アウトソーシング市場活発化で変わるエンジニアのキャリア地図
3月1日の改正労働者派遣法の施行により、ついに製造業の人材派遣サービスが解禁された。従来、製造業の現場では「請負」の形でアウトソーシングの導入が進んだ。だが、この方法では、アウトソーシング企業の社員は常駐先のメーカーから直接指示を受けることができない。このためメーカー側は、組み立てや検査など、比較的単純な作業に限って請負業者に委託しているのが実情だった。
こうした流れのなかで、派遣する人材を正社員として雇用する「特定派遣」のシステムを採用する技術系アウトソーシング企業も増えつつある。メーカー側にとっても、「特定派遣」であれば、直接派遣社員に指示することができるうえ、契約期間の制限がないため、長期的なプロジェクトを任せられるメリットがある。したがって、今後はメーカー側がより高度な作業を派遣社員に担当させる動きが進むと予想される。
また、ITアウトソーシング市場においても、現在IT全体が伸び悩むなか、着実に成長している。企業のコスト削減努力が続く厳しい経済環境のなかで、ITアウトソーシングが企業にITコスト削減の1つの重要な切り札として重視されている表れだろう。
技術力を身につけられる
こうした動きを受けて、エンジニアのキャリア地図も大きく塗り替えられようとしている。特定の企業に就職してスキルを積むだけでなく、限られた時間で働くアウトソーシングのメリットを生かしつつ、スキルアップを図る可能性が開かれたためだ。
キャリアデザインセンター人材紹介事業部の山田理人氏はこう語る。
「アウトソーシング業界で働く最大のメリットは、技術力が身につくことです。今やメーカーとアウトソーサーは切っても切れない関係になりつつあります。製品の高機能化にともなう技術の専門化・分業化で、現場で作業するエンジニアも数百人単位に膨れ上がり、メーカーの製造現場はもちろん、ITの現場でもアウトソーサーの存在なしには成り立たなくなっている。特定領域で専門的なスキルを高めるなら、アウトソーシング業界は有効な選択肢といえます」
最近はメーカーにおける商品企画などの上流部分を希望したり、あるいは、IT業界においてプロジェクトマネジャーやコンサルタント志向の強いエンジニアが増えている一方で、特定分野での高い技術力を武器にキャリアアップを望むエンジニアも少なくない。アウトソーシングで活躍できるのは、こうした技術志向のプロフェッショナル予備軍、と山田氏は指摘する。
「モノ作りが好きで、“匠の技”を追求したいエンジニアには格好の場といえるでしょうね」
面接で企業を見極める
だが、依然として不安要素もないわけではない。企業の外注ニーズは景気に左右されやすいため、請負先のメーカーの業績が落ち込めば契約を切られる不安が常について回る。その上、アウトソーシング企業においても、思うようにスキルが積めないリスクは常に存在する。
「アウトソーシング企業の質は、ある程度なら面接のときに見極めることができます。会社選びで失敗しないためには、福利厚生やプロジェクトの派遣期間、離職率や仕事の進め方、個人評価のシステムがどうなっているか…。こうした項目を慎重にチェックし、自分にとって仕事しやすい環境かどうかを確認することが大切です」
アウトソーシング業界では競争激化に対応すべく、社員に対する技能研修を強化する動きも出始めた。専門性を高めたいと考えるエンジニアにとって、1つの魅力的な選択肢になりつつあるといえそうだ。