徹底解剖!!
「最年少マネジャー」の実力 |
企業が若手の抜擢を進めている。そこには、社歴による区別も、プロパー社員と転職者の区別もない。 マネジャーとしての「実力」を持っているか否かだけが、境界線となるのだ。 そこで、20代後半?30代前半の各社「最年少マネジャー」のキャリア、 現在のミッション、そして今後のビジョンを聞いた。 《2004年9月号より抜粋》 |
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20代から30代前半はすでに『若手社員』ではない 企業が20代・30代のビジネスパーソンを登用する動きが広がっている。背景には、2?3年前から目立ち始めた40代社長の出現や、成果主義が浸透していることなどが挙げられる。 つまり、企業は経営層の若返りを図るために次世代リーダーを早期に育成するプログラムを設けて若手にチャンスを与え、また賃金制度も従来の職能資格給を捨て、降格もありうる職務給や役割給を採用して、若手のやる気を引き出そうと必死なのだ。その際、プロパー社員か転職者かの違いは、すでに問題ではなくなっているのが現状だ。ジャーナリストの溝上憲文氏は、こう解説する。 「特に電機、自動車、証券、不動産などは、組織が確実に若返っています。電機、自動車は、グローバルな競争の波にさらされ、変革を迫られたことが一因。また、証券、不動産については個人向け営業を強化するにあたって社員間競争を引き出すために実力主義を徹底させたことが影響しています。いずれの業界も、転職者を積極的に受け入れています」 例えば、コマツは「ビジネスリーダー育成制度」の経営基礎コースに初めて20代の社員を抜擢。日産自動車は一般社員の職位を3階級に集約して、新卒でも早ければ8年で課長に昇格できる制度を取り入れた。 「以前ならば、30代後半で同期トップがやっと課長クラスに昇進するレベルでしたが、いまは30代前半で、課長クラスに登用される事例が複数出ています」(溝上氏) また、住友不動産は、前年度の成績で年間賞与額を自動的に決定する制度を取り入れ、最大格差500万円の差がつく。これは、若手社員のモチベーションアップにつながっているという。 一方、若手登用が進む中で、「最近は、大企業を中心に、余り始めたミドル層を処遇するため、『担当部長』や『部付課長』など、特設ポストが急増している」と溝上氏は指摘する。また、「ミドルを若手社員の下でどうモチベートするか」が、企業人事の最大の関心事であるという。 このように、企業は急速に組織の若返りを進めている。20代後半?30代のビジネスパーソンは、すでに『若手社員』、『マネジャー予備軍』などではなく、まさにマネジャーとして活躍することを求められているのだ。 |
CASE.1 | ||||||||
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Story1: Career | ||||||||
スキルアップの限界を感じ転職を決断する | ||||||||
神谷知信氏は自分の限界を打ち破る努力をしてきた。97年、外資系自動車機器メーカーに就職。カー用品店などへのルートセールス担当の営業マンとして2年半を過ごした。「完全な直行直帰型の営業スタイル。入社研修が終わると、PCと携帯電話、車を渡され、本社へ行くのは月に一度でした」 数字さえ達成していれば、時間管理や顧客交渉も思いのまま。神谷氏は入社1年目にベストセールス賞を受賞したが、次第に「スキルアップの限界」を感じ始める。より法人向け提案営業をしたいという願望のもと、デルを次の職場に選んだ。「子供の頃、米国に住んでいたこともあり、より国際色の強い会社での異文化コミュニケーションにも興味がありましたね」。 99年、デルに転職し、大手企業対象の法人営業を担当。内勤営業と外勤営業を経験したあと、オープン・ポジションの制度を利用し、法人向けデスクトップPCのブランドマネジャーへ転身した。担当するPCの法人でのシェアを第4位から第3位に引き上げることに大きく貢献した。 |
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Story2: Misson |
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ソリューション販売の売れる仕組みづくり | ||||||||
ブランドマネジャーの役割は営業支援に近い。営業時代の経験から「営業とマーケティングの風通しをよく」し、法人シェアの拡大を実現した。結果を残したら、しばらく続けるのが普通。だが、それでは成長範囲が狭まってしまう。 「デルの韓国法人を支援するプロジェクトがあると聞き、迷わず手を上げました」 現地外国人トップの下で、これまで日本で得た成功経験やノウハウを韓国法人にシェアし、売上拡大に貢献した。「売れる仕組みをつくる面白さを実感しました」と神谷氏は語る。 昨年4月、サーバ製品のマーケティングシニアマネジャーに28歳で就任。またエンタープライズ市場での認知向上、さらなる市場開拓のため、ソフトウエアベンダーとのアライアンスを推進するグループを立ち上げ、兼任。製品売りに強い同社では、新たな仕組みづくりが求められる職種で、優秀な人材を採用する任も負っている。これまで、社内の営業体制を改善したほか、企業導入シェアの高いITベンダーなどと手を組み、ソリューション企業としてのデルの認知度向上を実現している。 |
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Story3: Vison |
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異文化の組み合わせで ビジネスを生み出す | ||||||||
韓国法人の支援、ソフトウエアベンダーなどとの連携によるソリューション販売。神谷氏が手がけた成果は、「異文化の組み合わせ」が一つのキーワード。また、「小さなものを大きくするのが好き」と語る。本格的な海外勤務が将来の目標だ。 |
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CASE.2 | ||||||||
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Story1: Career | ||||||||
マーケッターとしてのスキル・経験を積む | ||||||||
