「人事・給与制度」の選定が年収アップの転職の新基準

給与・人事制度と採用の最新動向について、人材コンサルタントにうかがい、今後のキャリアパスと年収アップ転職のカギを探った。 《2006年4月号より抜粋》

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株式会社
キャリアデザインセンター
人材紹介事業部
山田理人
給与形態に対する満足度について、「満足している」と「ほぼ満足している」の合計である「満足層」は、33・3%に留まった。また、不満点については、「成績・能力に額面が反映されない」がトップ。以下、「仕事量・勤務時間に対して給料が安すぎる」「給与形態が変わりすぎる」と続く。

現場の最前線で活躍しているビジネスパーソンの不満について、キャリアデザインセンターの人材紹介事業部で人材コンサルタントを務める山田理人氏はこのように分析する。

「成果主義の人事制度は、多くの企業で数年前から導入されています。しかし運用面については、うまく機能していない企業も少なくありません。現場の方々が抱いている年収に対する不満は、給与形態や人事制度に対する不満なのではないでしょうか」

山田氏が語るように、現在の給与形態に対する不満は高い。「不満」と「やや不満」の合計である「不満層」は、全体の53・9%と半数を超えた。給与形態が変わり、成果を認めてもらえるようになれば、年収アップが可能になるのではないか。

では、現場のビジネスパーソンは、どのような給与制度の下で働いているのだろうか。現在の給与形態でもっとも多かったのは、「月給制(固定給)」で、「月給制(固定+歩合制)」「年俸制」「フルコミッション制(完全歩合制)」と続く。固定給においては、インセンティブなどで年収アップを狙う手段がないため、ボーナス査定で良い評価を得ることと、昇進することで年収を上げるしか方法がない。しかし、ボーナス金額の算出方法は「基本給×月数×個人査定」がスタンダード。会社の業績によるところも大きく、個人で成果を上げたとしても、報酬が少ないこともあり得るのだ。

「多くの企業で景気が上向いているのですが、個人に対する報酬に反映されているとはいい難い状況です。現場のビジネスパーソンには報酬アップの期待感があるだけに、ジレンマがあるでしょう。このような背景があるので、給与制度の見直しを図る企業が増えています」と山田氏は語る。

今回の調査対象者がもっとも望んでいる給与形態は「月給制(固定給+歩合給)」だった。特に、現在固定給で働いているビジネスパーソンが強く望んでいる結果となった。つまり、成果が正当に評価され、年収アップのチャンスがある給与形態が求められているのだ。

しかしその一方で、希望と逆行するような動きも出てきている。従来、歩合給の割合が高かったIT業界では、固定給の割合を上げる企業も増えているようだ。特に外資系企業を中心に「基本給をアップしてもらいたい」という要望が上がっているというのだ。

このような動きは、人事制度とも密接に関係しているようだ。歩合給の割合が高いと、人材が定着しにくいという問題がある。景気が上向いている現在では、売り上げ拡大を狙うために有能な人材の流出は防ぎたいところ。そのため、基本給をアップすることで、現場に安定をもたらし、継続的に業務に当たってもらうことを目的としているようだ。では、このような状況下で、どのような業種を狙えば、年収アップ転職は可能なのだろうか。


従来、ヘッドハンティングを中心に、有能なコンサルタントの採用を進めてきたが、採用の基準が変わりつつある。「ジュニアクラスの人材を採用する際には、未経験者を採用するケースも増えてきています。考えるプロセスを重視する努力型の人材≠求める傾向は増加しています」と山田氏。未経験者を採用し、ゼロから育成することで、ビジネスのプロフェッショナルを育てようという機運が高まっているのだ。分野での強みを活かし、プロセスにこだわって業務に当たるような人材であれば、コンサルティング業界へ転職し、年収を大幅アップすることも可能なのだ。

マーケティング経験者や販売促進などの経験が求められる一方で、企画・マーケティング職もポテンシャル採用が増加する傾向にある。コンサルティング企業でマーケティング職を募集する事例なども増えており、事業拡大において、マーケティングの重要度はさらに増していきそうだ。また、様々な商品・サービスを提供する会社では、個々のユーザーに合わせて開発するスタイルが主流になりつつある。今後はより細分化された市場調査と動向分析スキルが必須になる。未経験者においては、クライアントの動向を読みとる洞察力や論理的思考力は必須。また、固定概念に捉われない独創的な発想力や、常に時代の先端を見越せる感性が優れていれば、マーケティング職で成功する可能性は高いだろう。

営業職の転職市場において、注目すべきは金融業界だ。不動産投資や不良債権マーケット、富裕層に対するプライベートバンキングなど、新規事業分野が増加し、他業種とのボーダレス化が加速している。このような状況下で、求人ニーズはリテール・ホールセール問わず活性化している。それに伴い、学歴や経験などのハードルが下がり、本人のポテンシャルや、転移可能な前職の経験があるかどうかが重要視されている。銀行などでは、スペシャリスト採用も増加しており、専門分野に特化したスキルを持つ営業マンにとって、年収アップ転職のチャンスがある業界と言えるだろう。

年収に対する調査を行った今回の特集で分かったことは、全ての職種で「自分が上げた成果をもっと会社に認めてもらいたい」と感じているということだ。各職種の年収に対しての不満は必ずしも高いものではない。しかし、それ以上に給与形態や人事制度に対する不満が大きいことが分かった。転職先を選ぶ際に、基準の一つとして「給与形態」と「人事制度」を考慮することで、思い描くキャリアパスを実現し、年収アップも可能になるのではないか。

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