銀行の基幹システムにWindowsベースのシステムが導入され、ICカードシステムの裏側で『Microsoft SQL Server』が稼働する――。最近、エンタープライズ市場でのマイクロソフト(以下MS)技術の存在感が高まりつつある。ITに関する調査・分析を行うガートナー ジャパンの川辺謙介氏は、この潮流を次のように説明する。
「技術者が激減するメインフレームのメンテナンスをどうするのかという焦りもあり、システム開発の現場では『マルチプラットフォームの構築か、Windows一本のシステム環境に移行するか』を議論する機会が増えています。MS製品は、開発生産性と運用面でのユーザー親和性の高さを強みに、着実に浸透し始めているとみていいでしょう」 それに伴い、MS技術の開発環境を担う.NETを用いた案件数も増加している。MSは今年、.NETによる標準開発プラットフォームの最新版『.NET Framework 3.0』を発表したが、「2006年の国内Webアプリ開発案件のうち、.NETは対前年比で50%以上の伸びを見せており、この勢いは今年になっても続いているとみています。開発フレームワークとしての.NETは、急速に広まっているといえるでしょう」(川辺氏)。 IT業界には、メインフレーム世代を中心に、《Windowsは不安定で信頼性に欠ける》というイメージも根強く残っている。しかし、「それはシステム構築の仕組みの問題であり、製品の信頼性とは関係のないこと」と反論するのは、マイクロソフトの市橋暢哉氏だ。 「我々はすでにエンタープライズ向けソリューション企業としての地位を確立していると考えています。実際に、最近は新たに大規模システムを作る際、『オープンソース(Linux)かWindowsか』という選択になることが多いのです。オープンソースの場合、ソフトウエアそのものは安価に入手可能な場合が多いですが、開発や管理に少なくない手間と自己責任が伴います。リスク管理を重んじるエンタープライズ市場だからこそ、Windowsに優位性があると考えています」 この流れは、開発ツールである『Visual Studio』の普及率にも現れている。05年11月にリリースされた『Visual Studio 2005』は1年7カ月で過去最高のライセンス数を記録。そして今後も、MS技術へのシフトの起爆剤となりえる技術・製品が続々と投入されるという。 その一例として間もなく大きな話題を集めそうなのが、Rich Interactive Application(RIA)や動画配信を実現するWebブラウザプラグインである『Silverlight』だ。特に動画配信において、PC全画面でハイビジョン並みの動画が視聴できるようになる画期的な技術で、たとえば動画広告に用いればサイズに制限のある既存広告との圧倒的な差別化が可能になる。そしてこの技術は、開発する側にも大きな変化をもたらす。『Silverlight』で動作するアプリケーションは『Visual Studio 2005』を用いることで容易に開発できるように設計されており、加えてアプリ開発エンジニアでもWebのフロントエンド開発まで一手に行えるようになるのだ。 「弊社では、ほかにも『Windows Server 2008(Longhorn)』や次期SQL Serverの『Katmai』などにより、エンタープライズ市場でのプレゼンスを高めていきます。MSの技術は、これまで以上に社会インフラとして用いられることになるでしょう」(市橋氏) こうしたMSワールドの広がりにあわせて、.NETの有用性もますます高まっていくはずだ。.NET開発のエキスパートであるアバナードの福井厚氏は、未来の.NET技術者をこう激励する。
「『.NET Framework 3.0』は、BASIC、C/C++、Java、COBOLなど、さまざまなバックボーンを持つ技術者が抵抗なく移行できる、技術者にやさしいフレームワークです。“粒度”の高いクラスライブラリによって高度な機能を簡単に実現でき、.NETの知識によってMS製品のラインナップが持つ機能をフルに引き出せます。.NETの習得は、言語の壁を取り払い、エンジニアとしての幅広い視野を手にするきっかけになるのです」 |
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