これが「社内プロデューサー」の5つの定義だ!

プロデューサー型人材と一言でいっても、実際にはどのような行動や視点を持っている人を指すのだろうか。誰もが認める「社プロデューサー」の5つの新定義を明らかにする。 《2006年6月号より抜粋》

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コーン・フェリー・インターナショナル株式会社
日本担当代表取締役社長
橘・フクシマ・咲江さん
米ブラックストン・インターナショナル、ベイン・アンド・カンパニーでのコンサルティング職を経て、エグゼクティブ・リクルーティングを行う現職へ。花王、ソニー、ベネッセの社外取締役も兼任
フライシュマン ヒラード ジャパン株式会社
パートナー シニア バイス プレジデント
徳岡 晃一郎氏
人事・コミュニケーションコンサルタント。日産自動車人事部を経て現職。著書に『本気の集団をつくるチーム・コーチングの技術』(ダイヤモンド社)など。



「プロデューサーは、自分がリーダーを務めるプロジェクトの全社的な位置づけが見えていなくてはいけない」とフクシマさん。

会社全体を見渡して、どの人や部署を使えば良いものができるかを考え、いちから仕組みづくりをすることが求められるのだ。フクシマさんは、この大局を見る視点を“社長の視点”と例えている。

「私はよく『入社した日から、社長の立場で物事を考えなさい』と言っています。会議に使う資料を作成する作業も、社長の視点で考えれば、最終的に会社の業績を上げる目的につながっていることが分かる。そう考えれば作業ではなく仕事になるし、ときには、『競合相手の資料も添えたほうがいいのでは』と、前向きな提案もできるはずです」

たとえいまは入社一年目の新人であっても、“社長の視点”で日々の業務に臨む。そのことが、プロデューサー的な思考を身につけるトレーニングになるのだ。


いくら結果を出すことが大事とはいえ、「仕事に埋没してしまうことは危険」と徳岡氏。いい仕事をするためにも、時には本業から少し離れてみることも必要だという。

「住友スリーエムやグーグルで推奨されていることでも有名なのが20%ルール=Bこれは、『自分の持つ力の20%は仕事以外のことに使いましょう』という考え方。会社の外に友人を作る、スクールへ通う、趣味などを活かしたコミュニティに参加する、といったことで構いません」

20%ルールを実践すると、「問題意識が研ぎすまされ、新しい発想が生まれやすくなる。自分の夢や志は高まりやすくなると思います」と徳岡氏。プロジェクトで人材が必要になった時、時分の社外ネットワークからふさわしい人を呼ぶこともできる。

また、これがシャドーワークといわれる自分の領域を超えた調整やチャレンジから新しいビジネスを生むきっかけとなる。本業をよりよくするために、あえて非本業の時間を持つ。仕事にばかり追われている人は、自分の生活を一度見直してみては?



組織の持つ資源を活用するためには、まず自分の会社をよく知ることが大前提。会社の強みや将来のビジョンを明確に説明できない人が、そこにある資源を活用することなどできないからだ。

「会社全体を知り、他部署を知り、働く人を知り、工場があるなら足を運んでみる。現場を知るのも大事なことです。生産や販売の現場というのは、新しい価値が生まれる場所でもある。企画を考える時、手間を惜しまずに現場の意見を聞いてみることです」と徳岡氏。

フクシマさんも、「会社を知り、その中で自分の仕事の位置づけを知る。それが分かれば、自分がどう動けばいい仕事ができるか見えてくるはず。自分はここで何を学べて、会社にどういう貢献ができるかを、早い段階で掴むことができるはず」と話す。

社内を知る努力をしていれば、自分を知る人も多くなり、プロジェクトのリーダーとして名前が挙がる機会も増える。実際にリーダーとなってからも、社内の協力を得やすくなるなど、自分に返って来るメリットも大きい。



「組織を活用する」というのは、一方的に会社に要求をすることではない。組織の持つ資源を利用させてもらったら、その分の利益を会社に還元することが必要だ。

「最近の若い人たちは、会社に要求はしても、自分を犠牲にして会社に貢献することはない。これは単なる自己中心的な人間であって、決して自立した人間とは呼べません」とフクシマさん。会社との関係だけでなく、周囲の人たちとの関係も同じことだ。

