では社会学を専攻。就職時には「何か専門的な職種に就きたい」と考え、さまざまな業界と関わることができるITの仕事を選んだ。入社3年目で親会社へ出向、リーダーとしてプロジェクトを任された田島涼子さんに、その経験を語ってもらった。
任されたのは1年半がかりの壮大なプロジェクト
田島涼子さんが現在勤めているのは、大手化学メーカーのグループ会社のシステム全般を請け負うシステム会社。運営や開発、サービス提供など、グループのIT全般をサポートしている。
「クライアントから依頼を受けるだけでなく、こちらから新しいシステムを提案することもあります。要件定義から開発、運用、引継ぎまでを一つのプロジェクトとして動かしていきます。だいたい1年半から2年くらいかかるものが多いですね。まずは、現状調査をしてから開発に入りますが、この期間が一番忙しくなります。だいたい1年半のプロジェクトのうち、1年くらいは忙しいでしょうか(笑)」
田島さんがリーダーとして担当したのは、自社がクライアントからサービスの申請を受ける際の受付システムの開発プロジェクト。それまでの申請フローでは、申請漏れや請求ミス、処理作業のミスが起こりがちだったことを受け、プロジェクトが立ち上がった。サービスを申請するクライアント側と、それを受け付ける自社、その両者が使うサービスは、複数ある申請パターンを網羅するよう作られ、無事リリースされている。
メンバーと同じスピードで仕事をしない
「プロジェクトメンバーは私を含め6人。ただし、このシステムを利用することになる関係各部署を含めると膨大な人数が関わるものでした。苦労したのは、『社内調整にかかる時間をいかに短縮するか』。そこで、プロジェクトをまわす者として心掛けたのは、『実務担当者と同じスピードで仕事をしないこと』でした。調整中の事項が差し戻されてしまうと、またゼロからやり直すことになりますから、その必要が無いように、キーマンや責任者に別途提出する資料を作成したり、事前にその方に根回しをしておいたり、常に次に何をしなきゃいけないかを考えて動いていました」
その先回りの仕事を実現させたのは、田島さんが入社した頃から癖付けていた人間関係作りがあったからこそ。
「ITの専門知識は幅広いので、すべての分野においてスペシャリストである必要はないと思います。でもプロジェクトをまわす側として『分からない』では済まされないんです。だから、壁にぶつかったときに助言を求められる“ブレーン”を作っておきたいと思っていました。自社だけでなくクライアント側にも人脈を広げておくことで自分が仕事をしやすくなるんです。そのためには面識のない人にも自分からどんどん話しかけに行っていました」
分かるまで聞く、そうして築いた“信頼される立場”
プロジェクトに関わるのは自分よりも年上の男性ばかり。話したことも無い人に質問しに行くことに、最初はかなり緊張していたという。ただ、プロジェクトリーダーであることを自覚し、責任感を持っていたからこそ「しつこいと思われても分かるまで聞きに行きます!」と笑顔で行動できたのだろう。
そんな彼女が、20代で大きなプロジェクトをまわした経験で得られたことは「周囲からの信頼」だという。
「IT業界は若い人も多いですが、女性はまだまだ少ないので、最初は誰も私のことを頼ってくれなかったんです。システムに関する問い合わせがあっても私には聞いてくれない……みたいな。それが、一つプロジェクトを成功させると、信頼されるようになって社内からの見られ方も変わりました。若いうちにやれたからこそ、勝ち得た信頼をもとに次のプロジェクトに挑めると思います。今回のプロジェクトでは、今まで関わったことのなかったシステム開発で必要な資料を見ることができたのもプロジェクトリーダーならではの良い経験でした。こういう総合的な立場に立つことは、専門知識を1種類極めるよりも早いステップアップになると思いますね」
プロジェクトリーダーを経験し、今度どんな仕事をしていきたいかが見えてきたという田島さん。システムに携わっていくことは変わりないが、新しい立ち居地に興味があるのだとか。
「要望された企画を遂行する側ではなく、要望を提案する側になってみたいと思うようになりました。プロジェクトをやりきるのは楽しいけれど、『何でその目的を果たさなきゃいけなかったのか』を考える側に興味があります。プロジェクトリーダーとして多くの人と関わる中で、自分よりももっと上の目線でものごとを考えている人がたくさんいるのを知りました。そういう、自分にはない発想ができる人と面白い仕事をしていきたいですね」