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株式会社クライス・アンド・カンパニー 代表取締役社長
丸山貴宏氏 |
楽天証券経済研究所 大手就職情報会社の人事採用担当を約7年経験後、クライスアンドカンパニーを設立。前職からの候補者面談者数は10,000人を超えるベテランヘッドハンター |
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20代のうちから4つの営業「脳力」を意識し、全体の底上げとともに、自分にとって得意な要素を突出させていく。こうした努力を続けていくことで、30代後半以降のキャリアパスが多様なものになっていくということは、これまで述べてきた通りである。しかし、現在営業に携わっている人の大半は、「今すぐにでも営業を辞めて他の職種に就きたい」と考えているようだ。
彼らが営業を辞めたいという理由をひもといていくと、実は営業そのものが嫌いなのではなく、仕事の環境や周りの状態に不満があるだけという場合が多い。例えば、営業を辞めたい理由としてよく挙げられるのは、「成果に対して十分な評価を与えられていない」、「手掛けている商品やサービスが意に添わない」、「売りにくい」などだ。しかし、仮にそういったネガティブな要因が全て解決したらどうするかと聞くと、多くの人が「営業を続けたい」と答えるものだと、ある人材コンサルタントは語る。もし営業を辞めたいと感じたら、本当に営業そのものが苦手なのか、その付帯要因が嫌なだけなのか、一度冷静に考え直してみるべきだろう。
そして、自分の「脳力」に自信がない状態であれば、出来ることなら営業は辞めない方が良い。なぜなら、ビジネスマンにとって、営業の経験がないのは致命的だと考えられているからだ。丸山氏は、「企業の経営層で人格者だと言われている人材は、すべて成績優秀な営業マンだったといっても過言ではない」と断言する。
「営業を経験していない人は、それだけで損をしています。外の人に鍛えられる経験がないまま年を重ねてしまった人は、その後のキャリアパスにおいて、大きな遅れをとってしまうこともあるのです」
外部との接点が大きい仕事のメリットについては、慶應義塾大学大学院教授の高橋俊介氏の調査によっても明らかだ。高橋氏が主宰している「キャリアリソースラボラトリー」で調査した若手ビジネスマンのアンケートによると、成長実感に関するあらゆる設問において、もっとも実感値が高かったのは営業職だという結果が出ている。一見人気のない営業職だが、ビジネスマンとしての成長を目指したい人にとっては、最もふさわしい職種なのだ。
ちなみに、営業の楽しさを丸山氏に尋ねたところ、「仕事の自由度が比較的高く、自分の知恵を使って工夫できる」、「結果が数字としてすぐに目に見えるので、成功体験は自信につながり、失敗した点は徹底的に検証して次に活かせる」などのメリットを語ってくれた。いずれも、自分で考え、判断して行動するという習慣をつけるのに適した職種だということの裏づけと言えるだろう。 |
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