「自分は表に出ず、役者たちが良く見えるように舞台を作り上げるのがプロデューサーの役割。自分ばかり目立ちたいと考える人は、プロデューサーにはなれません」

たとえ自分の働きが目立たなくても、プロジェクトさえ成功すれば周囲もその人を認めるし、会社からの評価も高まる。結果的に本人も得るものが倍増するのだ。組織の中にいる限り、「ギブ&テイク」の精神を忘れずに。



人を動かすのがプロデューサーの仕事。そうなると、メンバーが「あの人が言うなら」と納得する根拠がなくてはならない。そのために必要となるのが、日頃から結果を出す≠ニいうことだ。

「日産自動車のゴーン社長もよく言っていますが、リーダーシップの核心は実績なのです。それまでに結果を積み重ねていないと、リーダーに抜擢しても周囲からは批判や不満が出てくるだけです」と徳岡氏。有望な社員にあえて厳しい仕事を与え、そこをクリアすることでリーダーとしての資質を伸ばそうとする企業も増えているという。

「時には面倒な利害関係を調整しなくてはいけないのがプロデューサーの仕事。その時に、『この人が言うなら協力してやるか』という気にさせる魅力がないと」とフクシマさんも同様の指摘を。組織の中では、結果を出すことが人をひきつける力になり得るのだ。

30’sビジネスリーダーもPUSH!「カイシャ活用」のススメ

迎合せず社内を動かす努力は起業後に人を動かす予行演習になる
株式会社フレッシュテック 
代表取締役社長
吉田英治氏
亜細亜大学中退後、フリーターになり警備会社などで働く。同警備会社から東急エージェンシーへ派遣され、局長秘書、社長秘書を経て前野事務所へ。ゲーム会社勤務を経てエブリデイワイン(現フレッシュテック)を設立
「自社ブランドのワインを作りたい。売り方を考えてくれ」。当時、勤務していたゲーム会社の社長から、こんな任務を与えられた吉田英治氏。ただひとり2年越しで開発したのが、ワインを酸化させない世界初のワインセーバーだ。「これを製品化すれば高級ワインのショット売りができる」と提案したが、あえなく却下。「ならば自分でやる」と、エブリデイワイン(2006年5月、フレッシュテックに社名変更)を設立した。

起業に足りない知識は、退職後、会計事務所や飲食店など複数のバイトを掛け持ちすることで賄ったという。今や、全国のホテルやレストランに納入実績を持ち、次は、酸化させないコーヒーセーバーを発売予定だ。

しかし、現在に至る道のりは決して一直線ではなかった。生活のために大学を中退し、警備会社などでアルバイト。この警備会社の社長に見込まれ、「子会社で広告会社やるから修行してこい」と東急エージェンシーへ派遣され、運命の人と出会う。それは、吉田氏が今も「師」と慕う東急エージェンシー社長(当時)の前野徹氏だ。その運転手兼秘書となり、前野氏が独立する時にも誘われ、秘書として個人事務所に入社。じつは前述のゲーム会社に勤務したのも、秘書を探していた同社社長に前野氏から吉田氏が貸し出されたのだ。

「前野さんの鞄持ちをしながら、全て吸収しようと思いました。そうしないと大学中退の私に未来はないと。だからこそ、小さな仕事にも全力投球しました。運転手を頼まれた時でも、揺らさずに最短時間で着ける努力をしました」と、当時を振り返る。

そんな吉田氏は、カイシャをどう活用したらいいについて、会社員時代の経験から次のように助言する。

「大企業の名刺を持っていれば、できることは多いです。でも、それがなくなった時に受ける評価が本当の評価。その時のために、個人として評価してもらえることを組織の名刺を持っている時にやっておいたほうがいいと思います。また勤務先がベンチャーなら、いるだけで勉強になるはず。『自分はこれが本職』などと殻を作らず、何でもやったほうがいい。わからないことは、わからないと言ってちゃんと話をすれば、できないことは何もないです」

組織内で積んだ様々な経験のうち、独立後の今も役立っているのは、こんな経験であるという。

「組織には飛ばしてはならないルールがあります。でも、そこに一石を投じないと変わりません。違うと思ったら、きちんと言うべきです。怒られると思いますが、その経験が後のためになる。私もゲーム会社時代に社内を動かす努力をしました。その経験が、起業後、社外の人を動かす予行演習になっているんです」

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