仕事はもっとワガママに選んでいい |
見るものの予想をことごとく裏切る鮮やかなカードさばきと、あか抜けたトーク。マジシャンという特化した技術を持つが、それだけに甘んじず、真のエンターテイナーとして評価の高いふじいあきら氏。そんなふじい氏の前身は金融系プログラマーだという。技術や経歴に固執せず、新たな道を選んだふじい氏に、技術者たちへエールを送ってもらった。 《2005年12月号より抜粋》 |
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給料が安かったこともあり、その会社を1年半で退職し、次は派遣プログラマーに。ちょうどその頃、テレビでMr・マリックさんの特番を見て、本当に驚いたんです。何をどうやっているのか、何度見てもわからない。小学生くらいからマジックは見るのもやるのも好きだったんですが、そこから火がついて、専門書を買いあさったり、その本の著者に実際に自分のマジックを見せに行って指導してもらったりということを始めました。その後、バーやレストランで修行を開始。最初は無料で、マジックをする場を与えてもらう思いで人前で披露していました。後半はギャラやチップをもらえるようになり、マジックでの収入は月10万円くらいでした。 バブルが崩壊すると、出向先の協力会社がくしの歯が抜けるように減っていき、机は僕らのシマしか残っていない状況になりました。このままプログラマーを続けていくのはヤバイと肌で感じました。それに加えて、深夜のマジック営業のために、本業の仕事に遅刻はするわ、居眠りもするわで、周りに迷惑をかけてばかりいたので、もうこの仕事は限界かなとも思っていたんです。それでマジック一本で行くことに決めました。 そのとき、一方で「技術があるから、もしダメでも元に戻れる」という計算があったのは事実です。でも、たまたまバーにいたお客様に頼まれたデータベース構築の仕事を、どうしてもやることができなかったことがありました。なぜか、とても辛かったんです。そのときは謝って他の人にお願いしてもらいました。そして「ああ、もう戻れないんだな」と実感しました。このときに、プログラマーという特技があっても、それに固執せずに本当に好きなこと、情熱を傾けられることをやろうと腹が据わりました。 実はプログラマーとマジックは、似ているところがある。プログラマーは、納品した後もバグは必ず出てしまう。それを修正する、そして新しいバグが発見される、それをまた修正する、といった繰り返しで、本当の完成はないんです。マジックもある意味同じで、ネタを思いつき、舞台としての構成を考えるけど、観客がドン引きしたらすぐにそれを修正する。そのときウケても客層が変わればまた修正。これも完成というものはないんです。観客の反応を敏感に察知して出し物を変えたり構成を組み直す。常に磨きをかけてNGを省いていくという作業は、プログラマー時代に顧客の反応を想定してコツコツ組むという地道な作業に慣れていたからやれるのかもと思うときがあります。 技術者の方に僕が何か言うのは本当におこがましいんですが、ひとつ言えるとしたら、もっとワガママに仕事してもいいのではないかということ。「技術力」という強みに十分プライドを持って、でもそれだけに縛られずに、自分にしかできないことや自分が本当に打ち込んでやれることを、ワガママに選択していってほしいですね。 |
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