山崎元の5分で分かる  

金融マン生態事情

知っているようで知らない、金融マンの仕事。また、そこで生きる人の実態。ギョーカイの様々な内情を知る山崎元氏が、その正体の一端をココに公開する! 《2006年10月号より抜粋》
第1回 ファンドマネジャー
山崎 元(やまざき はじめ) 氏
楽天証券経済研究所 客員研究員。三菱商事に入社後、転職歴は12回。野村投信委託、住友信託銀行、メリルリンチ証券など、名だたる金融機関で活躍したギョーカイの事情通

ファンドマネジャーの仕事とは、投資信託や年金などの資金を運用すること。他人様(投資家)から預かった何百億、何千億という桁のお金を、どんな株式や債券にどんな配分で投資するかを決める仕事です。資金の性格上、長期的な視点で運用益を追求するので、秒単位の売買を繰り返し、ドタバタと利ざやを稼ぐ姿をイメージすると間違い。むしろ動きの乏しい仕事で、一日のほとんどがミーティングとペーパーワークに費やされます。
 
たとえば運用会社のファンドマネジャーであれば、出社は朝7時くらい(朝が早いのは金融マンの宿命!)。海外市場の動きや今日の予定を確認したり、社内のエコノミストやアナリストと雑談したりしているうちに、いよいよ9時の取引開始となります。
 
市場が開いているあいだは、調べ物などをしながらも、やはり相場が気になります。念が通じるわけでもないのに、つい市場の動きを見守ってしまうのは、悲しい性ともいえるでしょう。11時に前場の取引が終わると早めの昼食をとり、12時半の後場の始まりにはスタンバイOK。すでに机に戻り、PCの前に陣取っています。
 
ときには、企業の決算発表や経営者のヒアリングなど、企業調査に出かけていくことも。また、やたらと会議が多いのもこの仕事の特徴です。3時に市場が閉まるとミーティング三昧となり、その後はペーパーワークに忙殺されます。運用報告レポートを作ったり、顧客向けの資料をまとめたりして、「今日もなんだか忙しかったなあ」と思いつつ一日が暮れていくのです。

パフォーマンス次第で天国と地獄を味わう

とはいってもファンドマネジャーは、運用分野における花形職種。バイサイド、つまり注文を出す側になりますから、証券会社に対しても投資先の企業に対しても立場上は強く、ぺこぺこしないで済む仕事なのです。人間関係で苦労することもなく、ことさら体力的に辛いわけでもなく、これほど楽な仕事はないようにさえ思えます。
 
もっともそれは、パフォーマンスが良ければ、という条件付き。「運を用いる」と書いて「運用」というくらいで、結果の出ないときは必ずあります。リスクをコントロールして大負けを回避する分、大勝ちするのも難しく、ベテランでも運が悪ければ、双葉マークのファンドマネジャーはおろか、素人にもたやすく負けてしまいます。結果が明確に表れるのを、張り合いと感じるのか、プレッシャーと感じるのかが、適性を見極める一指標となりそうです。
 
パフォーマンスが悪いときは、顧客や、顧客の雇ったコンサルタントに絞られて、情けない気分になることも。しかしファンドマネジャーたる者、そこであわててはいけません。こういうときこそ、洗練された堂々たる言い訳が必要。投資哲学や市場状況を冷静に説明し、誠意あるはったりを見せることが大切なのです。言い訳の上手さは必須の資質であり、また自分を鼓舞する意味でも、ファンドマネジャーという種族は理屈っぽくなりがちです。
 
昨年、会社員として初めて長者番付1位となった100億円部長が注目を集めましたが、待遇は各社各様。しかし、日本の運用会社では、人事ローテーションとしてアナリストからファンドマネジャー、管理職となり、報酬も数千万円程度というケースも少なくありません。
 
ただし、他社に移っても同じように仕事ができる職種なので、転職が多く、優秀だと評価されれば引き抜きもあります。専門職として確立している外資系企業では、パフォーマンス次第で億単位の報酬も夢ではありません。もっとも、いつ首を切られるかは保証の限りではありませんが。
 
たとえるなら、ファンドマネジャーの仕事は、いかだを束ねて流れを下るようなもの。確実に儲ける方法があるわけではなく、ある程度は市場の状況に身を任せながらも、何とか優位にふるまおうと努力するしかないのです。
 
しかし、巨額な資金を任され、自分で意思決定できるのは大きな魅力。すべてを自らの責任で判断できる点こそ、この仕事の一番の醍醐味といえそうです。

ファンドマネジャーの正体はこれだ!!
 
数字に強い
株式の運用では主に企業の業績に関する情報、債券の運用ではマクロ経済に関する情報にアンテナを立てる。情報分析においても、ペーパーワークにおいても常に数字を扱い、コンマ何パーセントの利回りを競う仕事だけに、数字に弱い人はやっていけない
ミーティングが多い
情報交換や運用方針を決める社内会議から、顧客とのミーティング、証券会社主催のアナリスト説明会まで、ミーティングは多い。もっとも、ミーティングでもなければ、一日コンピュータにへばりついているだけで、仕事としての体裁が繕いにくいという面も
言い訳が上手い
パフォーマンスが悪いときの顧客への言い訳は不可欠だ。言い訳の定番は、「これは長期投資です」。長期的な視点で運用しているので短期の結果で責めないでね、ということを、各種データや分析を加えながら、いかにもっともらしく語れるかがポイント

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