キャリアアップの第一歩  

「僕たちの組織活用術」

会社に利益をもたらし、自分もスキルアップを果たす――。 組織を使ったキャリアアップは本当に実現できるのだろうか。 2人の「組織活用論」からその真実を紹介しよう。 《2007年4月号より抜粋》

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NHN Japan株式会社
ゲームアライアンス事業部
事業部長
プロデューサー
瓜生 貴士 氏
 (34歳)

大学中退後、1997年にベンチャーのゲーム制作会社へ企画職として入社。99年に大手ゲームメーカーへ転職。プロデューサーとして家庭用ゲーム機向けゲームソフトの企画・制作・販売やオンラインタイトルの立ち上げに携わる。同社を退職後、外資系のゲームメーカー、フリーランスを経て2005年9月にNHN Japanへ転職

夢を形にするためにパートナーとして会社と組む

『ハンゲーム』などのサイト運営を通じ、多彩なオンラインゲームやコミュニティサービスを提供するNHN Japan。同社の瓜生貴士氏は、会社とのパートナーシップを築くことで、キャリアアップしてきたプロデューサー。同社の人気コンテンツである『プロ野球 ファミスタ オンライン』をプロデュースするなど、今まで培ってきたスキルを活かし、同社のキラーコンテンツの創出に携わり、自分と会社のwin-winの関係を体現している。

そんな同氏の職歴の中でも学ぶことが多かったのは、1999年から5年間の大手ゲームメーカー勤務時代であるという。ここで二人のカリスマ・プロデューサーに影響を受け、プロデューサーとして開眼した。

「『お前は凝り性で、一カ所に入り過ぎる。大局を見ろ』とよく言われました。作品に新たな価値を与え、作品を商品にすることがプロデューサーの役割なんだと学びました」

大手ゲームメーカー時代には、家庭用ゲーム機向けアクションゲームのヒット商品も生んだ瓜生氏だが、最大の転機は、オンラインコンテンツの立ち上げだったという。

「コミュニティで友人と会ったら名刺交換ができる機能など、今のコミュニティサイトにある機能をほぼ網羅しました。今から8年前のことです。各方面から高く評価と言われます。私の気持ちのなかでは、その時できなかった続きを今『ハンゲーム』でやっているんです」

その後瓜生氏がNHN Japanに転職したのは、大手ゲームメーカーを退職し、外資系ゲームメーカーを経てフリーランスだった時のこと。当時、オンライン・コミュニティが成長の兆しを見せていた。気ままなフリーランス生活を送るなかで、ある日突然、もう一度それに携わりたい思いに駆られたのだという。

「実は夢があるんです。私は子供の頃、いじめられっ子でした。当時の私にとって、歌やマンガ、テレビ番組などは、辛い現実を一瞬忘れさせてくれる、また勇気づけてくれる存在でした。私も今の子供たちに向けて、オンラインゲームでそのようなモノを作りたいんです。でも個人で億単位の資金を集めるのは無理。私のそんな思いに投資してくれる協力者が欲しくて、転職したようなものです。当社の社長は、私の思いを聞いて『わかる』と言ってくれたことで意気投合しました」

瓜生氏は、会社と自分の関係は「お互いに利用し合うのでなく、パートナーシップ」であるという。

「会社は人格を持った生き物だと思うんです。自分と会社の関係を人と人との関係と同じと考えると、いい関係が見えてきます。自分は会社に何がしてあげられるのか。いい会社であれば、自分は見返りを求めずに自然と何かしてあげられると思います。ただ、会社は自分に何をしてくれるのか。何もしてくれない冷たい会社は多いけれど、NHN Japanには温かい人格を感じています」
プラザスタイル株式会社
商品部 商品四課
バイヤー
平井 理 氏 (37歳)


大学卒業後、1993年に大手化粧品メーカーへ就職。販売会社の営業部へ配属される。4年連続で社内公募に応募し、99年5月に商品企画部門へ異動。女性向けの3ブランドを担当する。2000年10月、プラザスタイルの前身であるソニープラザへ転職。バイヤーとして化粧品を中心としたオリジナル商品の開発などに携わる

組織という『畑』で自分ブランドを育てていく

活雑貨や化粧品を販売する「ソニープラザ」を運営するプラザスタイルの平井理氏は、商品企画のプロフェッショナル。6年半前に大手化粧品メーカーを辞め、もっと自分らしい商品が作れる環境を求めて転職してきた。手掛けた商品がメーカー欠品を起こすほどのヒットメーカーである同氏は、会社と社員の関係を、次のような例え話で考えを述べた。

「companyの語源は『com/共に』『pany/パン』を食べる仲間ということなんです。会社は“畑”の所有者であり、社員は会社から畑を借りて“作物”を作る生産者に例えられます。会社の畑で社員が“小麦”を作り、その小麦からパンを作って共に食べる。それが会社なんですよね」

ならば、会社の中で自分のやりたいことをするにはどうするか。 「まず、平井という生産者はこういうモノを作りたいという圧倒的な意思表示をします。すると、同じ志を持った人が必ず出てきて、実現可能になる。自分に足りない部分を補う周囲の優秀なサポートが受けられる点が、組織のいいところですね」

平井氏が実行している圧倒的な意思表示とは、常々、自分のやりたいことを口に出して周囲に話すことであるという。また、社内公募には必ず応募する。平井氏は大手化粧品メーカー時代も4年連続で社内公募に応募し、営業から商品企画部門への異動を勝ち取った。さらに、プラザスタイルが昨年実施した社内公募では、全社応募総数の20%を超える数の企画を同氏が1人で提出。うち1案が優秀賞を受賞した。このように組織を活用してきた平井氏は、活用するべき組織は社内だけに留まらないと語る。

「もうひとつ大事なのは、『取引先も重要な組織の一部』と考えることです。取引先は“種”を持ってきてくれるパートナー。その種が、例え自分の畑に合わない種であっても、合わない理由と、こうしたらいいというアイデアを提供することが大切なんです。そうすると、取引先は畑に合ったいい種、場合によっては育った“苗”を持ってきてくれるようになるのです」

このような考え方を持つことで、取引先自身が同社に合った企画を提案してくれる流れが加速したという。 「こうすることで、平井という生産者の畑は、面積が一緒でも収穫量が増えます。またこの畑からは、従来より良質な商品、従来にない商品も収穫できるわけです」と、平井氏は自身の商品開発、スキルアップの方法論を語る。

難しいのは畑選びだ。平井氏は、転職前に読んだ同社に関する本やソニープラザに並ぶ商品から、自分のやりたいことができる「畑」が同社にあることを感じ取ったという。

「世の中は、産地ブランドから生産者ブランドの時代になりましたよ。僕は“PLAZA”という畑を使って、平井が作った平井ブランドということで世の中に認められたい」

それが今後の目標であるという。

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