“金融新時代”到来で変わる 「ビジネスの仕掛け人」の条件

業界再編や企業合併劇……etc。「そんなの俺には関係ねぇ」と思っている人ほど読んでほしい。これらの“ニュースな出来事”の裏側には、必ずと言っていいほど各種金融機関が存在している。そして、このニュースを生み出すビジネスフィールドが今、「万人」に扉を開こうとしているのだ。 <2007年12月号より抜粋>
「小泉改革」の旗振り役
竹中平蔵
慶應義塾大学 教授
グローバルセキュリティ研究所 所長
日本経済研究センター 特別顧問
経済学博士
「ニッポンはモノ作りの国」。よく、そんなフレーズを耳にします。確かに間違っていませんし、私も日本のモノ作りは素晴らしいと思っています。 ただ、現時点で日本のGDPに占めるモノ作りの割合は、たったの25%程度。残りの75%を占めるサービス業を伸ばしていかない限り、日本のさらなる経済発展は望めないのが現状です。

では、サービス業の中で何が有望か?  それは金融とITだと思っています。そもそも、日本は金融立国を目指すべきというのが私の考え。それを実現するために、つい先日、東京を国際金融センターにするための基盤整備を提言する共同研究会を立ち上げました。

最新の「世界の金融都市ランキング」を見ると、1位がロンドン、2位はニューヨークで、東京は9位にとどまっています。3位に香港、4位にシンガポールが入っていますから、東京はアジアの中でも三番手でしかありません。1位のロンドンは、1986年の金融ビッグバンによってニューヨークを超える国際金融センターの地位を築いたのですが、イギリス全体で支払われる法人税の20%をシティ(ロンドンの金融街)の企業だけで支払っています。まさにシティがイギリス経済発展の原動力になっているわけです。

一方、日本には1500兆円もの個人資産があります。これはメーカーに例えると原材料であり、日本は世界有数の金融資源大国なのです。残念なことに、これまで日本の金融業界はこの大きなポテンシャルを活かしきれていませんでしたが、不良債権処理が終わり、郵政民営化もスタートしました。銀行も証券もファンドも、すべての金融ビジネスで新たなチャンスが生まれ、強くなることができるのです。日本がこの絶好機を逃す手はありません。

市場に多様性のあるニューヨーク型がお手本に

では、具体的にどうすれば金融業界が成長していくか?  それはひとえに「預金を受けて企業に融資する」という古いモデルから脱却し、新しいビジネスモデルに移行することに尽きます。つまり、多様性のある市場になるということです。

国際金融センターを目指すという観点で説明すると、ランキング1位のロンドンには国際弁護士や会計士といった金融の専門知識を持ったプロが集結しており、世界中から集まってくる資金を運用する場所貸し産業≠ナ成長しています。また、ランキング6位でドイツ最大の金融都市であるフランクフルトには、国内の有力銀行が数多く拠点を置いており、それらの銀行が積極的に海外進出することで地位を高めてきました。そして、ロンドン型とフランクフルト型を兼ね備えているのが、ランキング2位のニューヨークです。

日本はまずフランクフルト型を目指し、その上でニューヨーク型にシフトチェンジしていくべきでしょう。 そして、市場がグローバル化していく過程では、そこで働くプレーヤーにも金融のグローバルスタンダードに対する見識が不可欠になります。英語や最先端のファイナンス技法について学ばなければいけません。

金融マンに必要なのは変化に対応する総合力

ただし、知識はあくまでも金融マンとしてやっていくためのベースにしかなりません。もっとも大切なのは、変化に対応する総合力です。ファンドの技法一つを取っても、1年単位で変化の繰り返しですからね。「特定の何かに対応する人」のままでは、生き残れません。

そして、この総合力を身に付けるためにも、中期的なキャリアプランが欠かせなくなります。例えば、仕事をどんどん任せてくれる職場に転職して短期間で専門性を身に付け、その後MBA留学して専門性を拡張させる。そんなスケールの大きなプランを持ってもらいたいですね。

英語では、「頑張れ!」のことを「You can do it!(君ならできる)」と表現します。そして、返答は「Yes, I can.(自分はできる)」です。できると信じる気持ちこそが、自分を高める最大の武器になるということでしょう。私は、日本経済に「You can do it!」と声援を送ったつもりです。ですから金融ビジネスに携わるすべての人に、「Yes, I can.」と言って行動を起こしてほしい。そう願っています。

 

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