若手転職リーダーが語る  

「いま一緒に働きたい人」5つの条件

有名企業に転職を果たし、第一線で活躍する若手転職リーダーは、次に迎え入れる20代転職者をどう見ているのか。2005年、現場で必要とされる人材の条件を探った。 《2005年1月号より抜粋》

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三洋電機株式会社
要員・能力開発ユニット HRDチーム 主任企画員
鹽野 敬彦氏(30歳)
東京大学法学部卒業後、小規模のベンチャー企業に入社、
eラーニング事業の立ち上げに携わる。03年、三洋電機へ転職

  ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
コンサルタント
相木 孝仁氏(32歳)
大手通信企業を退職後、コーネル大学で経営学修士(MBA)取得。99年にベイン・アンド・カンパニーへ転職、02年エンターテインメント企業へ転職。04年に再びベイン・アンド・カンパニーに
 
――お二人とも転職の経験者です。転職のきっかけは何ですか?

<鹽野> 以前は、30名規模のベンチャー企業で3年ほど開発業務全般を回し、若くてもマネジメント的な仕事ができる環境にありました。まだやりたいことはあったけど、三洋電機が「次世代経営者候補」という当時としては珍しい採用を行っていたので、大企業でも会社全体を見られる可能性があるなら、賭けてみようと考えたんです。
<相木> 通信業界の典型的な大企業で法人向けの営業を担当していました。仕事をしていく中で、より体系的に経営学を身につけたいと考えるようになり、海外MBAの自費留学を決意しました。帰国してベイン・アンド・カンパニーに入社。その後は、エンターテインメント企業を経て、再びベインに戻ったという経緯です。

スピード感と問題意識を共有できる人と働きたい

――いまビジネスの現場では、どんな若手が評価されていますか。

<鹽野> 三洋電機の場合は、自立型・創造型の人材を採用するという方針があって、自分で考えて解決できる人材が求められています。解決に向けて積極的にコミットする人材が評価される状況ですね。ファームも同じじゃないですか?

<相木> ベインでも、短期間で高いバリューを出さなければならないため、自立性は重視されます。また、何事にもめげずに最後まで考え抜くという基礎能力が意外と重要。精神的にも体力的にもタフさが要求される仕事ですから(笑)。でも、三洋電機のような大きな組織では、自立型人材であっても埋もれてしまう可能性があるのではないですか。

<鹽野> そうでもないです。「ビジネス公募制度」があるため、それを利用して新しいアイデアを出し、実行プランを立てて自ら事業を立ち上げてゆくような人材は、新規事業を行う部門のリーダーに抜擢されています。既存の新規ビジネスを引き継いで活躍している転職者もいますよ。

<相木> そうですか。コンサルタントにとっては、自立性と同時に重視されるのが論理的思考能力です。でも、事業会社でも同じだと思いますが単純に論理だけでは成果は出せないことが多く、問題解決の糸口を他の事象から見つける類推力も求められます。また、コンサルタント=個人プレーというイメージが強いですが、やはり一人でできる仕事には限界があります。ベインでは、チームで成果を出すために自分の思い込みで走らず、意見の多様性を受け入れられる柔軟性が求められます。

悩み逃れのための転職は問題解決にならない


――個人的には、どんな若手と一緒に仕事がしたいですか。

<鹽野> やはり、スピード感が同じ人や、共通の言葉を持っている人は仕事がやりやすいですね。プロジェクトの会議をするのでも、優先順位などをその場で決める会議と、「今日は、この辺で…」で終わる会議とでは、次の仕事の進行が違ってきます。 また、「共通の言葉」というのは、クオリティ、コスト、スケジュールを常に意識しながら仕事をしているかどうかということ。特に、顧客の姿が直接見えない間接部門などには、クオリティ、コスト、スケジュールと言ってもピンと来ない人もいます。こちらが一から説明しなくても分かる人なら話が進みやすいですから。

<相木> 私も、鹽野さんの意見に近いです。付け加えるなら、お互いに深め合い、刺激していけるメンバーだとありがたいですね。プロジェクトが佳境に入ると、週末や夜中も一緒に仕事をすることがあるため、かなり密な人間関係になりますから。さらに、自分の発言や仕事に対して自分で責任を取れる人、厳しい時に全体を盛り上げられるタイプの人もいいですね。鹽野 こうして条件を挙げていくとスーパーマンを求めているように聞こえますが、もちろんすべてを一人の人間が兼ね備えていなくてもいい。お互いの欠点を補える関係が一番ですね。

――これから転職を考えている若手に先輩転職者として、アドバイスをお願いします。

<鹽野> 目的へ向けて、何をしてゆくべきか…と、転職前はみんな考えると思うんです。「それに合うキャリアを作らなければならない」と考えるでしょうが、そこをもう一度見つめ直すことが必要だと思います。「そもそも今の時期に動くことが必要なのかどうか」、「動くとするなら、どういう条件が満たされればいいのか」。そこまで決めてから転職しなければいけないと思います。そのために、自分の強みと弱みをもう一度把握し直すことが大事です。それは、今の仕事でパフォーマンスを伸ばそうという時にも重要な作業です。来年どう働くか、その1年が今後5年、10年の中でどういう位置づけなのかを考えてみるといい。その結果、出た結論が転職ならば、それはGOサインでしょう。

