スキルアップでキャリアを創った  

元営業マンのサクセスストーリー

営業職はビジネスで求められるあらゆるスキルを吸収することができる。そのスキルを活かしてキャリアアップに成功したビジネスパーソンも少なくない。ここでは営業職を経験し、新たなステージに旅立った2人の元営業マンのキャリアヒストリーに迫る。 《2006年1月号より抜粋》

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小森伸昭氏(36歳)

アニコム インターナショナル株式会社
代表取締役社長


東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)に入社。法人営業を経て経済企画庁(現内閣府)に出向後、2000年5月に退社し、株式会社BSP(現アニコムインターナショナル)を設立
営業マンは「会社の顔」だからこそ全体像が見える

ペットのための医療共済制度の最大手、アニコムインターナショナルを創業した小森伸昭氏は、営業職の本質をこう表現する。「一人ひとりが会社の顔になる職種。売るのに精一杯だと気づかないものですが、会社の全体像を見るには、最適なキャリアだと思います」。

会社の顔と自覚できれば、営業姿勢も変わる。言われた通りにただ売るのではなく、開発部門には「もっと良い商品を」、企画管理部門には「別の営業・販促戦略はないか」と働きかけようとする意識が強くなるのだ。他部門に注文をつけるのだから、会社の仕組みやビジネスモデルを把握しておく必要がある。

小森氏は92年に大学を卒業し、東京海上火災に入社。法人担当の損害保険営業マンとして入社後の4年間を過ごした。

「昔から論理的に分析するのが好きでしたね。二つの飲み物の価格差から他のドリンクの値段を予測するとか。東京海上ならスマートでロジカルな営業だろうと勝手に考えていたのです」

当時の損保業界は依然として横並び意識が強く、保険商品は差別化されていなかった。人間関係の濃さを中心とした泥臭い営業スタイルが主流だったのだ。ビジネスの話でつき合える顧客には食い込めたが、単なる飲みニケーションは大の苦手。営業成績は普通か少し良いくらいだった。

「正直、何度も辞めようと思いましたが、ストレス耐性の高さで踏ん張りました」。そして修練期間を乗り切った小森氏に大きな転機が訪れる。


転機となった経企庁出向、ミクロ+マクロ経験で起業へ

会社の全体像が見えかけていた入社5年目、小森氏は経済企画庁に出向する。営業現場というミクロ経済の最前線を経て、マクロ経済の元締めである中央官庁に派遣されたのだ。健康保険制度の分析に携わり、カルテの全面公開による情報共有が、医療費削減と悪用防止に効果的だと結論づけた。

しかし、小森氏の仮説は「実験もせずに間違っていたら困る」との理由で公にはされなかった。中央官庁はそもそも市場原理とは無縁のため、ビジネスで実証する場を持っていない。また営業マンは会社の顔ではあるが、大企業の中で新規事業を立ち上げるほどの権限はない。仮説の正しさは、ミクロの営業経験とマクロの視点を併せ持つ自らの手で証明するのがベストだった。

民営化されていない人間の健康保険は無理でも、ペットの健康保険制度なら可能。小森氏は構想が固まった00年5月に退社し、7月にBSP(現アニコムインターナショナル)を設立した。

「健康促進事業と融合したペットの健保で結果を出し、いずれは人の健康保険に挑戦するつもりです」。同社は04年2月、金融庁に保険会社免許を申請。共済事業の運営会社から保険会社への移行と、07年9月のIPOを目指している。

営業マンに贈る3つの格言

1.営業マンは「会社の顔」だ

2.営業はミクロ経済を学べる職種

3.営業の真髄は「石の上にも三年」
営業マン時代は、ストレスに耐えながら営業スキルを習得していった

山崎正之氏(42歳)

フロレゾン株式会社
代表取締役


88年に大和証券入社。本店営業部を経て大和フランス現地法人勤務。帰国後、事業法人部で上場法人や富裕層の資産運用や資金調達などを担当した後、2002年、フロレゾンを創立
相手に媚びず自分に驕らず、最初の5分間で勝負する

大和証券の株式セールスを経て、観葉植物を企業や商業施設に供給するフロレゾンを起業した山崎正之氏。大和証券では本店営業部を経てフランス現地法人で日本株のセールスを経験した山崎氏は、営業マン時代を振り返る。

「フランスではヨーロッパ各国の金融機関の機関投資家相手に営業をしていましたが、彼らはとにかく時間がない。短い時間でいかに、相手が欲しい情報や、こちらの要件を伝えるかが勝負でした」

山崎氏は、6年間に及ぶフランスでの営業経験から、「いきなり結論を話す」「訪問相手は必ず決裁権を握るキーパーソンに限る」「帰るときには次のアポイントを取る」という三原則を確立した。

「結論から話すのは、そのほうが相手に伝わりやすいから。天気の話や世間話でお茶を濁したりしないで、いきなり“今日来た理由は、こうです。いかがですか?”と話すようにしていました」

キーパーソンを相手に営業するのは、トップダウンで話を進めることでクロージングを早めることができるからだ。

帰るとき次のアポを取るるのも、「キーパーソンにがっちり食い込むため。約束は常に先回りしていれておいてもらうのです。フランス人はとにかくせっかち。下手なフランス語で相手に食い込むには、帰納法ではなく、演繹法でなければすぐに電話は切られ、また訪問のアポも取れませんでした」。

このように、山崎氏はフランス赴任の6年間でこのような効率的営業術の基本を習得した。帰国後は、上場法人や富裕層の資産運用や資金調達など、幅広い業務を担当。「もともと10年以上勤めたら起業しようと思っていたので、ベンチャー企業に転職して、ベンチャービジネスを学びながら事業構想を模索していました」。

そこで思いついたのが、「グリーンスケープ事業」というビジネス。「グリーンをあらゆる空間に配置して、環境に貢献し、人々に癒しを提供できればと考えました」。

今では、大手喫茶店チェーンや企業へのグリーンのレンタル、また、大手インテリアショップでのスタイリッシュなグリーンの店頭販売などを展開。「以前は企業の株を売っていましたが、今は植物のカブを売っています」と笑う。


トップダウンの営業方法が早期クロージングを生む

山崎氏は、株や債券などを売るのも基本は変わらないと言う。今でも、企業トップを相手にトップダウンの営業を仕掛ける。

「今私が扱っている商品は、どうしても必要なものではない。無駄なものと思う人もいる。だから、トップの感性と合わないと、話にならないのです」

もちろん、トップからOKを貰った後も、現場に話が伝わっていないなど問題が起こることもある。そんな時は「このままですと遅々として進みません。次にどなたにお会いすればいいですか?」と聞くようにしているという。

このように、山崎氏は一貫して「媚びない営業」で成果を上げてきた。最後に現役営業マンにアドバイスを求めると、「訪問相手がどんなに偉い人だからといって臆することはない。アポイントを取った時点で関係は平等。媚びず驕らずいいたいことを伝えればいいのです」と語ってくれた。

営業マンに贈る3つの格言

1.まず結論から伝えること

2.キーパーソンにアポを取る

3.帰るときには次の約束を取る
フランス現地法人では自身の経験から「営業の三原則」を確立させた

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