山崎元の5分で分かる  

金融マン生態事情

知っているようで知らない、金融マンの仕事。また、そこで生きる人の実態。ギョーカイの様々な内情を知る山崎元氏が、その正体の一端をココに公開する! 《2006年11月号より抜粋》
第7回 アナリスト
山崎 元(やまざき はじめ) 氏
楽天証券経済研究所 客員研究員。三菱商事に入社後、転職歴は12回。野村投信委託、住友信託銀行、メリルリンチ証券など、名だたる金融機関で活躍したギョーカイの事情通

アナリストとは、いわば企業分析の専門家です。経済、産業の動向や、企業の財務・経営状況など様々なデータを集めて分析し、買い(buy)、売り(sell)、中立(hold)と株式の投資価値を評価。その結果はレポートにまとめられ、投資家に提供されます。  

日経金融新聞や週刊エコノミストのアナリストランキングで高い評価を得て脚光を浴びたり、人気アナリストともなればメディアに登場することもしばしばある。業界の中でも人気職種のひとつといえるでしょう。  

もっとも、こうしたスターアナリストはごく一部に過ぎません。  

一口にアナリストといっても、セルサイドアナリストとバイサイドアナリストとに大別されます。セルサイドアナリストは、証券会社などの販売側に勤務し、生命保険会社や投資顧問などの機関投資家に情報を提供する。一方、その機関投資家の中で働くアナリストをバイサイドアナリストといい、自社のファンドマネジャーがお客様になります。  

注目を浴びる花形アナリストは全てセルサイドアナリストで、バイサイドアナリストは、総じて仕事も報酬も地味め。「レポートを書いてもファンドマネジャーはろくに読んでくれないし……」などと、ときに切ない思いも味わいます(個人的には、バイサイドアナリストをもっと有効活用する方法はあると思うのですが、それはさておき)。

とはいえ、比較的マイペースでできる仕事で、会社訪問にも自由に出かけられますから、例えば地方出張を組んで当地の名産を味わってきたり、ビール工場の見学ついでにサンプルを飲ませてもらったりと、ささやかな楽しみもあります。しかし、その中にはファンドマネジャーになるための修業期間と考えて、地道に一所懸命頑張っている人もいるようです。

マイペースな職人道も華やかなスターの道も

また、アナリストはどの会社に移っても基本的に仕事の内容は一緒ですから、転職という選択肢もある。それまでにバイサイドで実績を積んで、いつかは華やかなセルサイドに打って出ようと転職機会を伺っている人も少なくありません。  

一方、華麗なるセルサイドアナリストにも苦労はあります。自ら稼ぐ仕事ではないとはいえ、基本的にはお客様の評価が全て。アナリストランキングのような人気投票も人事考課に深く関わりますから、投票時期には客先を回り、選挙運動に精を出します。もちろん日頃のサポートも欠かせません。頻繁にメールでレポートを送ったり、客先からの質問を受けつけたりしてきめ細かくフォローするほか、お呼びがかかればお座敷にも馳せ参じなければなりません。  

さらに最近では、アナリスト全般を取り巻く環境にも変化が生じてきていいます。  

ひとつは、企業の情報開示が厳しくなったことです。特に投資上の重要情報ほど厳格に管理されますから、アナリストであっても、個人投資家であっても、情報を受け取るタイミングは変わりません。こうなってくると、レポートの書き方やプレゼンテーションの話芸などで、自分を売っていくしかなくなります。  

そしてもう一つは、株式売買手数料の値下げにより、全業種フルラインのアナリスト部隊をそろえられる会社が減ってきたこと。手数料収入で間接的に養われている立場のアナリストにとっては、いわば飯の種が減っている危機的状況なのです。実際、会社によっては、セルサイドアナリストの数を減らした金融機関もあったようです。

ただし、マーケットが好転すればまた需要も増えてきますし、やはり専門職として立場が確立されていることは大きな魅力です。

スターアナリストを目指すもよし、職人のように地道にコツコツやっていくもよし。いずれにしてもそれなりの処遇は得られます。何よりも営業目標に追われることなく、自分の性に合った仕事を全うできるのですから、就いておいて損はないですね。

アナリストの正体はこれだ!!
 
常に数字が気になる
業績予想の当たり外れが常に気になってしまう。特に自分だけが外していないか、他社のアナリストの予想もしっかりチェックする。なかには、あえて他社とかけ離れた数値を出して独自性を出すツワモノも。ただし、外れた際のうまい言い訳は必須。
地に足のついた知性派
常にスーツ着用の知性派でありながら、フットワークの軽さも兼ね備える。会社訪問をして社長や財務部長にヒアリングしたり、決算発表に出かけたり、ときには各事業所や競合他社を訪問することも。理屈だけでなく、地道に足で稼いだ現場感覚も重要。
担当セクターによっても人気に差がつく
スターアナリストへの道は、担当するセクターによっても差がついてくる。電気、自動車、医薬品などファンドマネジャーの関心の高いセクターは、やはり人気も高い。ただしその時々のマーケットのテーマにより、突然脚光が当たる可能性も。

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