ホテルの人事部を経て、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングに転じた経験を持つ柴田励司氏。入社後わずか5年、38歳の若さで日本法人の経営トップに就任し、従業員数を約30人から約160人の陣容へと成長させた。
「私がコンサルタントとしてキャリアをスタートさせたのは、バブル崩壊直後。多くの企業が、終身雇用を前提とした、年功序列型の人事制度を大幅に見直さざるを得なかった時期でした。顧客にとって急務である課題に対し、それまでの理論重視のコンサルティングではなく、現場で起きている現象に着目して取り組んできたことが、新たなビジネスモデルの確立につながったと思います」
同社は人事制度や組織改革で知られているが、現在、コンサルティング会社が注力事業として挙げるM&Aに関するコンサルティングに着目したのが柴田氏だ。ニーズが高騰するであろうビジネスを、マーサーのなかで、世界に先駆けて着手したその先見性はどのように養われたのか。
「顧客ニーズの先取りをするためには、顧客の『顧客』の動静を常に注視することが大事なのです。そこから初めて次のニーズが見えてくる。まずは現場に出て徹底的にヒアリングし、顧客の心理を追求する姿勢が必要ですね。しかし、最近の若手を見ていると、提案書なしには顧客と気軽に話すことができない人が多いように思います。何気ない会話に、顧客も気がついていないニーズが埋もれている可能性があるんですよ。これはコミュニケーション能力の問題ですね。また、難しいことを余計難しく言うコンサルタントもいますが、これでは逆。わかりやすく説明するのが本来あるべき姿です」
こうした先を読む力に加え、今後市場価値が高まる人材は 「高度派遣社員型」と柴田氏は予測する。
「専門的な知識を持ち、顧客企業に入っていって、ともに汗を流して働く人材が求められる時代になってくるでしょうね。そのためにも、若手のうちは与えられた工数以上の仕事に、量的にも質的にもチャレンジして、経験と実績を積むことが重要です」