1.人事が暴露する転職者の給与の決め方
機械 転職者の給与は多少能力や年収も考慮するが、28・29歳だと給与の幅が狭く、せいぜい1万円も違わない。それ以上出したいとなれば社員資格を上げないといけないが、それでは在籍社員とのバランスがとれなくなってしまう。以前にこれだけもらっていたからこれだけほしいというのは通用しないね。特に大企業から中堅に行く場合はそれを覚悟してもらわないと困る。
IT 極端に給与を上げても現場で不協和音が起こるに決まっている。それでも、うちは新卒の同期の中でも上のレベルの給与で処遇している。キャリア採用するんだから、そのくらいの能力がないと逆にダメだし、うちの社員と比べて中の下だったら採用しないね。
電機 キャリア採用の場合、同年代、同学歴、同レベルにある社員と比べて判断する。たとえば職務レベルがA、B、C、D、Eという5人がいる組織に入れるとなると、AとBの間ぐらいかな、と面接の印象でポジショニングして賃金を設定する。後で違っていれば修正すればいい。あるいはCとDの間と思って賃金を設定して、優れていたらAとBの間ぐらいの給与になるように早めに修正する。
外資 技術系の場合、現場から「こういう経験をしてきた人材が絶対ほしい」と言われたときは、その人材に逃げられると困るから給与を上げるケースもある。あるいは裏の手として、不足分の補填として支度金を1カ月分出すとかね。「引っ越し代」とか、いろいろ名目はつけられる。他の社員にはわからないし、外には漏れる心配はない。
IT うちは「申し訳ないけど外資系と違うから」とはっきり言う。それでも飛び切り優秀なら、裏技として単年度契約で採用し、2年目から本採用という手法をたまにやっている。それだと年俸を高く設定することもできるし、無理に今の賃金テーブルに合わせる必要もない。1年やってもらって実績を残せば、同期を超える給与にしても職場の納得性が得られる。
2.成果主義下での人事評価、何がポイントなのか
機械 人事評価は単純じゃない。営業マンでも、数字だけでは評価しない。問題はどういう市況のとき、どこで売ったかだ。東京23区で売る人と奥多摩で売る人とではどっちが難しいかという視点で評価する。
IT 同じ達成度でも余裕を持って達成する人、頑張ってぎりぎりで達成する人がいる。社員の年齢にもよるが、若い時は余裕を持って達成している人間は低評価。つまり150%できる能力がある人が100%しかやらなければ、上司の間でも「なんだコイツ」ってなる。150%できる能力があれば170、180%にチャレンジするのが将来のリーダー候補なんだ。
外資 営業系の場合は一応、新規開拓先は何件、既存の顧客何件と企業ごとに目標を設定し、目標に達したかどうかの数字は確かに出てくるし、それによって評価点も決まる。ルートセールスでも、いい客を持ち、黙っていても電話で注文が入ってくる人もいれば、競合が激しくて得意先を回ってもなかなか注文がとれない人もいる。その場合、古参の社員はいい客は離さないし、中途採用だったらハッキリ言って不利になってしまう。
電機 でも奥の手はあるよ。たとえばコピー機を売り込もうとなった場合、ターゲット企業には各社の代理店がたくさん入っている。誰しも「うちはトップ企業にはかなわない」と思っているときに逆転すると目立つし、上司の印象は違う。
外資 全体の成績は平凡でも、難攻不落の企業を落としてシェアナンバー1にしたら、評価はボーンと上がるのは間違いない。でもその手柄を自分のものにするマネージャーもいるけどね(笑)。
機械 やはりできる奴というのは営業手法も考えてやっている。そして、上司に対して「今こういう手を使ってやっています」というレポートをどんどん発信してくる。上司もマネジメントがやりやすい。そういう連中がいつも上位の評価を得ているね。
IT 数字が出ない間接部門の社員にとって大事なのは、期限を絶対守ることだ。依頼された仕事は徹夜してでもやり遂げる、これは鉄則だね。もう一つは、人事にしても間接部門は雑用が結構多い。その場合、腰が軽くないといけない。「わかりました。やります!」と返事をする。頼む方は切羽詰まっているわけで、上司もあいつは頼もしい奴だと思うはず。
機械 嫌だなと思っても、快く受けとめて仕事をするキャパの大きい部下は、上司としては高い評価をするのは当然だね。上から与えられた仕事を渋るなんて論外。何もクリエイティブな格好いい仕事を思いつきでやるばかりが評価を上げるわけではない。
外資 外資ではアピール能力というのは不可欠だね。会議の席上でジェスチャーを交えてアピールする人間は評価が高いね。極端にいうと仕事の出来はそこそこでもね。逆に成績優秀だが、会議の席で一言もしゃべらなかったとなると、外人役員が「なんだ、あいつは一言もしゃべらないじゃないか。次の会議に出なくてもいい」と言い出すケースもある。
3.人事評価を気にするより今の仕事に打ち込め
IT アピール上手というより、こまめに報告をすれば上司は安心する。逆に優秀でも報告がなければ、何をやっているんだという気持ちになる。仕事ができる・できないは別にして上司も安心できるし、昇進には有利だと思う。
電機 あえていえば評価されるために行動する必要はないと言いたいね。常に会社にとってどうあるべきかを考えて行動できる勇気が必要だ。高い評価を受けても自分の力を全開させたことにはならないし、逆に自分本来の能力を殺すこともある。一生懸命努力していれば誰もその人材を放っておかない。必ず誰かが見ているし、評価は後からついてくるものだ。人事評価がAだ、Bだというのは、せいぜい社員の8割を評価するための道具であって、上位1?2割の中にいるのなら評価を気にすることなく自分に自信を持って仕事に打ち込むべき。
IT うちの会社では上司と同僚から信頼されている35歳の社員が、成績はトップじゃないが、ベンチャー事業のトップに抜擢され、年収も一挙に200万アップした社員が実際いる。やはり、評価や年収を気にする前に、行動を見せることが結果として報酬として還ってくるといえる。 |