|
|
山崎 元(やまざき はじめ) 氏 |
楽天証券経済研究所 客員研究員。三菱商事に入社後、転職歴は12回。野村投信委託、住友信託銀行、メリルリンチ証券など、名だたる金融機関で活躍したギョーカイの事情通 |
|
|
|
日々大きなニュースが新聞紙上をにぎわし、一般にもおなじみとなったM&A。企業の合併・買収や資本提携を幅広くサポートするこの仕事は、業界の中でも注目を集めています。
ここにきてにわかに注目を集めている印象もありますが、M&Aの仲介・斡旋に関わる業務自体はそれほど目新しいものではありません。
例えばある会社が地方の中小企業を傘下に収めたいとします。その場合、まずはその中小企業の創業者を粘り強く説得し、後継者への相続税対策にまできめ細かくフォローを入れる。時には経営者同士が合意している案件について、面倒な手続き一切合切を引き受けたりもするのです。
会社同士が円満に結婚≠ナきるまでのお世話を焼いてあげること。こうした業務は、以前から金融機関の役割でもありました。ところが今や、そんな牧歌的な話ばかりではなくなっているのです。
国内のM&A件数は年々増加の一途をたどり、業界再編が進む中で、最近では業界トップクラスの企業を主役とした派手な案件が目立っています。また、
一般に「乗っ取り」といわれるような敵対的買収がいよいよ増えてきているのです。さらに2007年からは、外国企業が日本に子会社を作り、株式交換によって日本企業を買収する三角合併が解禁されることとなります。
時価総額の大きな外国企業は、これまでのように巨額なキャッシュを用意しなくても、日本企業を買収することができるようになるわけです。一部では「ハゲタカ外資に日本企業が食いつぶされるのではないか」と過敏な反応を示す業界人もいます。
しかしこれにより、ウチウチ(国内企業が国内企業を買収する)だけでなく、ソトウチ(外国企業が国内企業を買収する)の案件も増加していくことは明らかです。こうした時代の追い風を受けて、日本でもM&Aの舞台が整ってきました。大型案件では数億から数十億円単位の手数料が転がり込んでくるわけですから、これは金融機関にとってもなかなかおいしい商売であることは間違いありません。
業界屈指の“旬の職種” 出世の王道となる可能性も
今まさに旬の仕事であるM&Aは、稼げるという点で、個人としての報酬にも、大いに期待が持てます(あくまでも成功すれば、ということが前提になりますが)。とはいえ、今どきのM&Aは、これまでの牧歌的なお見合い斡旋の時代のそれとは少々趣が異なっていますから、弁護士を使える程度の法律の知識やソト(外国企業)がらみの案件にも対応できる英語力は必須となります。
そのために、引き受け業務など社内のプライマリーマーケット部門から賢そうな人材をみつくろって引っ張ってきたり、コンサルタントからの横滑りで人材を集めるケースもあります。どこか海外の大学院でMBAを取得しているような国際派エリート系人材が増えているのも、最近の傾向といえそうです。
さらにM&Aは、何よりも顧客企業とのリレーションがものをいいます。そもそもM&Aは、企業の経営判断に関わる重要案件。それだけに、金融機関のM&A部門でセールスを担当しているのも、経営層と直接話ができるトップクラスの人がほとんどです。案件を作れなければ手数料も稼げませんから、日々あちこちの経営層とコンタクトをとっては様々な売り込みを仕掛けていく必要があります。
相手が企業といっても、結局、顧客は個人についていることが多い。業界の有力顧客に深く食い込んでいる人であれば、日本の金融機関でも数千万円レベル、外資系金融機関では億単位の報酬も夢ではありません。たとえディール中毒と揶揄されようが、稼ぐ者が強いのはこの業界の常識。大型案件を作れる人は、社内的なポジションも安泰です。まだまだ今後も大きくなっていく可能性のある職種だけに、今後の出世街道のひとつになる可能性は大きいと思われます。
| |
|