齊藤秀俊氏はマーケッターとしてのキャリアを積み重ねてきた。4年弱勤めた前職の外資系消費財メーカーでは、マーケティング部門に在籍。前半は既存ブランドを担当し、後半は別ブランドの新商品立ち上げに関わる。ブランドの差別化につながる広告戦略を立て、そのコンセプトに合った広告を制作する。同時に、販促キャンペーンの企画、管理、運営・実行を行った。「MBAを取得した米国ビジネススクールでの専攻は、インターナショナルビジネスとマーケティング。外資系企業のマーケティング職は、自分が望むキャリアでした」 市場投入後、計画通りの売上げを達成。齊藤氏はマスマーケティング以外のスキルと海外経験を求め、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル(以下アメリカン・エキスプレス)へ転職した。トラベラーズ・チェック部門を経て、個人カード事業部門に社内公募で異動。ビジネスオーナー向け法人カードの商品企画を任され、ダイレクトマーケティング分野に本格進出した。 |
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Story2: Misson |
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新商品開発を手がけるビジネスリーダー | ||||||||
今年3月、齊藤氏は社内公募により最年少で法人事業部門マーケティング部の部長に就任した。具体的には、グローバル展開する大企業向け法人カードの商品企画・サービス開発を行う。会員企業はアメリカン・エキスプレスにとっての重要顧客であり、当然、利用額は大きい。商品企画の内容も、以前の国内ビジネスオーナー向けとは異なる。 マーケッターのキャリアに満足していたら、現職に就くことはなかっただろう。齊藤氏は販促キャンペーンでよく使う期間限定のプログラムを導入。会員には新プログラム、会員への新プログラム提供に際しパートナーとなる企業には、新規利用者の獲得を実現させた。 「商品企画へ異動した頃から、仕事に対する意識が変わりました。いかに周囲と連携して、新しい商品やサービスを作り上げていくかに大きなやりがいを感じていたのです」 社内公募へのエントリーを受け、会社側は齊藤氏の業務プロセスを分析した。彼のリーダーシップと一段高いポジションに対応できる潜在能力を評価し、マネジャー昇格を決めたのだ。 |
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Story3: Vison |
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世界に通用する マネジメント人材へ | ||||||||
現在、齋藤氏は国内の上司だけではなく、シドニーのアジア太平洋地域のヘッドクォーターとのやり取りの中で仕事をしている。グローバルな大企業向け法人カードの担当なので、商品企画・サービス開発についても、世界規模でのビジネス感覚が求められる仕事だ。 「国籍やカルチャーの異なる人が集まる職場環境で、付加価値の高いビジネスを生み出せるリーダーシップを身につけたいですね。世界に通用するマネジメント人材になることが将来の目標です」 |
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CASE.3 | ||||||||
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Story1: Career | ||||||||
あえてチャレンジングな環境に身を置く | ||||||||
梶川拓也氏はあえてチャレンジングな職場環境に身を置いてきた。大卒後に勤めた会社を半年で辞め、97年、大手電機メーカーに転職。「学生時代の起業経験」が特別に評価された。起業したITベンチャーが携帯電話のソフト開発をしていたことから、音楽配信サービスの立ち上げメンバーに抜擢される。「当時はネットワーク、ソフト、コンテンツに詳しい人材が少なく、その分、任される範囲が広がりました」と梶川氏は語る。99年末、ハード端末とメモリー、ネットによる音楽配信を組み合わせた世界初のサービス開発に成功する。梶川氏は国内を皮切りに、米国、アジア、欧州での立ち上げを担当した。 01年3月、ヘッドハンターの誘いを受け、外資系コンテンツ企業へ転身。梶川氏は法人を設立し、外資系コンテンツ企業から業務委託を受けるという特殊な働き方で、ネットを活用したプロモーション部門を率い、携帯電話で入場できる完全チケットレスのコンサートを実現。イベントは一般紙に載るほどの大成功だった。だが、「このままでは将来通用しないかも」との不安があった。経営者修行の必要を感じ、チップワンストップに転職した。 |
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Story2: Misson |
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売上責任を負う真のマーケティング | ||||||||
チップワンストップの高乗正行社長は、学生ベンチャー時代からの知り合い。同社は01年に高乗氏らによって設立され、ネットを活用した半導体・電子部品の一括購買代行サービスを行う。 片腕と期待される梶川氏は、30歳にしてマーケティング&システム部門の統括部長に就任。システム部門の長としては、調達部品をすばやく手配・納入するための物流システムのバージョンアップを計る。マーケティング担当としては、メーカーのニーズを先取りし、部品メーカーと共同で多品種小ロットの商品体制を整える。「ECの世界は刻々と状況が変化するので、システムや携わる人のオペレーションも常に見直しが必要です。商品開発では最終的な売上にまで責任を持つ真のマーケティングが求められます」。 チャレンジングな環境は同じだが、失敗できる余裕はない。会社として成長するには人材育成も必要で、「今までにないプレッシャーを感じる」という。ベンチャー企業のマネジャーである以上、このプレッシャーからは逃れられない。 |
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Story3: Vison |
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組織の黒子に徹する経営者を目指す | ||||||||
経営者修業のつもりで入社した梶川氏だったが、今は真のマーケッターになるのが目標だ。まずは会社の利益に貢献するマーケッターとしての実績を積む。その上で、エンジニアなどの専門職が成果を出しやすい職場環境を黒子として作り上げる。「その役割の延長線上にある経営者を目指したいですね」と梶川氏は語る。 |
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