転職でキャリア「最適化」計画
悩み多き30代に差し掛かったエンジニアとは、世間や会社、家族にとってどういう存在なのだろうか?
社会情勢や企業人事に精通した専門家たちが、「30代のリアル」に鋭く切り込む!
社会情勢や企業人事に精通した専門家たちが、「30代のリアル」に鋭く切り込む!
株式会社NTTデータ経営研究所 人財・組織戦略 コンサルティング本部 シニアマネージャー 桃原 謙 氏 大手IT企業や、事業会社の人事責任者を経て、現職。現在はIT企業を中心に、人事・人材開発のコンサルティングを行う |
特定非営利活動法人 情報社会生活研究所 代表理事 小橋 昭彦 氏 メール情報誌『今日の雑学』シリーズ編集長。インターネットを中心に生活者視点を重視した情報社会の探求・企画支援に取り組む |
慶應義塾大学 理工学部教授 工学博士 椎木 一夫 氏 日立製作所中央研究所を経て、1994年より現職。著書に『エンジニアが30歳までに身につけておくべきこと』(日本実業出版刊) |
現在、入社10年前後のエンジニアは、社内の即戦力として重宝されている。プロジェクトでは、20代で培った技術力が活かせる業務に就き、サブリーダーとして数名のメンバーを束ねる役割を任されることが多い。 しかし、入社10年目以降となると会社から期待される役割が大きく変わる。PMとしてチームの成果に全責任を負う立場になるのだ。しかも、チームの成果はビジネスの成功とメンバー育成の2つで評価される。「どれだけ業績に貢献したか」、「顧客にどんな利益をもたらしたか」、「社会の役に立つモノ・サービスを開発したか」などの評価が、個人の市場価値と直結するようになっていくのだ。 その分、仕事に対する満足度のハードルも高くなる。『IT人材のプロフェッショナル意識調査2008』を実施したNTTデータ経営研究所の桃原謙氏は「30歳から35歳のエンジニアは、技術中心でやってきた自分の能力と、会社からの期待とのギャップを感じている割合が高い」と指摘する。 新しいものを取り入れる発想が強み ただし、マネジメントへの抵抗感を捨てられれば、この世代は社会を変え得るポテンシャルを秘めている。現在の主要なデジタル情報ツールの登場・普及と自身の年齢的成長が一致しており、新しい情報ツールが社会に与える影響の大きさを目の当たりにしてきたからだ。必要に迫られてデジタル化した上の世代とも、「デジタルツールがあって当然」という下の世代とも異なる、「必要なプログラムは自作する」という考えを持った世代とも言える。インターネット上の最新情報を集めたメールマガジン『今日の雑学α』を発行する小橋昭彦氏は次のように話す。 「この世代のエンジニアは、最先端の技術をどう組み合わせて使えば、世の中に役立つビジネスやサービスを生み出せるのかを基本から発想できる人たちなのです。アタマの柔らかさこそ、この世代最大の強みでしょう」 |
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専門を究める環境を選ぶ 社会を変え得るだけの発想力を持ちながら、具現化できるエンジニアは少ない。社会や業界にとって何が必要かという視点を忘れているからだ。だが、企業は高い専門性を有するマネジメント人材を求めている。「専門性を究めるためには、入社10年目以降、どの専門性を追求していくか腹を決めることが大切」(桃原氏)なのである。 専門性を決めたからといって、キャリアパスの可能性が狭まるわけではない。『エンジニアが30歳までに身につけておくべきこと』の著者・椎木一夫氏はこう言う。 「約10年を掛けて基礎力を身に付け、社内異動や転職によって仕事の幅を広げていくことです。例えば、テレビのディスプレー開発から出発して、テレビ全体が見渡せるようになり、さらには世の中のニーズに応じて新型ディスプレーや従来にないデバイス開発プロジェクトをリードしていくのです」 また、社会的には一人前と認められ、結婚して子どもが生まれれば、地域社会との接点が増える。仕事や人生における価値観、優先順位の付け方も変化するはずだ。実際、「私生活の転機が仕事の転機と重なるケースは多い」(小橋氏)という。自身の方向性を決めることで、自然と最適なキャリアづくりに適した環境が見えてくるのだ。 |
ウォークマンやファミコンが発売されたころに幼少期へ。ホームビデオやワープロの普及を体感して子ども時代を過ごしたことで情報ツールを柔軟に取り入れ、新しいことができる世代に
「失われた10年」と呼ばれた1990年代末期、就職氷河期のさなかに何とか就職。ある程度のリーダー経験をこなし、そろそろ本格的なマネジメントを期待されるようになる
20代後半あたりで結婚して子どもを持ち、家庭において大黒柱として期待されるように。また、子どもを通した付き合いなど、会社以外の場へと開かれる機会が増え、ワークライフバランスに大きな変化が
1つのスキルを磨いてきた人も、多くの技術を身に付けてきた人も、今後の人生で何のスペシャリストになるか選択の時。昇進か独立か、技術かマネジメントか、選択肢はさまざまだ