ビジネスを創造する源を探る ヒットメーカーの企画書

時にマーケットの流れさえも変えてしまう、ヒット商品や新しいビジネスモデル。ヒットが生まれる背景には、ニーズを作り出す“マーケティング力”やこれまでにない斬新なビジネス形態を思いつく“発想力”、そしてビジネスとして成り立たせる“設計力”の3つが必要だ。ヒットメーカーが作った企画書を読み解くことで、あなたの仕事を今よりもワンランク上にさせるヒントが見えてくる。 《2007年6 月号より抜粋 》
第2回 黒烏龍茶
サントリー株式会社
食品カンパニー
食品事業部 健康飲料部
矢野弘美 さん
「黒烏龍茶」
企画書

1 企画・開発の目的
サントリーの“顔”でもある、烏龍茶の効能を引き出し、ユーザーの健康志向に応えていく

2 商品コンセプト
科学的な根拠があり、明確に効能をうたえる烏龍茶。肥満人口の増加を受け、「脂肪の吸収を抑える」という表示内容を全面に出す

3 ネーミング
黒酢や黒ゴマをはじめ、黒い食品にはヘルシーなイメージがあることから、「ウーロン茶重合ポリフェノール」の色である“黒”を強調

4 PR戦略
生活習慣病などネガティブなイメージを排除し、「毎日の食事を楽しもう」というポジティブなメッセージを発信

5 今後の展開
今年度の売上げ目標は850万ケース。健康志向のユーザーを中心に、潜在層にも訴求していく

黒烏龍茶OTTP

食事と一緒に摂取することにより、脂肪の吸収を抑え、食後の中性脂肪の上昇を抑制する特定保健用食品

メタボリックシンドロームが話題となる中、サントリーの「黒烏龍茶」が大ヒットを記録している。2006年5月の発売当初は年内の販売計画を200万ケースとしていたが、最終的には3倍以上の620万ケースを達成した。

この商品の最大の特徴は特定保健用食品(特保)の承認を受け、「脂肪の吸収を抑える」という効能を明確にうたっていること。食生活の欧米化などを背景に、日本人の脂肪摂取量は増加。現在では30代から60代男性の3人に1人が肥満といわれている。同社は、そこに大きなニーズがあると判断した。

健康飲料部の矢野弘美さんは、2002年に開発プロジェクトが立ち上がった経緯をこう話す。

「サントリーは1981年に缶入りウーロン茶を発売以来、その健康効果について研究を重ねてきました。もともと健康的なイメージの強かった烏龍茶ですが、科学的な裏づけがある商品を作れば、支持を得られると確信したんです。食品としては異例となる4年の歳月をかけて研究開発を続け、特保の取得に成功しました」

一方でマーケティング戦略としては、競合との差別化が最大のテーマだった。しかし「脂肪の吸収を抑える」という表示が認められたことで、「食事とともに」という黒烏龍茶独自の提案が可能に。

「PR戦略としては、『生活習慣病が怖いから、黒烏龍茶を飲みなさい』と脅すのではなく、『黒烏龍茶を飲んで、毎日の食事を楽しもう』という前向きなトーンを大切にしました。事前のリサーチでも、『従来の特保飲料は味が苦手で続かなかった』という声は多かった。ですから開発段階では、おいしさにもこだわりました」

ネーミングとパッケージは、特保取得の決め手にもなった効能成分「ウーロン茶重合ポリフェノール」の色である黒≠強調。 「『黒は苦みなどのマイナスイメージにつながるのでは』と心配する声もありましたが、この色こそが他の商品との最大の違いであり、効能の証。あえて堂々と打ち出していこうと決めました」

ダイレクトに商品特性をアピールした戦略が功を奏し、コアターゲットだった30代から50代の男性だけでなく、若い女性や主婦にも支持され、大ヒット商品となった。2月末には1Lペットボトル入りも発売。今後は、まだ黒烏龍茶を飲んだことのない、潜在層や家庭での消費量アップにも期待しているという。

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