転職市場における営業職の求人数が増加の一途を辿っている。要因は二つある。一つは、景気が上向き、メーカーと金融を筆頭に営業職の採用意欲が高まっていること。もう一つは、Web2・0に代表される次世代型インターネットサービスが普及したことで、ビジネスモデルの陳腐化が速まり、営業の役割が高度化したこと。
営業職に特化した人材育成型の人材紹介会社、グローリアス代表取締役の加藤龍氏はこう語る。「今の営業に求められる役割は、組織が抱える問題の解決。具体的には、自社製品・サービスの販売を通して顧客の理想(あるべき姿)と現状のギャップを埋める(解決する)ことです。転職の際も、何を(What)売ってきたかより、どう(How)問題を解決したかの実績が問われます」
評価される人材になるには 発想の転換が必要
そのため、企業の獲得意欲は旺盛だが、採用基準のハードルは決して下がっていない。営業職としてひと皮むけ、転職市場で評価される人材になるには、プレーヤー、営業マネジャーともに発想の転換が必要なのだ。
部下のプレーヤーは個人の数値目標達成に汲々とし、上司のマネジャーは自分流のマネジメントを徹底することで、チームの数値目標を達成しようとする。こうした環境の職場では、上司も部下も疲弊してしまう。加藤氏は、どの営業チームも顧客と同様に問題を抱えており、プレーヤーの上司に対するアプローチは、問題解決型の営業と同じだと言う。
「自分という商品の特徴を理解してもらい、マネジャーが自分に何を期待しているのかを聞く。そして自分はその期待に応えられるので、苦手部分のフォローや強みを発揮できるマネジメントをしてもらうのです」
実際、加藤氏は現場のプレーヤーと個別に面談し、直属のマネジャーに対する意見を吸い上げ、部下が上司を育てる仕組みを導入した。フィードバックを受けたマネジャーは、顧客先での提案は得意だが、事務作業が苦手な人にはその負担を減らしたり、ミーティングや会議の回数を減らすなど、それまでのマネジメント方法を見直している。
一方で、マネジャーがプレーヤーのご機嫌取りになってしまうリスクもある。そうならないためには、マネジャーがプレーヤーにビジョンを伝えることが必要。チームの数値目標は、プレーヤー個々の数字の積み上げ。そしてチーム目標の達成は、会社の利益の源泉である。
「マネジャーは『1年後にリーダーになりたい』といった部下の個人的なキャリアビジョンを聞き出し、そのためには今、何をすべきか、プレーヤーの目標達成モチベーションの維持に努めることが重要です」 活況を呈する営業職の転職市場の中で、加藤氏は注目業界として次の三つを挙げる。インターネットサービス業界、金融業界、人材関連業界だ。ひと皮むけた営業職の前には、大きなチャンスが広がっている。