ビジネスを創造する源を探る ヒットメーカーの企画書

時にマーケットの流れさえも変えてしまう、ヒット商品や新しいビジネスモデル。ヒットが生まれる背景には、ニーズを作り出す“マーケティング力”やこれまでにない斬新なビジネス形態を思いつく“発想力”、そしてビジネスとして成り立たせる“設計力”の3つが必要だ。ヒットメーカーが作った企画書を読み解くことで、あなたの仕事を今よりもワンランク上にさせるヒントが見えてくる。 《2007年7月号より抜粋 》
第3回 メガマック

日本マクドナルド株式会社
マーケティング本部
ヤングアダルトマーケティング部
コンサルタント
須藤順一 さん 須藤順一 さん
「メガマック」
企画書

1 企画・開発の目的
横ばい状態が続いていた男性の来店者数を伸ばすため、男性客にアピールできる商品を打ち出す

2 商品コンセプト
「日本マクドナルド初の4枚肉を使ったサンドイッチ」。当初のコアターゲットは19?29歳の男性

3 ネーミング
発売前にテスト販売を実施。クチコミでの波及効果の高さから、発売後の売上げも見込めると判断

4 PR戦略
見た目のインパクトがあるため、イメージ戦略には頼らず、商品の全体像をシンプルに見せることに徹する

5 今後の展開
“メガブラザーズ”としてメガマックに続き「メガてりやき」を発売。さらにラインナップを増やすことも検討中

メガマック

『ビッグマック』のパティを2枚から4枚へ倍増。ボリュームに反して350円と手頃な価格で爆発的にヒットした

日本マクドナルドが2007年1月12日から期間限定で発売した『メガマック』。『ビッグマック』を上回る4枚のパティを使用しており、見た目のインパクトもあって発売直後から話題に。発売からわずか4日間で販売見込数の2倍となる332万食を売り上げた。

メガマックの企画開発がスタートしたのは2006年の夏。その背景についてマーケティング本部の須藤順一氏は「サラダマックやエビフィレオなどの商品を展開することで、女性の来店者数は順調に伸びていました。一方で男性客数は横ばいの状態。そこで2007年は男性向けの商品を打ち出そうと考えたのです」と話す。

そこで着目したのが、すでにアメリカやカナダで販売実績のあったメガマックだった。しかし当初は「これほどボリューム感のあるメニューが日本の市場で受け入れられるのか」という懸念もあったという。だがサンプルを試食してみると、その不安は吹き飛んだ。

「肉の枚数が増えたことで、ビーフのおいしさが想像以上にダイレクトに伝わってきた。弊社には多様なメニューがありますが、やはりビーフを使ったサンドイッチはマクドナルドの原点。これならお客様に本来のマクドナルドらしさ≠存分に味わっていただけるはずだと考えました」

 まずは2006年の10月から11月にかけて、東京都内の10店舗で試験的に販売。通常のテスト販売ではたまたま来店した人が店頭の告知を見て商品を購入するケースが大半だが、リサーチの結果、メガマックに限ってはクチコミで情報を知ったという人がかなりの数に上った。「これはクチコミでの波及効果が高い商品になると確信しました」と須藤氏は話す。

また、メガマックは見た目のインパクトや迫力が最大のアピールポイントとなるため、店頭のPOPやテレビCMでもイメージ戦略は採らず、商品の全体像をシンプルに見せることに徹した。それが功を奏し、消費者に「あのボリュームに挑戦してみたい」という好奇心を抱かせることに成功。しかも一度食べると、今度はその達成感や満足感を誰かに伝えたくなる。こうしたクチコミとの相乗効果が爆発的なヒットにつながった。

当初の予定を1カ月延長して販売を終了した後も復活を望む声は多く、4?5月には再度期間限定発売を実施。6月8日からはメガブラザーズ第2弾として『メガてりやき』を発売中だ。

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