<相木> その通りだと思います。転職は、すべての問題解決にはならないと思います。悩みを解決するための転職なら、止めたほうがよいでしょう。ただ、自分の目指す道が見えていて、自分の場を変えてみるのがベストな判断と思える場合には、有効な手段ですね。 また、私自身も出戻りを経験してキャリアを模索してきたように、目指す方向性についての明確な答えは簡単には得られませんので、十分に考えた後に思い切って転職するという手は有効かもしれません。

   
「現場リーダーが求める人」5カ条
1
自分で考え解決できる自立型の人
2
アイデアを出し、自ら実行できる創造型の人
3
論理力、類推力、協調性など複合能力のある人
4
クオリティ、コスト、スケジュールを常に意識できる人
5
厳しい局面でも、全体を盛り上げられるタイプの人
<鹽野> 転職による変化に耐えられる自分であるかどうかも問題です。いまの仕事がダメだから転職するというのでは、変化に耐えられないでしょう。いまの仕事も充実しているけれど、賭けてみようという転職もあるので、それに耐えられるだけのスキルとパワーがある20代後半に初めの決断するのが望ましいと思います。



――28歳前後は本当に必要か?

<製薬メーカー採用担当者(以下、製薬)> 確かに28歳前後はそれほどキャリアもないし第2新卒に毛の生えたような存在だ。それでも採用するのは、せっかく新卒で入れて戦力として育てたのに4〜5年で辞められ、ポッカリ穴が空いたからその補充という意味合いが強いね。

<電機メーカー採用担当者(以下、電機)> そう。キャリア的に中途半端だし、即戦力の人間は確かに少ない。でも彼らは97〜98年卒業の就職氷河期の世代。企業も採用を止めていたために社内にも人数が少ないし、今は景気が少しよくなって、社内のいびつな人員構成を正常に戻したいということで、その世代の中途を増やしたいという思いがあるね。

<ITサービス採用担当者(以下、IT)> それと最近の新卒者は7・5・3といって、入社3年目で大卒3割、高卒5割、中卒7割が辞める時代じゃない。新卒はどうせ3割は抜けていくという不安感があるが、20代後半だとマインドは非常に明確で、将来的にこういう方向でスキルアップしたいというのが自分の中で固まって転職しようとしている人は我々としても使える。この層はやりたいことが違いましたと辞めることはないだろうからね。

<電機> 28歳前後の世代に対する採用意欲は各社も強いし、05年以降も中途採用は増えると思うね。第2新卒も注目されているし、その延長で28歳も魅力的と考えている。また、今は大学卒業時は景気が悪くて目指す企業に入れなかったが、もう一度リベンジしてやろうというリベンジ転職¢gもいる。良い人材がいるし、企業も採用意欲があるし、今後はますます活性化していくと思う。

――中途に求める資質・能力は?

<製薬> 建前上はこういう人材がほしいと細かいスペックを出しているが、実際は普通に仕事をこなしてきて人物さえよければいいんだ。ただし転職歴は28歳だと1回ぐらいはいいが、2回が限界、うちが3回目ですとなるとだめだね。

<電機> しょっちゅう会社を変わっている人はどうしてもネガティブに見る。転職歴はうちも1回ないし2回がギリギリだね。
<IT> 求めるマインドとしては実際に仕事をやってきたことを前提に、やりたいことがはっきりしていることだ。たとえば3年後、5年後にどんな仕事ができるようになっていたいかという点に関しては新卒以上にシビアに見ている。具体化されていない人はいいです、となっちゃう。

<製薬> 面接では職務経歴は必ず聞くけど、それで前の会社でどれぐらい期待されていたのか、あるいは期待されていなかったかが大体わかるね。たとえば「異動履歴」を見ると、最初はローテーションでエリート街道を歩いてきたけど、途中で外されたような不思議な異動は特にわかるよね(笑)。

<IT> 面接での大前提は自分の意見をロジカルにきちんと言えるかどうかだ。自己主張もいいけど、何を言っているのかよくわからないというのではだめだね。能力・技能はあっても、なよなよしたイメージでメリハリがなく、うつむいている人は会った瞬間「こいつはダメだ」と思ってしまう。

<電機> 新卒ならその点は後で化けるかもしれないと大目に見るが、中途で新卒みたいな奥手っぽいやつは採用しないね。採用側としては、今は即戦力ではないが、短期的に力を発揮してくれそうな期待感があるかないかを見ている。

――学歴は見ているか?

<製薬> 当然見ている。要するに地頭≠ェいいかどうかの指標としてね。大学の許容範囲は大手企業だとやはり東大、早稲田、慶應、一橋とか少なくとも六大学、関西は関関同立クラスぐらいじゃないかな。でも理科系は何をやってきたかを重視しているし、部門が望むスペックであればよっぽど聞いたこともない大学でもない限り、要求にマッチした人間を優先している。

<電機> 新卒は学歴を見るが、中途の場合はないよりもあったほうがいいという感じで見ている。ただ、どんな大学でも書類選考で落とさないで面接は受けてもらう。というのは28歳ぐらいだと学歴だけでは計れない仕事で成長した能力部分も出てきている。学歴に関係なく、仕事を通じてかなり大化けして結果を出している人もいるし、そういうタイプも狙っている。

<IT> 学歴より氷河期に超大手企業に入った人材も動いている。よく聞くと大手は何百人もいる新卒の中でエリートコースに入るのは最初から学歴で色分けされている。逆に兵隊で入った人はやりたいことができずに結構塩漬けになっていて、専門性を高めるために転職したいというのもいる。そういう人は採用する側としては狙い目なんだ。
 

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