ビジネスを創造する源を探る ヒットメーカーの企画書

時にマーケットの流れさえも変えてしまう、ヒット商品や新しいビジネスモデル。ヒットが生まれる背景には、ニーズを作り出す“マーケティング力”やこれまでにない斬新なビジネス形態を思いつく“発想力”、そしてビジネスとして成り立たせる“設計力”の3つが必要だ。ヒットメーカーが作った企画書を読み解くことで、あなたの仕事を今よりもワンランク上にさせるヒントが見えてくる。 《2007年10月号より抜粋》
第6回 ガンダム クライシス
富士急行株式会社
企画部
プランナー
渡部祐介 さん
「ガンダム クライシス」
企画書

1 企画・開発の目的
『ガンダム・ザ・ライド』に続く人気企画として、ガンダムファン以外の人にも楽しめるアトラクションの実現

2 商品概要
世界初の実寸=1/1のガンダム(全長18m)を再現。難易度の高いミッションと特典映像 が売り

3 ターゲット
ガンダムファンだけでなく、小さい子どもから年配者まで、老若男女問わずすべての来場者

4 プロモーション
“日本発”“世界初”を実現してきた富士急行らしく、「世界初! フルボディー 1/1のガンダム」を訴求

5 今後の展開
富士急ハイランドの中核を担うメイン・アトラクションとして、多方面でのイベント展開を検討

ガンダム クライシス

実寸=1/1サイズのガンダムを世界で初めて再現。制限時間内に全ミッションをクリアした人だけがコクピットに乗り込んで特典映像を見ることができる

2007年7月21日、山梨県富士吉田市の富士急ハイランドに全長18mという実寸の『機動戦士ガンダム』が登場した。“世界初”の試みとして注目度も高いこのプロジェクトを立案し、1年以上もの時間をかけて成功に導いたのが富士急行の企画部プランナー、渡部祐介氏だ。

「07年の1月まで『ガンダム・ザ・ライド』というアトラクションを営業していて好評だったので、今度は映像だけではないほかの魅力をアトラクションとして表現することを目指しました」

併設されているショップも含めて、富士急ハイランドはガンダムファンの“聖地”として知られているが、ファン以外の人達をも巻き込むアトラクションを考案したところが、ヒットメーカーのこだわりだ。

いまも熱狂的なファンが多い作品だけに、権利関係を含めて携わるスタッフが多い。なかには、ガンダムは“映像世界”でしか存在しないのだから、実寸では表現できないのではないかという反対意見もあったという。

プロジェクトを進めるなかで、かなりやり合った結果、「最終的に『富士急行が手がけるのなら』と信頼していただいたのが励みになりました」と渡部氏は語る。

予算もスケジュールも限られていたが、実寸のガンダム再現のため細部にまでこだわった。クリアするミッションも難易度を上げて、飽きの来ないアトラクションを目指した。この成果について渡部氏は「同じ予算とスケジュールでこれだけのクオリティのアトラクションは実現できない」と自信を見せる。また、来場者を楽しませるための仕掛けにも一工夫が。制限時間内にすべてのミッションをクリアすると、格納庫に納められたガンダムのコクピットで特典映像を見ることができるのだ。

難易度を上げ、さらに何度でも挑戦できるように工夫した結果、ガンダムファンだけでなく、従来のアトラクションに足を運ばなかった年配の来場者などからも楽しいという声が寄せられている。

「ガンダムの魅力とアトラクションの楽しさの両方を体感できることで、お客様に高く評価していただいているのだと思います。それが嬉しいですね」

富士急ハイランドのアトラクションの目玉になるほど、とことん質にこだわったこの企画。今後はこのアトラクションを活かしたイベントを展開していく。

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